第93話 姉とイケメン5
今回は、華穂視点の話です。
それから、しばらく経ち、私は推薦入試の準備をしなけらばならなくなった。
あれから、ゆうくんとは普通通りにすごしている。
ただし、あの事に関しては、お互いに触れずにいた。
「ねえ、華穂さん、どうしたの?」
「あ、ううん、何でもないよ」
私が考え事をしていると、蓮くんが私に尋ねてきた。
それに対し、私は何でもないと答える。
今日は蓮くんと、学校の図書室で入試の対策をしていた。
と言っても、主に、面接の対策の方が比重が大きいけど。
そんな訳で、今日も二人は一緒にいたのである。
少し前から、二人は一緒にいる事が多い。
一緒の大学に、同じ推薦を狙っていたから、自然に一緒になっていた。
・・・
何日か前までは、瑞希もいたのだった。
瑞希の方は、別の大学の一芸入試を狙っていたのだ。
瑞希は、空手の全国大会で優勝経験者であり、また、毎回、上位入賞をしているから、その実績を持って入るつもりらしい。
なので、当然、面接があると踏んで、一緒のいたのである。
しかし、どうやらそこは、そう言う場合、実技を見ると言う形になる事が分かり、瑞希は来なくなった。
なので、今は二人だけなのだ。
ちなみに由衣の方は、普通に別の大学の、一般入試を受けるつもりらしい。
・・・
「はあっ」
「あれ、どうしたの?」
「えっ?」
「最近、何だか、溜め息が多いし、それに少しテンションが低いように見えるよ」
そうなのか? 自分では普段通りにしているつもりだけど。
「やっぱり、推薦が近いから、ナーバスになっているのかな」
蓮くんがそんな事を言った。
うーん、どちらかといえば、ゆうくんの事が原因なんだろうけど、そんな事は、彼には言えない。
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もう、全校生徒下校の時間来たので、図書室を出る事にした。
ゆうくんは、先に帰っていた。
夕飯の支度は自分がすると言って。
ゆうくんの優しさには、いつも感謝している。
「キュッ、キュッ」
人気が無い廊下を、蓮くんと並んで歩いている。
「ねえ、華穂さん」
「うん?」
蓮くんが呼んだので、私が返事すると。
「(ふわっ)」
「えっ!」
蓮くんがイキナリ、私を抱き締めたのだ。
「ごめんね、突然こんな事をして。
でも、華穂さん、元気が無いようなに見えるから。
それで、少しでも、元気になってもらいたいと思って・・・」
そう言いながら、蓮くんが私の頭を撫で出した。
その感触は、ゆうくんとは違うが、それでもとても気持ち良い。
「華穂さん、嫌じゃないの?」
「ううん、構わないよ・・・」
そう言って、私は、目を細めながら蓮くんに成すがままにされていた。
蓮くんに撫でられている内に、私は体の力が抜けて行き、いつの間にか、蓮くんに寄りかかってしまったのだ。
しかし、そんな私の体を、蓮くんは受け止めてくれた。
そうやって、しばらくの間、私は蓮くんに身を任せていたのであった。




