第71話 幼い頃の夢
その夜。
日付も変わって、カナリ経った頃。
僕は、ベッドで、深い眠りに着いていると。
・・・
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それは、僕が幼い頃の、ある日の事であった。
「ぐっすん、ぐっすん・・・」
僕は泣いていた。
その日は、お姉ちゃんと一緒に、少し遠くの町の公園に遊びにいった時の事である。
遊んでいる内に、いつの間にか、はぐれていたしまったのだ。
「おねえちゃん〜」
僕は、はぐれた、お姉ちゃんを探して、歩き廻っていた。
・・・
「おねえちゃん・・・、どこにいるの・・・」
しばらく、歩き廻った僕は、お姉ちゃんを見つける事が出来ず、しかも、歩き疲れてしまった。
疲れながらも、とぼとぼと歩いていたが、次第に、その足が重くなり、そして、止まったのである。
「ひくっ・・、うっ・・・、おねえちゃん〜!」
そして、とうとう僕は、路地の真ん中で泣き出した。
「ゆう〜く〜ん!」
その声が聞こえたのか、路地の向こうに、お姉ちゃんの姿が見えた。
お姉ちゃんの姿が見えるのと同時に、勢い良く、僕の方に駆け出してきたのである。
「(ダダダダダダーーー!)」
「ゆうくん、ごめんねーーー!」
お姉ちゃんは、勢いそのままに、僕に抱き付いた。
「おねえちゃん! おねえちゃん!」
そんな、お姉ちゃんに僕は、抱き付きながら泣いている。
お姉ちゃんも、僕を抱き締めたまま、一緒に泣いていた。
こうして、僕達、二人は、一緒になって泣いていたのであった。
・・・
しばらくの間、一緒に泣いた後、家に向かって帰り始める。
お姉ちゃんが、僕の左手を右手で繋ぎながら。
「ゆうくん、ごめんね、一人きりにさせてしまって」
そう言って、お姉ちゃんは謝った。
「・・・おねえちゃん、離れないでね」
僕は、お姉ちゃんの方を、おずおずと見ながらそう言うと。
「うん、ゆうくん、いつまでも一緒だよ」
お姉ちゃんが、ニッコリと微笑みながら、そう言った。
僕は、お姉ちゃんの言葉を聞くと、お姉ちゃんの顔を見詰めつつ。
「おねえちゃん、ずっと一緒だよ・・・」
そう言って、僕は、お姉ちゃんの手をギュッと握った。
帰りの道は、既に夕方のオレンジ色に包まれていて。
二人の背後には、長く伸びた影が見える。
そんな、帰り道を二人並んで、帰って行った。
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・・・
「ん?」
胸に、何かが乗っかっている感触がして。
眠りの海から、次第に、意識が浮上してきていた。
眠い目を薄っすら開くと、姉さんの頭が見える。
どうやら、今日は、僕のベッドに侵入してきた様だ。
最近、試験勉強を本格的に開始してからは、自分の部屋で寝る事が多いので、久しぶりだ、
姉さんは、僕の胸板に頭を乗せている。
「(ギュッ)」
そして、それと同時に寝ながら、右手で僕の左手を握っていたのである。
ふと、さっき見ていた夢の事を思い出した。
あれは、小さい時に、実際にあった事だ。
姉さんが手を握っていたから、見たのだろうか?
いや、それだけでない。
僕達、二人が今までの様な関係で居られるか、分からないからだろう。
「(ギュッ)」
そんな風に考えると、僕は自然に姉さんの手を握り返していた。
姉さんの手を握ると、右手で姉さんの頭を撫で出す。
滑らかな、姉さんの髪の感触が心地良い。
そうやって姉さんの感触を感じながら、しばらく微睡んでいたのであった。




