第86話 ええっ、そんな〜
それから、次のロングホームルールの時間。
「それでは、文化祭の出す、女装メイド喫茶の人員を決めます」
委員長の声が聞こえた。
そう、前回、女装メイド喫茶と言う、キワモノを出すことになったので、今回は、その人員配置を決めるのである。
「すいません、人員に関して、意見があります」
そんな中、その女装メイド喫茶と言う、キワモノの元凶になった、宮陣さんが、手を上げたのだ。
「はい、宮陣さん」
「はい、メイドの候補として、私は、大橋くんを推薦します」
”ええっ”、突然、そんな事を、彼女が言い出した。
「その理由は、何ですか?」
「はい、それは、彼が女顔で、背もそんなに高くないので、女装が映えると思うからです」
本人からすれば、トンでもない事をシレっと言う、宮陣さん。
後に判明する事であるが、彼女は腐であるが、それと、男の娘の趣味がある事が。
なので、彼女の作品に出てくるカップリングには、一見すると美少女だけど実は男同士と言う、頭を抱えるような物もあるのだとか・・・。
「うん、そうだよな、優のヤツは結構、女顔だよな」
「確かに、大橋くんなら似合いそう・・・」
「体格もどちらか言うと、華奢な方だし、違和感も少なそうだ」
クラス中から、そんな声が聞こえてきた。
「論より証拠、それでは実際に、着せてみましょう」
そう言いながら、机の横に書けてある紙袋から、黒い布を取り出した。
それは、よく見ると、黒を基調にして、ひらひらと白いフリルがあちらこちらに付いた、要するにメイド服であった。
”なんで準備してあるんだ!” 思わず、心の中で、そう突っ込んでしまった。
「さあ、大橋くん、これを来てちょうだい!」
「いや、嫌だよ!」
宮陣さんが、メイド服を持ちながら、僕の方にジリジリと近づくが、それと同じくらい、僕は後ろに後退する。
ちなみに隣の透也は、関わりを持つのを避ける為、しらんぶりをしていた。
・・・この薄情者め。
その距離が縮まらないのに、業を煮やした彼女が。
「女子のみんな〜! 手伝ってよ〜!」
「「「「「「「オッケーーー!」」」」」」」
彼女の声に、女子の殆どが返事をした。
「「「「「「「大橋くん、覚悟ーーー!」」」」」」」
「いやーーーー!」
こうして、僕は、女子の集団に取り囲まれてしまったのである。
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「しくしくしく」
「もお、そんな所で泣いてないで、こっちにおいでよ」
女子の集団に、強引に着替えされた僕は、教室の隅で泣いていた。
そんな僕に、元凶の宮陣さんが、呆れながらそう言った。
いつまでも教室の隅で泣いている僕に、業を煮やした女子の集団が、僕の両脇を抱えると、無理やり壇上に上げたのである。
「「「「「「「「おおおっーーーー!」」」」」」」」
壇上に上げられた僕を見て、教室から、どよめきが起こった。
「す、凄い・・・」
「似合ってる・・・」
「可愛い・・・」
そんな声が、教室中から聞こえる。
状況が飲み込めていない僕に、横合いから鏡が差し出された。
「これが、僕・・・」
鏡には、姉さんに似てるけど、ヘッドドレスを乗せた、姉さんよりも背が高い女の子が写っていた。
・・・
僕が、自分の姿に呆けていた頃。
元凶の宮陣さんは委員長に変わって、いつの間にか主導権を握っていた。
「それじゃあ、みんな、どうかな」
「「「「「「「賛成ーーーー!」」」」」」」
僕の姿を見た途端、それまでの、やる気の無さが一変した。
「それじゃ、他のメンバーは・・・」
そう言って、宮陣さんは、他のメンバーを推薦した。
そのメンバーは、やはり、女顔で、小柄な男子であった。
彼女が推薦すると、数の横暴で、推薦された人間は自動的に、メンバーにされたのである。
「・・・」
その選ばれた人間は、壇上の僕を見ながら、呆然としたのであった。




