第90話 シャイガールが来た
今回は、由衣視点の話です。
瑞希と一緒に歩いていると。
「ねえ、どこ回ろうか?」
と尋ねてきたので。
「う〜ん、それじゃあ、クラブがまとまって出している所に、行ってみない?」
運動部関係が出している出店が、集中しているエリアに行く事を、私が提案したけど。
「いいよ、アイツらの顔なんか見たくないから」
そう言って、瑞希が不機嫌になった。
元々、瑞希は空手をやっていたけど、この学校には、空手部が無いので、基礎体力を付けるために、水泳部に入ったのだ。
しかし、その水泳部が全くやる気が無い所だったので、一流の選手である瑞希からすると、かなり不満があったらしい。
1年の頃から、事ある毎に他の部員と衝突して、3年になったのキッカケに、とうとう完全に絶縁してしまった。
形の上では引退だけど、実質的に、部を見限ったのである。
「それじゃあ、由衣の方の部に、行ってみない?」
「でも、私の方の部は、無くなったし・・・」
「あ、そうか」
私は、読書部に所属していたけど、今年になって、部員の確保に失敗して、休部になってしまったのだ。
私も形の上では、引退状態だけど、私の場合は部その物が無くなったのである。
「それなら、優くんの所に行ってみない?」
「えっ!」
「由衣も、優くんのメイド姿を見てみたいでしょ」
「う、うん、良いのかな・・・」
「いいから、いいから」
「あっ! ちょっと、引っ張らないでよ!」
そんな訳で、優くんのクラスの所に行くことになったのである。
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私達二人が、優くんのクラスに向かっていると、
「蓮のヤツは、上手くやっているかな」
瑞希がそんな事を言ってきた。
「何?」
話が理解できない私は、瑞希に聞いてみた。
「いやね、華穂と蓮を二人きりにして、蓮のヤツに機会をやったのよ。
まあ、蓮の事だから、上手くやっているだろうけど」
「やっぱり・・・」
最近の瑞希の動きからすると、案の定だった。
最近は、華穂だけでなく、私の為にも、瑞希が動いてくれている。
その事自体がありがたいが、時々、ありがた迷惑な時もある。
そんな事を話しながら、私達は、廊下をあるいていた。
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「あれ?」
廊下を歩いていると、向こうから、メイド服を着た、背の高い女の子が来るのが見えた。
しかも、その女の子の顔は、ドコかで見たことがある顔であった。
「(ま、まさか・・・)」
その女の子が私達に近づきと、
「瑞希先輩、由衣先輩、こんにちは〜」
そう挨拶してきた。
やはり、思った通り、優くんであった。
優くんは、男の子にしては、華奢な方で、しかも声も高くて、中性的である。
そんな優くんが、メイド服を着ているので、パッと見ためには、女の子にしか見えない。
「はあ〜、ビックリしたなあ。
まさか、ここまで似合うとは、思ってもいなかったねえ〜」
「・・・、優くん、可愛いなあ・・・」
「えっ!」
瑞希も驚いたみたいだが、そんな優くんを見た私は、思わずそう言うと、当の優くんが、ビックリしたみたいだ。
私も、自分が言った言葉に驚くと、顔が熱くなって、俯いてしまう。
私の反応を見た優くんも、私に釣られて、顔を赤くしながら俯いてしまった。
「(バサッ!)」
「うわっ!」
私と優くんが、お互いに向かい合わせに俯いていたら、突然、瑞希が優くんのメイド服のスカートをめくった。
「チッ、な〜んだ、下は短パンだったのね」
「ちょっ、ちょっと! 瑞希先輩ー!」
「瑞希、止めなさいよ!」
めくれた、スカートから見えたのは、体操服の短パンだった。
優くんは、スカートを押さえながら、瑞希を睨んでいた。
「(バッ!)」
「へっ!」
「えええっ!」
そんな瑞希に、制裁する為、私は瑞希のスカートをめくった。
すると、水色の物が一瞬見えた。
それを見た、優くんが驚愕の声を上げる。
「〜〜〜〜!」
「自分がされて嫌な事は、人にはしない」
私は、瑞希にそう説教する。
「(ブワッ!)」
「きゃっ!」
「・・・」
しかし瑞希は、今度は、私のスカートをめくった。
・・・今日は、白の下着を着てたのだった。
優くんがそれを見て、絶句している。
「だからって、アンタがめくらなくても良いじゃないのおー!」
と言って、瑞希が抗議する。
・・・
廊下の一角で、女の子二人と女装した男の子が、お互い向かい合わせで。
スカートの前を押さえながら、真っ赤になっている、奇妙な図が出来ていたのであった。




