第75話 少しだけ変わった昼食
姉さん達と学校に着くと、廊下で別れ、教室に入った。
いつもの様に自分の席に座ると、すぐ脇から、
「おい! 優、今日一緒に来ていた娘は誰だよ!
始めてみる顔だぞ、転校生なのか?」
透也が血相を変えて、僕に尋ねてきた。
二学期が始まって、数日が経って、やっと気付いたのか?
「今頃気付いたの? あれは、由衣先輩だよ」
「はあっ!」
「ナンパしようとしても、先輩の性格は、透也が良く知っているだろ」
「・・・」
僕の言葉を聞いて、透也は、しばらく唖然としながら固まっていた。
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昼休みになり、いつも通りに屋上に行った。
しかし、今日は、大所帯であった。
「今日は、何で、透也がいるの?」
「いいだろ、今日ぐらい」
「由衣先輩目当てか・・・」
「どうかなあ♪」
トボケる辺り、図星らしい。
「ああ、今日は、薬院君も一緒なのか」
そして、なぜか蓮先輩も一緒に居たのである。
「すンません井尻先輩、お邪魔してます」
流石に、透也も蓮先輩には、態度を変えるな。
「いいよ、蓮で、薬院君」
「じゃあ、蓮先輩、自分も透也で良いスから」
「そう、じゃあ、分かったよ」
蓮先輩と透也が、二人でそんな会話をしていた。
・・・
「その髪型、似合ってますねえ、由衣先輩」
「ふふふっ、褒めても、何も出ないよ」
透也が、お世辞を言うけど、由衣先輩は、微笑みながらそれを躱した
先ほどから、透也のお世辞をスルリを躱す、先輩。
その姿は、以前の先輩からはとても、想像できない。
変わった、由衣先輩の姿をしばらく見た後、姉さんの方を見ていると、
「う〜ん、下手にガチガチに回答を考えると、予想外の質問が出た時に、パニクるかもしれないねぇ」
「そうだよ華穂さん、だから、ある程度、要点だけ考えて置いて、後は流れでアドリブで行った方が、融通が利くからね」
どうやら蓮先輩と、面接の事に付いて話し込んでいる様だ。
それは姉さんが、男性恐怖症気味のを知っている僕が見ても、意外な光景である。
僕以外の男と、親しそうに話している。
それを見ていると、理由も無く、何だかイライラしてきた。
「じゃあ華穂さん、これからも、僕も昼休みはここに来る事にするね」
「えっ!」
「色々と、面接や受験に関する事とか、やはり、同じ所を目指している人間と、話し合った方が良いから」
「・・・うん、そうだよね」
どうやら、これからも蓮先輩は、昼食は一緒になるつもりらしい。
それを聞いて、僕の心は穏やかでいられない。
そんな二人を見て、瑞希先輩が妙にニヤニヤしている。
「(ひょっとして、この人の差し金か?)」
その表情から、何となく意図を悟った、僕は。
瑞希先輩の意味ありげな笑顔を、苦々しい思いで見ていたのであった。




