僕は犬のチロ。
僕は犬のチロ。
生まれてから十一回、春の日差しを浴びたよ。
僕の飼い主は、とても優しくて可愛い女の子なんだ。
僕はとっても彼女が好き。
初めて会った時、君は目をキラキラさせて僕を見ていたんだ。
この子がいいってお父さんに笑顔を向けていたのをよく覚えているよ。その笑顔に僕はワクワクしたんだ。
君が小学生の時、意地悪な男の子がカエルを持って追いかけてきたって泣きながら帰ってきたね。
君は僕のお腹に顔を埋めてずっと泣いていたんだ。君に意地悪をするなんて、僕もそんな奴嫌いだ。
中学生の時、君は部活を頑張っていたけれど、レギュラーというのになれなくてとても悔しそうに泣いてた。
その時も僕のお腹に顔を埋めていたね。
でも、一年後にはレギュラーになれたって喜んでいた。君はとても頑張り屋さんなんだ。
高校生になって、君は初めて彼氏が出来たと笑っていたね。その時はとても嬉しそうに僕の身体をギュっと抱き締めてくれたんだ。良い匂いがして、僕はちょっとだけドキドキした。
君が選んだ人なら、僕も許すよ。
大学生の時に、また泣きながら僕のお腹に顔を埋めたんだ。
初めて出来た彼氏と別れたみたい。でも良かったと思うよ。
僕は知ってるんだ、彼は君が小さい頃にカエルを持って追いかけてきた意地悪な男の子だったから。
あんな奴、カエル男と呼んでやればいいんだよ。
……でも、カエル男はたまに僕の好きなお菓子を持って来てくれるから、そんなに嫌いじゃなかったな。
ねえ、君は小さい頃から泣き虫で、いつも泣く時は僕のお腹に顔を埋めていたね。僕はそんな君が大好きなんだ。
今日は朝からずっと君は泣いている。
そんなに泣いてたら、おめめが溶けちゃうよ?
君はとても大切なものを失ってしまったと、凄く悲しそうに泣いているんだ。その泣き声は今まで聞いた中で一番辛そうで、聞いてる僕も悲しくなった。
でも可笑しいな?何で僕のお腹に顔を埋めないの?僕のお腹は君の特等席だよ。
どうしてカエル男の腕の中で泣いているの?
「チロ……あなたは私にとってとても大切な親友だったわ。本当にありがとう」
そう言ってくれて凄く嬉しいよ。
僕にとっても君はとても大切な親友だよ。
僕はここにいる。ずっと君の側にいるからね。
終わり
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