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ハルは驚いた。
そりゃあ、自分の体がスライムの中にすっぽり入っていたら誰だって驚く。
入っているだけならまだしも補食されていた。
スライムは透明のどろどろしたゼリーのようなモンスターで、何でも食べる雑食性である。
本当に何でも食べる。
草でも、動物の死骸でも、水でも、火でも、
ありとあらゆるものを食べる。
スライムは胃まで透明なので、その姿を見たら今さっき何を食べているか分かる。
なので、ハルも水辺にうつるスライムの姿を見てわかった。
「俺、食べられてる。」
手も足も動かない理由は見てすぐにわかった。
もう、スライムに補食されてだいぶたったのか、手と足が溶けてなくなっていた。
おそらく消化されたんだろう。
スライムもほのかに赤黒くなっていた。
ハルはパニックになって、大声を出そうとするが声が出ない。
暴れようにも暴れることも出来なかった。
だが、スライムの消化は遅い。
弱い彼らは一度食べたものを何日もかけて消化することによって、過酷な生物競争になんとか生き延びている。
つまり、ハルはあと数日はスライムの中で過ごさないといけない。
はじめはパニックになっていたハルも、今では死を受け入れ他の事を考えていた。
それは怒りだ。
スライムに対してではない。
あの、俺を刺した知らないヤツらに対してだ。
刺したヤツの顔も見てない、雰囲気さえも覚えてない。
だがハルはもうその知らないヤツへの怒りだけが、感情を支配していた。
「もし、生まれ変わったらアイツらを殺してやる。俺と同じようにスライムの餌にしてやる。」
「お願いします、神様。どうか、俺に復讐のチャンスを。」
そう心のなかで怒り、復讐、願いを唱えながら1週間たち、ようやくハルの体はスライムに全て消化された。
【スライム】
体全体が透明のゼリー状のモンスター。
何でも食べる雑食性で、森の掃除人と呼ばれている。
胃も透明のため、食べたものが一目でわかる。
そのため、草を食べていたら緑色に、動物を食べていたら赤色になっている。
スライムの種類は様々で、
ウォータースライム、スライムバードなど沢山いる。
これらは、もともと同じスライムだが、食するものから特徴を受けて進化(成長)することがわかっている。
例
スライムが
水を過多に摂ることにより→ウォータースライムに進化(成長)
鳥を摂ることにより→バードスライムに進化(成長)