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第89話 姉さんが来た

 それから、文化祭当日になった。



 「お客様、いらっしゃいませ〜」



 僕は、メイド服に身を包んで、明るく接客する。


 さんざん、宮陣さんにシゴかれたおかげで、すっかりメイドとしての身のこなしが板に付いていた。



 教室に入ってきた客を、席まで案内すると、



 「ご注文は、何になさりますか?」



 トレイを体の前で、両手を交差させながら持ち、それから、そう言って僕は、注文を取っていた。




 ******************




 「ねえ、ここで二手に別れない?」



 イキナリ、瑞希がそう言ってきた。


 文化祭は、土日の2日間に行われている。


 3年生は、出し物が無いので、その2日間は自由参加である。


 ただし、出し物を出さない代わりに、進学希望者が全員合格、就職希望者は内定を、と言う無言の圧力が、先生方から掛けられるのである。


 それで私達は、初日に学校を回ることにした。




 「どうしたの、急に?」


 「うん、4人でゾロゾロ歩くよりは、二手に分かれた方が、色々な所を廻れると思ったからよ」




 何だか、突然な印象を受けるが、確かに、こんなに人が多い中、4人で回るのは大変だ。


 出し物も、各クラスだけでなく、各種のクラブなども出店しているので、結構、多いのだ。


 ちなみに、クラブの出し物に限り、3年生が応援で参加している場合もある。




 「じゃあ、私と由衣が二人で回るから、華穂は、蓮と一緒にね」


 「えっ、ちょ、ちょっと、瑞希〜」




 瑞希はそう言って、急に由衣と共に、私と蓮くんから離れて行った。


 離れるとき、蓮くんにウインクをした様に見えたけど・・・。



 ・・・



 「まずは、ここからだよね」



 私は、蓮くんと一緒に、ゆうくんの教室の前にいた。


 最初に、ゆうくんのメイド姿を見ることにしたのだ。




 「本当に、最初に行くの?」


 「もちろんよ」



 意気込んだ私を見て、蓮くんが苦笑いを浮かべている。



 「さあ、入りましょう」




 私はそう言って、教室へと入って行った。




 *******************




 「いらっしゃいませ・・・、え、姉さん!」



 僕が入り口で、出迎えをしていた所、突然、姉さんが入ってきたのである。


 僕がビックリして固まっていると、それを見ていた姉さんが、




 「・・・かっ」


 「かっ?」


 「可愛い〜!」




 イキナリ、僕に抱き付いてきた。


 僕に抱き付きながら、首筋に頬ずりをし出したのだ。



 ・・・



 しばらく、姉さんが僕に抱き付いていたら。



 「華穂さん、そんな所に居たら、邪魔になるよ」



 姉さんの後ろから、声がした。



 「あっ、そうだね・・・」



 姉さんが、急いで僕から離れる。


 後ろにいるのは、蓮先輩である。


 どうやら、姉さんと一緒に回っている様だ。



 「それでは、お席の方へどうぞ」



 僕は、複雑な気持ちになりながら、二人を席に案内した。




 ******************




 「むふふっ♪」



 私は、余りの満足感に、思わず笑顔になる。



 「どうしたの、ご機嫌だね」



 私の様子を見ていた、蓮くんがそう尋ねてきた。



 「うん、可愛い、ゆうくんの姿が見れたからね♡」



 私は、満足そうな笑顔のまま、そう答えた。


 それを見た蓮くんが、何とも言えない表情になる。


 優くんのメイド姿を拝めたし、もちろん、携帯のカメラでその姿を撮影した。


 後で、父さん母さんの所に、メールで送ろうかな♪



 「ご注文の品をお持ちしました」



 私がそんな事を考えていたら、ゆうくんがトレイに頼んだ物を持って来た。



 「(パシャッ!)」



 私は慌てて、携帯カメラにその姿を、また撮る。


 すると、ゆうくんは、顔をヒクつかせている様に見えた。



 「ほら、ゆうくん、スマイル、スマイル」



 そんなゆうくんに、私がそう言うと、ゆうくんは、引きつった笑顔を見せた。



 ・・・



 ゆうくんが、引きつった笑顔のまま、注文の品をテーブルに置くと、



 「それでは、ご注文は以上になります」



 そう言って一歩下がり、一礼をした後、それから席から下がった。


 私は調理スペースに下がる、ゆうくんの後ろ姿を見ると、テーブルに置いた携帯を持って、ゆうくんの後ろ姿を、更に撮る。


 それに気付いたのか、ゆうくんが”ガックリ”と頭を前に倒した。



 「・・・はあ、かわいそうに」



 対面に座っていた蓮くんが、そう言って憐れそうな目で、ゆうくんを見ていたのであった。



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