第9話 2人だけの夕食
家から帰ると、二人で料理をするのが日課だ。
今日も、帰ってからの部屋でジーンズとスウェットに着替えると、一階に降りる。
一階に降りると、姉さんはすでに着替えが済んでおり、少し厚手の明るい緑色の膝丈スカートに、ピンクっぽいオーバーの上から、フリルで縁取られたエプロンを着ている。
見ると、既に下ごしらいを始めていた。
それを見て、僕も姉さんの隣に行き、一緒に準備を始めた。
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姉さんが、ガスコンロの前で、オムレツを焼く準備をしている。
僕の方は、流しの所で野菜を切っている所である。
何を作っているかと言うと、ツナサラダをつくっているのだ。
「トントントン、トントントン」
リズミカルに、包丁を動かしていると。
野菜を切り損ねて、手が滑ってしまった。
「痛っ!」
勢い余って、左手を切ってしまう。
「ゆうちゃん、怪我したの!」
僕の声を聞いて、姉さんが振り向いた。
左の薬指を、切ってしまった僕は。
すぐさま蛇口を捻って水を出して、傷口を流した。
「チョット、見せて!」
血相を変えながら、姉さんが僕の手を取ると、洗って直ぐなのに、また血が流れ出しているのが見えた。
そして、それを見た姉さんが。
「あっ!」
僕の指を口に含んだ。
姉さんが、両手で僕の手を持ち、怪我をした僕の指を舐めている。
舐めながらと同時に、指を吸ってさえしている。
舌が傷口を通ると、剥き出しの感覚器官を刺激するが、痛みでは無く、なぜか快感を感じ。
また、指を吸われると、イケない事をしている様な、背徳感に襲われた。
そうして、しばらくして、血が出るのも少なくなってから、姉さんが指から口を離した。
「さあ、絆創膏を貼りましょうね」
姉さんがそう言うと、僕の手を持ったままで、一緒に居間の方に行った。
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「「いただきます」」
途中、ハプニングがあったが、料理も完成し、今から食事を始める所である。
「パクっ」
僕はさっそく、姉さんが作ったオムレツを食べた。
中の具が程よく塩コショウが効いて、僕はこの位の味加減が好きだ。
僕が一心不乱に、オムレツを食べていると。
姉さんがテーブルに肘を付いて、僕の事をジッと見詰めている。
「ゆうくん、おいしい?」
「うん、おいしい」
姉さんが僕にそう尋ねてきたので、僕は美味しさで緩んだ頬のままでそう答える。
「ありがとう」
僕の顔を見ながら、その答えを聞いた姉さんは、嬉しそうな笑顔を見せた。
「パクパクパク」
「ニコニコニコ」
姉さんが笑顔のままで、僕の食べている姿を見続けている。
「姉さん、早く食べないと冷めちゃうよ」
「うん、分かったよ」
僕の言葉に、姉さんは箸と茶碗を手に取るが、その手は殆ど進んでいない。
結局姉さんは、その後も僕の事を見続けていたのだった。