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十年前の約束 君を幸せにする約束  作者: 東頭明治
プロローグ 十年間
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望んだ出逢い 望まぬ出逢い 1

 足を引きずりながら歩いていくと、漸く学校の校門が見えてきた。

 私立桜菜学園。

 それがオレ達が通っている学校の名だ。

 県内でもそこそこの進学校といわれ、高校受験生達の間でもそれなりの人気を持っている。また、私立校故なのかは知らないが、とにかくイベントの数が多い。

 中でも人気なのが、夏休みの最中にこの地域で行われる花火大会に合わせて行われる、校内屋台大会だ。 

 各クラスそれぞれの屋台を校庭に開き、屋上で打ち上げられる花火を見ることができる。

 学校関係者でなくても立ち入りは許可されるので、地域の住民達も、花火を見る場所取りと屋台で出される食べ物を期待して、多くの人々が学校に集う。

 このイベントは夏休みということもあり、生徒は自由参加となっている。

 当然オレは参加しない。何が楽しくてこの暑い季節に人が密集しているところへ赴かなければならないのか。

 屋台を開くのは桐花や一馬などのイベント好きの人間と学級委員くらいのものである。その他の生徒は、参加するとはいっても精々屋台で食べ物を買い、屋上で花火を眺めているくらいだろう。

「そういやぁ、夏休みの花火大会には参加するのか?」

 オレが花火大会のことを考えていると、一馬がタイミングよくそう尋ねてきた。

「いや、オレは参加しない」

 要点だけを手短に答える。

「僕は参加するよ」

 続いて渡も答えた。

「まぁ、ユウはそういうのあんま興味なさそうだもんな。......ま、精々夏休みオンリーライフを満喫しろよ。オレと渡は独り身同士で仲良く夏休みを過ごすけどな」

 そう言って、高らかに笑いす。

「言われなくてもそうするよ」

 やはり幼馴染み。オレの性格をきちんと把握している。

 というか、オレが分かりやすい人間なだけかもしれない。

「......なあ、ユウ。お前もたまには外に出たらどうなんだ? そんなに引きこもってるから、周りから影薄い人だって思われるんだぞ?」

 呆れたため息をついてそう言う一馬。

 冗談のつもりで言った台詞が真実であると知って内心驚いているのだろう。

 今度は心配そうにそう言ってきた。

 そもそも、オレを影薄いと言い出したのは一馬である。小学三年生のときそう言われたことは今でも忘れていない。

「ほっとけよ。オレは長期休暇は自堕落な生活を繰り返すと心に決めてるんだ」

「はは......でも、ほどほどにね?」

 優しく忠告してくれる渡。

 気がつけば、もう校門を通る寸前だ。


 さて、オレの高校二年の一学期に終止符を打とうか

 

 その時、黒塗りの高級外車が目に留まった。

 数十メートル離れた場所を静かに走っている。



 ............見覚えがある。



 同時に、とある病院の姿が脳裏を過った。



 ............まさか。



 走り出す。


「あ、おい!? どこ行くんだよユウ!!」

 背後から一馬の声が響く。顔だけを後方に向けて叫ぶ。

「用事ができた!! 遅刻するかもって先生に伝えといてくれ!!」

 そう言い残し、オレは走り続けている車にこれ以上距離を離されないべく全力で駆けた。

「あ、おい!! ......遅刻するかもって......あと五分しか時間ねぇぞ......」

「大丈夫かな? いつもと様子が違ったけど......」



────────────────────────────



「はぁ......はぁ」

 見失ってしまった。

 あれから三分程はなんとか追いすがっていたが、車のスピードには敵わず置いてかれてしまった。

 この気温の中全力で走っていたせいで、汗が止めどなく噴き出してくる。

「......どこいきやがった」

 顎を垂れていく汗を手で拭う。

 目の前にある交差点の左右、前方を見渡す。

 しかし、見当など付くはずもない。

 オレは道路脇の電柱へと背中を預け、息を整えるために深呼吸を繰り返した。


 ......病院


 先程脳裏を過った場所であり、オレとアイツが約束を交わした場所。


 『必ず彼女を幸せにする』と誓った場所。


「......そりゃあ、そこで出逢えたら感動的なんだろうけど」

 そもそも、あの車がオレの記憶にある車と同じという確証もない。

 だが、妙な胸騒ぎがする。

「......行くだけ行ってみるか」

 半信半疑でその病院へと向かい始めた。







 


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