均衡の崩れた世界
「はい、何でしょうか?」
「相模雷人さん、ですよね?私は女神です。貴方は無事生まれ変わる事ができました。といっても、普通の異世界ではありませんが」
…………え、生まれ変わり? っしゃあぁぁぁー。生まれ変わったよ、俺。異世界行けるよ、やったね俺。
でも、何か言ってなかったっけ? あ、普通の異世界じゃないって言ってた。というか、そもそも普通の異世界って何だ? あれか? 魔法使って最強になる的なあれか?
「相模さん。貴方が生まれ変わる世界は貴方が想像しているような世界ではありません。いや、正確には貴方が想像しているような状態ではないと言うのでしょうか?」
ん? 俺が想像しているような状態じゃない?
「貴方がこれから転送される世界の話をする前に、異世界の話をしておかなげればなりません。まず、異世界は二つあります。そのどちらも私や他の女神達で管理しているのですが、少し前から片方の異世界の均衡が崩れました。具体的に言うと、魔族の強さや数が人族を圧倒的に上回ったのです。その比率は現在8:2ほどです。このままではいずれ世界は崩壊します。そこで、私達はある決定を下しました。それは自殺して死んだ者、若しくは犯罪歴のある者にその均衡が崩れた世界に行ってもらい、均衡を保ってもらうというものです。もちろん、貴方も例外ではありません」
「え、じゃあ俺はゲームで言うと終わりの村で生まれて冒険をする、という事ですか?」
「はい」
て、それ無理ゲーじゃねぇかあぁぁぁー。
「いやいや、俺そんなとこ行きたく無いですよ」
「もちろん、成功報酬はあります」
ほほぅ、興味深いじゃないか。
「成功報酬は、最強といえる力を持ったまま、もう片方の均衡が崩れていない世界に行く事です」
なるほど、俺Tueeeeeeが実践出来るわけか。うーむ、まぁ、それくらいが妥当かな。乗った。
「分かりました。俺、異世界行きます」
「はい。ではクリア条件を説明します。それはただ一つ、魔族と人族の強さを均衡に保つ事です。この際数はどうでもいいです。両族の強さを保てるのならどんな手段を用いても構いません」
そう言い終わると、女神は俺の周りに魔方陣を書き出した。
「では、さようなら相模さん。活躍、期待してますよ」
俺の身体が宙に浮く。すげー、何という無重力感。
「あ、言い忘れていましたが、貴方は雷系統の魔法が得意ですよ」
それだけ聞いて、俺の意識は断たれた。