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魂のカケラ  作者: ラム
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転生者

ご意見、ご指摘等ありましたら、お願い致します。感想いただけると幸いです。

 久しぶり伯爵。死んだんじゃなかったの?


 お久しぶりですね。一度死んで生き返ったのですよ。死体を火葬されてしまいましてね、生き返るのに時間がかかりました。


 死体を再生させて生き返ったのかい?まるでゾンビだね。


 卑弥呼サキヨミ、貴女が其れを言いますか。貴女だって私と似たようなモノでしょう?


 そうだね。でももう終わらせようと思うんだ。


 彼がそう望むからですか?


 うん。そうだよ。きっと私たちは間違った存在。だから間違いは正さないと――――


 * * * *


転生者ーー前世の記憶を持って生まれて来るもの。古来より言い伝わるこれらの存在は数百年前に正式に確認された。それは超能力の確認でもあった。




「村瀬八尋――PSIピーエスアイ濃度上昇を確認。転生体だな」


無線を耳につけ灰色のパーカーを着た男が、軽薄な笑いを浮かべながら八尋の前に立ち塞がった。

灰色のパーカーの男がつけた無線から無機質な声が聞こえる。


[了解。村瀬八尋を転生体と認定。能力及び転生回数はわかりますか?]


「不明。でもまぁ、ここで殺せば問題ない——なっ!」


高校からの帰り道ーーそれは八尋にとって、最悪の出会いだった。

灰色のパーカーの男が襲ってくる理由はすぐに検討がついた。

生まれた時から隠し続けた秘密——親にも親友にも決して知られてはいけない事。


「くそっ! なんで転生者ってばれたんだよ! 」


八尋は悪態をつきながら、180度向きを変え逃げようとした。だが八尋の進行方向に車が止まり、道を塞ぐ。


「残念、こちらは通行止めだよ」


灰色のパーカーとは別の、柔和な笑みを浮かべた青年が車から降りてきた。


コウ、能力は不明だ。身体強化ではなさそうだが」


灰色のパーカーの男はククリ刀を構え、静かに躙り寄る。それに合わせて後退しようにも背後にいる青年のせいでできず、壁を背にしたまま必死で考える。


——どうすれば逃げられる?


「いやいや。善良な一般男子高校生に何の用ですか?お兄さん方、何か勘違い——っ!?」


八尋が言い終わる前にパーカーの男がククリ刀を振り下ろして来た。


「っ!!」


とっさに半身ずらしたことで、制服が僅かに裂け、隣のコンクリートの壁に裂け目が出来た。


普通の刃物ではない。


そう判断し、受け身を取りつつ、男の後ろに回ろうとするが、脇腹を強く蹴られ、柔和な男の足元へと転がった。そこから追い討ちをかけるように、洸が、勢いよく腹部を足で踏み抜く。

吐き気と激痛で目がくらみ、息が上手くできない。喧嘩などしたことのない、素人には無理がありすぎた。


「あれ?君、弱いなぁ。まぁでもこれで終わりね」


洸と呼ばれた男は、穏やかな微笑みを浮かべ、拳銃を出し額に突きつけた。


ドクンと心臓が強く跳ねるのを感じた。冷や汗が流れ、息が埋まりそうに苦しくなる。


——蘇る死の恐怖。かつて視た死。



どうすれば…?どうすれば助かる?


「ちょっと聞きたいんだけど、君——今の人生は何回目?」


男の声を無視し、助かる道も分からぬまま、咄嗟に能力を発動した。


「——カダ!PSI濃度が!」

洸がとっさに叫んだ。


【透視】


背後でパーカーの男カダが、刀を振りかざしているのが視える。振り返らず、刀を避けようとするが、動体視力に体が追いつかない。


避けきれない——

そう思ったときだった。





「——なあ、少年。助けてやろうか?」


肩にぽんと、手を置かれ、突然耳元で声が聞こえた。そこで突然、真横にマスクをした男がいることに気づく。八尋は声の瞬間までその存在に全く気づかず、視えなかった。


——いつの間に……


そう考える間も無く、カダが吹き飛ばされ、壁にたたきつけれるのを視た。


「あなた、誰です?」


洸は柔和な笑みを消して、瞳に警戒の色を浮かべた。


[高濃度のPSI力場を観測しました。洸、その男に気をつけてください]


耳元のイヤホンから言われるまでもなく、肌で感じる圧倒的な差だ。


「俺がだれかって?そのうちわかるよ」


ふざけたことを言いながら、マスクの男はナイフを取り出した。銃を数発撃ってみたが、やはりまるで掠らない。男越しにカダが立ち上がり構えるのが見える。


「少年、走りな!」


八尋はマスクの男の声にハッとし、拳銃の男を背に走り出した。追ってくる気配はなく、完全に足止めしてもらっているようだ。


背後で銃声と刀の金属音がしたが、振り返らずとにかく走り続けた。

息が詰まり心臓が止まりそうなほど走って、走って、路地から大通りに出たとき、ふとどこへ向かえばいいのかと、不安に駆られた。


学校の帰りを狙われたということはおそらく、住所や身元はばれている。友人の家へ行っても周りを危険に合わせるだけだ。

そこへ、急ブレーキで小型の車が目の前で止まった。


「——お兄ちゃんが、村瀬八尋だね?」


目の前に止まった車の助手席から、幼い少女が声をかけてきた。先ほど襲われた男の仲間かと思い、警戒したまま、一歩下がる。


「私はタロさんの仲間だよ。乗りなよ」


タロさん?マスクの男だろうか?

しかしそうだとしても、信用にかける。一刻も早く、さっきの男達から離れたい気持ちもあるが、車に乗って、万が一敵だった場合、逃げ場がないのだ。


「早くして。乗らないなら、そのまま死ねばいい」


愛らしい少女から、辛辣で鋭い言葉が出る。一瞬の迷いの末、乗ることにした。最悪少女相手なら何とかなると考えたからだ。


「なんで俺をしってる?さっきの男と君たちは……?」


後部座席に乗り込んだ後、特に何かされるわけでもなく、八尋はおとなしくしていたが、気になっていたことを質問した。


「元から君が転成者だということは、わかっていた」


運転席にいた青年が、答えた。


「俺らがなんなのか、詳しい話はホームに着いてから教えてやるよ」


八尋はほとんど何もわからないまま、暫く乗っていると、郊外の工場についた。

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