第94話 弟とシャイガール5
ある日の放課後。
今日は姉さんと、別行動である。
蓮先輩と一緒に、入試対策をする為だ。
しかし、今日は、
「ねえ、優くん、二人きりで帰るのは、初めてじゃないかな・・・」
「そう言えば、以外にそうですね」
由衣先輩と二人で帰っていたのだ。
ちなみに、瑞希先輩はと言うと、
「ちょっと、今日は用事があるから、先に帰るね〜」
そう言って、先に帰った。
何か、二人きりにする様な、意図を感じてしまう。
しかし、かと言って、由衣先輩と一緒に帰らない理由も無いので、瑞希先輩の誘導に乗る形にはなるけど、由衣先輩と一緒に帰っていた。
・・・
そうやって帰る途中、ある公園の前に差し掛かった所で。
「ねえ、優くん、ちょっと公園に寄っていいかな?」
由衣先輩が、そう言ってきた。
先輩は上目遣いで、甘えるような視線で僕を見ている。
僕はそんな先輩の視線に耐えきれず、思わず、
「は、はい、良いですよ」
吃りながら答えた。
「ありがと♪」
僕の言葉を聞いた先輩が、上機嫌にそう言った。
そんな訳で、僕達は公園で寄り道をすることになったのである。
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「ギィ・・・、ギィ・・・」
二人は、並んでブランコに乗っていた。
先輩が、”座ろうよ”と言ったからである。
ブランコに乗って、公園を眺めていると、公園なのに、子供の姿が見えない。
恐らく、少子化と防犯の為、それに早い内から習い事をされるからであろう。
そうやって、公園を眺めていると、
「優くん、最近、何だかボンヤリしていることが多いね」
先輩が、そんな事を言ってきた。
自分では自覚は無いが、恐らく、姉さんの事を考えていたからなのであろう。
あの事があってから、特にそうである。
・・・
何と言って良いか分からない、僕を見て先輩が、ブランコから立ち上がると、僕の後ろに来た。
僕の後ろに来ると、先輩が、
「(すーっ)」
僕の首に腕を廻す。
「優くん、言いたくなければ言わなくて良いよ、だけど、無理はしないでね」
それから先輩が、僕の耳元に口を寄せると、そう囁いた。
「先輩、ありがとうございます・・・」
僕は、先輩の優しさに感謝して、そうお礼を言う。
僕の言葉を聞くと、先輩が僕の首に廻した腕に少し力を入れると、頭に右頬を乗せる。
「優くんは、ホントに素直で良い子だね」
先輩が僕にそう言うと、僕の頭に頬ずりをし出した。
それと同時に、廻した左手を起こし、僕の頭を揉む様に撫でている。
先輩の感触は、心地良さとむず痒さが、入り混じっていた。
・・・
そうして、僕はそんな奇妙な感触を感じながら、先輩に抱き付かれていたのだった。




