第96話 面接の日
それから2週間後の日曜日。
今日は、姉さんの面接の日である。
ちなみに筆記試験は、既に先週済んでいる。
筆記の方は、最低限度の学力を見るためのものなので、余り、難しくは無かったそうだ。
問題は、今日の面接である。
これで、実質的に合否がきまるのだ。
「さ〜てと、行きましょうか」
朝食をすませると、制服を着た姉さんが、面接に行こうとしていた。
「姉さん、忘れ物は無いよね」
「もお、ゆうくん、大丈夫だよ」
そう言いながら、姉さんが笑った。
何か、僕の方がソワソワしているみたいだ。
・・・
それから、二人とも玄関に向かった。
姉さんが靴を履くと、玄関のドアを開ける。
「じゃあ、行ってくるよ」
「姉さん、頑張ってきてね」
玄関を出ようとしていた姉さんに、僕がそう励ます。
「ゆうくん、頑張ってくるね〜」
元気に溢れた声を出しながら、姉さんが玄関を出て行った。
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それから、半日後。
もう、5時になる。
そろそろ、帰る頃だな。
そう思いながら、夕飯の支度をしていると、
「ガチャ」
玄関のドアの音が聞こえた。
姉さんが帰ったんだな。
そう思うと、僕は姉さんを出迎えに行く。
・・・
「姉さん、ご苦労様」
玄関に出ると、ヘロヘロになっている、姉さんがいた。
「ゆうくん、疲れたよ〜」
そんな心底疲れた声を出して、姉さんが靴を脱ぐと、僕に倒れ込むように抱き付く。
「ね、姉さん!」
「へへへっ」
倒れ込む姉さんを抱き止めると、姉さんが満足そうな笑い声を出した。
「ゆうくん、お願い、運んで〜」
姉さんが全体重を掛けながら、僕にしがみ付く。
「もお、しょうがないなあ〜」
僕は、文句を言いつつも、姉さんを抱きかかえながら運んだ。
・・・
居間まで運ぶと、姉さんをソファに下ろす。
姉さんは疲れた顔のまま、満足そうな表情になった。
「で、どうだったの?」
僕が肝心の、面接の結果を尋ねてみると、
「う〜ん、特に、ドジを踏んではないから、大丈夫だろうと思うけど」
何とも、呑気な答えが帰ってきた。
「それより、疲れたから、ゆうくん、膝枕して〜」
「へっ?」
「膝枕〜」
すると、姉さんがイキナリ、突拍子も無い事を言い出す。
僕は、夕飯の支度をしていたんだけどなあ・・・。
「ね、お願い♡」
姉さんが両手を合わせて、僕にお願いする。
「しゅうがないなあ・・・」
仕方がないので、僕はソファの端っこに座った。
すると、姉さんが寝ながら僕に、にじり寄ると、僕の膝に頭を乗せた。
「ふふふっ」
姉さんが頭を乗せると、グリグリと左右の揺すった。
「(さらっ)」
「ゆうくん・・・」
そんな姉さんが可愛く思った僕は、思わず姉さんの髪を撫でる。
「ゆうくん、ありがとう・・・」
僕の行為に対し、姉さんが感謝の言葉を言う。
それから、姉さんが僕の愛撫を受けつつ、静かに目を閉じた。
・・・
「すう・・・、すう・・・、すう・・・」
姉さんが静かに寝息を立てながら、眠ってしまった。
僕はまだ、夕飯の支度の最中なんだけど、仕方がない。
そのまま、姉さんが起きるまで待った。
しかし、そのせいで、夕飯の時間が大幅に遅れてしまったのだった。




