第87話 姉さんにバレました
その日の帰り。
「はあ〜」
重い気分に、僕は溜め息を付いた。
僕は、溜め息を付きながら、階段付近で、姉さん達を待っていた。
自分が女装メイドに決まった時、自分の姿に見惚れていたけど。
その後、冷静になると、トンでもない物に選ばれた事に気付く。
「みんなから、見られるんだよな」
そうなのだ、不特定多数に自分の女装姿を見られるのだ。
「はあ〜」
そんな事を考えると、再び溜め息が出てきた。
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3階から姉さん達が降りてきて、僕は合流する。
しかし、相変わらず、気分は晴れない。
「どうしたの? ゆうくん、何だか暗いよ」
そんな僕に、姉さんが尋ねてきた。
「あ、うん、大した事じゃないよ・・・」
それに対し、僕は歯切れが悪く答える。
「むふふっ、ひょっとして、文化祭の出し物の事でかな〜♪」
「(ギクッ!)」
歯切れが悪い僕を見ていた、瑞希先輩が、意味ありげな言い方でそう言った。
それを聞いた僕は、内心、動揺した。
「確か、女装・・・」
「瑞希先輩、待って!」
姉さんに知られたくない事を、喋ろうとした瑞希先輩の口を、思わず押さえた。
「「女装メイド喫茶だったよね」」
「へっ?」
姉さんと由衣先輩が、イキナリそう言うと、僕は、一瞬、呆けてしまった。
「うふふ、ゆうくん、もう知っているよ」
「優くんだったら、可愛いだろうなあ♡」
姉さんと由衣先輩が、そんな事を言った。
「ど、どうして、その事を・・・」
僕は、滝のような汗を流しながら、そう尋ねる。
「うん、透也くんから、聞いたの♪」
ニッコリしながら姉さんが、そう答えた。
”透也の野郎ーーーー!”
心の底から、透也に対する殺意が湧き起こってきた。
「(すうっ)」
透也に怒りの炎を燃やしていた僕の額を、突然、姉さんが掻き上げる。
「う〜ん、ゆうくんは、どんな感じになるのかなあ?」
僕の前髪を掻き上げながら、僕の女装姿を想像しているようだ。
「姉弟だから、鏡を見れば良いじゃない?」
「だからって、そこまで似る訳ないよ〜」
瑞希先輩がそう言うと、姉さんが笑いながら、そう返した。
「(すいません、結構似ています)」
僕は、心の中で姉さんにそう言った。
「優くんは、ゴツくないし、可愛いから、よく似合うと思うよ」
由衣先輩が、そう言って僕の顔を覗き込んだ。
先輩の顔も、好奇心で満々である。
そして一人、カヤの外にいる蓮先輩は、そんな僕達を見て、苦笑いを浮かべていたのであった。




