第73話 動き出す周囲
朝、いつもの様に登校している。
学校前の駅で降り、そこから学校までの通学路を、二人で手を繋いで歩いていると。
「華穂、優くん、おはよー!」
「やあ、おはよ!」
向こうから、瑞希先輩と蓮先輩が、手を振りながら来るのが見えた。
「二人とも、おはよ!」
「どうも、おはようございます」
それに対し、姉さんと僕は、挨拶を返した。
「あれ? 今日は一緒なんですか?」
「うん、実は瑞希とは、家が隣同士なんだよ」
「でも、蓮と一緒に登校するのは、久しぶりなんだけどねぇ〜」
珍しい組み合わせに、僕が尋ねてみると、蓮先輩と瑞希先輩がそう答えた。
「みんな、おはよ〜!」
僕等がそんな事を話していると、僕のすぐ近くで声が聞こえた。
見ると、由衣先輩がいつの間にか居たのである。
全員で挨拶を返すと、由衣先輩も僕らに合流する。
「それじゃあ、行きましょうか」
それを見た、瑞希先輩の言葉で、全員、学校に向けて出発した。
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そうやって、みんな、登校路を歩いていると、
「ねえ、華穂さん、試験の事で話があるんだけど、良い?」
「ん? いいよ」
突然、蓮先輩が姉さんと話を始めた。
・・・
二人がカナリ話し込んでいる。
僕と姉さんが手を繋いで歩いている所に、姉さんの隣で蓮先輩が話をしている。
そうなれば、当然、横に列になるので、通行の邪魔になる。
そう思い、一旦、姉さんの手を離して、姉さんの後ろに移動した。
すると、
「(えっ!)」
フリーになった、僕の左手を誰かが握ってきた。
見れば、由衣先輩が握って来たのだ。
「ニッコリ」
由衣先輩は、僕の手を握りながら、笑っている。
「ど、どうしたんですか?」
イキナリの行動に、僕が由衣先輩に聞いてみるが。
「ダメ・・・?」
一転して、先輩が悲しそうな顔になった。
その表情に、罪悪感を感じた僕は、思わず。
「べ、別に、ダメじゃないですよ」
「そう、良かった・・・」
そう言った僕の言葉に、安堵の表情を見せる先輩。
仕方ないので、先輩と手を繋いだ状態で歩いていた。
・・・
前を見ると、姉さんが蓮先輩とカナリ、話し込んでる。
後ろの、僕の状況が分からない程に。
そして、僕は、姉さんと違う女の子の手を握っている。
女の子らしく、小さく柔らかだけど、しかし、姉さんよりもヒンヤリとしている手を握っている。
そうやって僕は、話し込んでいる姉さんを見ながら、違う女の子と手を繋ぎながら、歩いていたのであった。




