第74話 裏で動く親友
今回は、瑞希視点の話です。
ある日の朝。
「あ、来た来た、お〜い、れ〜ん!」
私は、家の前で蓮を待っていた。
蓮が、玄関を出てきた所で、大声で蓮を呼んだ。
それを聞いた蓮が、私を見て苦笑する。
・・・
由衣が、夏休みの後に急に綺麗になった事で、あの姉弟の様子が今まで以上に、おかしくなっている。
これは、更に踏み込んでいくチャンスである。
それに気付くと、蓮に、朝は別々であった登校時間を、一緒にするように言ったのだ。
「昨日も言った様に、華穂と出来るだけ一緒にいて、意識を蓮の方に向ける様にしなさい」
「・・・分かったよ」
「蓮の方から、話しかけてみて。
話題は、二人の共通の事、今なら、試験の事とかでも良いから。
とにかく、蓮の方から、華穂の目を自分に向かうように誘導しないとね。
その辺は、アンタが私よりも頭が良いから、完全に任せるけど」
私がそう言うと、蓮が無言で頷いた。
そんな事をアドバイスしながら、私は、蓮と供に学校へと向かった。
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駅から降り、二人で通学路を歩いていると、遠くに華穂達の姿が見えた。
私達は、手を振りながら、華穂達に向かっていく。
「華穂、優くん、おはよー!」
「やあ、おはよ!」
私と蓮が挨拶すると、意外な組み合わせに驚いた様だが、それでも二人は、挨拶を返した。
私と蓮が、家が隣同士である事を、優くんに説明していると、イキナリ近くから、声が聞こえた。
「みんな、おはよ〜!」
いつも間にか、由衣が近くに来ていたのである。
夏休みが明けて、知らない間に綺麗になっていた、由衣。
優くんとの間で何があったのかは分からないが、しかし、由衣が彼を本気で思っている事だけは、良く分かる。
「それじゃあ、行きましょうか」
由衣が合流したのを確認すると、私は、みんなに出発の言葉を言った。
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いつもの様に、あの二人が手を繋いで歩いていると、私は蓮の背中を肘でつついて、行くように合図を出した。
それを受けて、蓮が、華穂の方に歩み寄った。
「ねえ、華穂さん、試験の事で話があるんだけど、良い?」
「ん? いいよ」
そして、そう言って、話題を華穂に振った。
流石に、頭が良い蓮らしく、上手く、華穂と話し込んでいる様だ。
・・・
しばらく、その様子を見ていると、列が横に伸びて、通行の邪魔になったのを見て取ったのだろう。
優くんが、手を離して、華穂の後ろに移動した。
それを見た私は、隣の由衣に、
「ほら、由衣、チャンスよ」
「えっ!」
「フリーになった、優くんの手を握りなさい」
耳打ちをすると、背中をトンと押した。
由衣は、素早く優くんの所に行くなり、優くんの手を握った。
最初は、ビックリしたみたいだった優くんだが、戸惑いながらも、由衣と手を繋ぐのを了承する。
うん、こちらの方も、上手く行っている様である。
まだ、優くんの方は、華穂を意識しているみたいだが。
こちらは、学年が違うから、頻繁に会えないので、インパクト勝負で行ったら良いだろう。
そんな事を考えながら、目の前の二組を見ながら、歩いていたのであった。




