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第88話 文化祭の準備

 文化祭を控えた、ある日の放課後。



 「(コン、コン、コン)」


 「(ギコギコギコ)」


 「お〜い、これはドコに持っていけばいいんだ〜!」


 「ねえ、ここの飾り付けはどうかな〜」




 教室は、文化祭の準備で大忙しである。


 かく言う僕はと言うと。




 「はい、”お客様、いらっしゃいませ〜”」


 「「「「「お客様、いらっしゃいませ〜」」」」」




 女装メイド喫茶の元凶である、宮陣さん監修で、接客の練習をしているのである。



 「もう少し足を閉じて、はい、背筋を伸ばーす!」




 宮陣さんの激がとぶ。


 もちろん、メイド担当のメンバーは、当然、メイド服を着てである。


 初日の練習の時、ドコから持ってきたのか、宮陣さんが、人数分のメイド服を持ってきたのだ。


 そして、僕以外のメンバーが、女子全員により、強制的にメイド服を着させられたのだった。



 「「「「「しくしくしく」」」」」



 当然、全員が教室の隅で、うずくまって泣いてしまった。


 最初の頃は、イヤイヤながらだけど、最近は、慣れたのか、それとも吹っ切れたのか、積極的に練習している。



 「もう少し、ユックリとお淑やかに歩く!」



 本物の女の子でもやらない事を要求する、宮陣さん。


 もう完全に、ノリノリである。


 そんな宮陣さんにシゴかれながら、メイドの練習をやるのであった。




 *******************




 練習が終わると、外は、すっかり陽が落ち、暗くなっていた。


 そんな中、僕と透也が珍しく、一緒に帰っている。


 ちなみに、この学校の文化祭で出し物をするのは、1、2年だけで、3年は受験を理由に出し物を出さないのである。


 なので、姉さん達は、先に帰ってもらっていたのだ。


 僕と透也が、二人で玄関の影の所に差し掛かると、見たことのある人影が見えた。



 「あれ、どうして・・・」



 見ると、由衣先輩が壁に寄りかかりっている。



 「じゃあな、先に帰るわ」



 そう言って、透也が先に行ってしまった。


 どうやら、僕に気を使った様である。


 ”その気配りを、出し物を決める時とかに、見せてくれれば良かったのに”


 僕は、内心、そんな事を思ってしまった。


 透也が離れたのを見た、由衣先輩が、壁から背を離し、僕の方に近づいてくる。




 「優くん、結構、遅かったね」


 「先輩、どうして・・・」


 「うん、優くんを待っていたの♪」




 そう言いながら、先輩が微笑んだ。




 「ダメでしょ、先輩、女の子がこんな薄暗い所に、一人で居ちゃ。

先輩は、可愛いから、特に危ないよ」


 「優くん・・・」




 僕の言葉を聞いた先輩が、瞳を潤ませながら、僕を見詰めていた。



 ・・・



 「くゅん!」



 突然、先輩が可愛らしいクシャミをする。


 もう10月も半ばになり、夜になるとそれなりに冷える。


 どうやら先輩は、体を冷やしたみたいだ。




 「先輩、寒いですか?」


 「う〜ん、手が少し冷えたかな」




 そう言って、自分の右手で左手を握りこむ。


 それを見ていた僕は、思わず、



 「あっ・・・」



 先輩の手を握ってしまった。


 先輩の手は思ったよりも、冷えている。


 元々から、体温が低い上、長い間冷えた所にいたからであろう。


 先輩を見かねた僕は、先輩の手を引き込むと、



 「えっ!」



 自分のYシャツの中に入れた。


 この方が暖まると思ったからだ。


 更に言うなら、冬になると、姉さんによくこれをしていたのである。



 「先輩、暖かいですか?」



 先輩が頬を赤くしながら、(うなづ)いてくれる。


 こうして、僕はしばらく、冷えた先輩の手を温めていた。


 その間、先輩が赤い顔のままで、僕の事をジッと見詰めていたのだった。



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