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第90話 シャイガールが来た

今回は、由衣視点の話です。

 瑞希と一緒に歩いていると。



 「ねえ、どこ回ろうか?」



 と尋ねてきたので。



 「う〜ん、それじゃあ、クラブがまとまって出している所に、行ってみない?」



 運動部関係が出している出店が、集中しているエリアに行く事を、私が提案したけど。



 「いいよ、アイツらの顔なんか見たくないから」



 そう言って、瑞希が不機嫌になった。


 元々、瑞希は空手をやっていたけど、この学校には、空手部が無いので、基礎体力を付けるために、水泳部に入ったのだ。


 しかし、その水泳部が全くやる気が無い所だったので、一流の選手である瑞希からすると、かなり不満があったらしい。 


 1年の頃から、事ある(ごと)に他の部員と衝突して、3年になったのキッカケに、とうとう完全に絶縁してしまった。


 形の上では引退だけど、実質的に、部を見限ったのである。




 「それじゃあ、由衣の方の部に、行ってみない?」


 「でも、私の方の部は、無くなったし・・・」


 「あ、そうか」



 私は、読書部に所属していたけど、今年になって、部員の確保に失敗して、休部になってしまったのだ。


 私も形の上では、引退状態だけど、私の場合は部その物が無くなったのである。




 「それなら、優くんの所に行ってみない?」


 「えっ!」


 「由衣も、優くんのメイド姿を見てみたいでしょ」


 「う、うん、良いのかな・・・」


 「いいから、いいから」


 「あっ! ちょっと、引っ張らないでよ!」


 




 そんな訳で、優くんのクラスの所に行くことになったのである。




 ******************




 私達二人が、優くんのクラスに向かっていると、



 「蓮のヤツは、上手くやっているかな」



 瑞希がそんな事を言ってきた。



 「何?」



 話が理解できない私は、瑞希に聞いてみた。




 「いやね、華穂と蓮を二人きりにして、蓮のヤツに機会をやったのよ。

 まあ、蓮の事だから、上手くやっているだろうけど」


 「やっぱり・・・」




 最近の瑞希の動きからすると、案の定だった。


 最近は、華穂だけでなく、私の為にも、瑞希が動いてくれている。


 その事自体がありがたいが、時々、ありがた迷惑な時もある。



 そんな事を話しながら、私達は、廊下をあるいていた。




 ******************





 「あれ?」



 廊下を歩いていると、向こうから、メイド服を着た、背の高い女の子が来るのが見えた。


 しかも、その女の子の顔は、ドコかで見たことがある顔であった。



 「(ま、まさか・・・)」



 その女の子が私達に近づきと、



 「瑞希先輩、由衣先輩、こんにちは〜」



 そう挨拶してきた。


 やはり、思った通り、優くんであった。


 優くんは、男の子にしては、華奢な方で、しかも声も高くて、中性的である。


 そんな優くんが、メイド服を着ているので、パッと見ためには、女の子にしか見えない。




 「はあ〜、ビックリしたなあ。

まさか、ここまで似合うとは、思ってもいなかったねえ〜」


 「・・・、優くん、可愛いなあ・・・」


 「えっ!」




 瑞希も驚いたみたいだが、そんな優くんを見た私は、思わずそう言うと、当の優くんが、ビックリしたみたいだ。


 私も、自分が言った言葉に驚くと、顔が熱くなって、俯いてしまう。


 私の反応を見た優くんも、私に釣られて、顔を赤くしながら俯いてしまった。




 「(バサッ!)」


 「うわっ!」




 私と優くんが、お互いに向かい合わせに俯いていたら、突然、瑞希が優くんのメイド服のスカートをめくった。




 「チッ、な〜んだ、下は短パンだったのね」


 「ちょっ、ちょっと! 瑞希先輩ー!」


 「瑞希、止めなさいよ!」




 めくれた、スカートから見えたのは、体操服の短パンだった。


 優くんは、スカートを押さえながら、瑞希を(にら)んでいた。




 「(バッ!)」


 「へっ!」


 「えええっ!」



 そんな瑞希に、制裁する為、私は瑞希のスカートをめくった。


 すると、水色の物が一瞬見えた。


 それを見た、優くんが驚愕の声を上げる。




 「〜〜〜〜!」


 「自分がされて嫌な事は、人にはしない」




 私は、瑞希にそう説教する。




 「(ブワッ!)」


 「きゃっ!」


 「・・・」




 しかし瑞希は、今度は、私のスカートをめくった。


 ・・・今日は、白の下着を着てたのだった。


 優くんがそれを見て、絶句している。



 「だからって、アンタがめくらなくても良いじゃないのおー!」



 と言って、瑞希が抗議する。



 ・・・



 廊下の一角で、女の子二人と女装した男の子が、お互い向かい合わせで。


 スカートの前を押さえながら、真っ赤になっている、奇妙な図が出来ていたのであった。



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