第76話 積極的なシャイガール
昼休みの、姉さんの様子を見ていたら、僕は心が落ち着かなくなり。
それは、午後が始まっても変わらなかった。
授業の最中でも、内容がイマイチ頭に入らない。
・・・
「おい、優、どうした? 何か変だぞ」
5時間目が終わって、いつもと違う様子に気付いた透也が、尋ねてきたが。
「いや、何でもないよ」
僕は、自分の気持ちについて話す気が無いので、曖昧に答えた。
「そうか、今度は体育だから、着替えないとな」
透也は昼休みに一緒にいたから、状況は知っているが、あえて、それ以上は尋ねては来なかった。
そう言えば、次は体育か、早く着替えて体育館に行かないと。
そんな事を思いながら、着替えを開始した。
*****************
「ふう、少し遅れたなあ」
僕が着替えを終えると、一番最後らしく、もう誰も教室には居なかった。
そうして、教室を出ようとしたとき。
「あれ?」
よく見たことがある、顔を教室に入ってきた。
前髪を切り揃えた、肩に掛かるくらいの髪に、優しさを良く表した、垂れた目が目立つ顔の、女子が入ってきた。
由衣先輩だ。
先輩は僕を見ると、僕の机に、急ぎ足で近づき。
「優くん、これから体育なんだね」
ニッコリと微笑みながら、そう言った。
「ええ、そうです、スイマセン、急ぎますので」
「あ、ちょっと待って・・・」
時間が無いので、そう言って、僕は、先を急ごうとしたが。
「あっああ〜!」
その時、机に足を取られ転びそうになった。
咄嗟に、横の机に手を付いたので、何とか転ばずにすんだ。
すると、隣同士の机に手を付いたままで、僕の頭は、ちょうど先輩の胸の位置になった。
その状態になったのを見た、先輩が、
「(ギュッ!)」
「あっ!」
突然、僕の頭を抱き締めた・・・。
「ごめんね、イキナリ、こんな事をして。
たまたま通り掛かったら、優くんが一人で教室にいたから来たの。
どうしても、あなたの顔を見たかったから・・・」
先輩のお・・・、いや胸の感触は、女の子らしく柔らかいが、しかし、姉さんとも違う。
・・・見ためよりも、ずっと大きいんだな。
どうやら、着やせするタイプらしい。
「・・・ごめんね、迷惑だった?」
そんな先輩の問いに、否定の意味で首を振った。
「(ビクッ!)」
「んん〜〜〜!」
先輩に抱き締められた状態で、首を振った物だから、先輩の胸に顔を擦り付ける形になった。
そうすると、先輩が体を振るわせると同時に、僕の頭を抱く力を強めた。
となると、自然に僕は、先輩の胸で軽く窒息した。
「わかっ、分かったから、くすぐったいから大人しくして・・・」
先輩が、少し息を弾ませながら、そう言った。
「もし、迷惑で無かったら、ギュッてして」
先輩がそう言ったので、僕は、先輩の背中に腕を廻し、先輩に抱き付いたのだ。
そうすると、先輩が僕の背中を優しく撫で始め出した。
先輩の、柔らかくて小さな手が僕の背中を滑る。
その優しい感触に満足した僕は、先輩に更に抱き付くと、顔を先輩の胸に埋めた。
「うふふっ」
そんな僕の様子を見て先輩が、嬉しそうに軽く笑うと、頬を僕の頭に乗せた。
そうして僕は、しばらくの間、先輩の柔らかさを感じながら、先輩に抱き締められていたのであった。




