第66話 夏休みデビュー
朝食を済ませると、制服に着替え、家を出た。
「はあ〜、まだ日差しが痛いねえ、ゆうくん」
「うん、夜は、流石に涼しいなったけどね」
そんな事を話してながら駅へ向かっていると、いつもの様に、姉さんから手を繋いできた。
小さくて、柔らかで、ヒンヤリした姉さんの手が、僕の手を握っている。
そんな姉さんの手を、僕は握り返した。
こうして、学校に向かう時の、いつもの習慣を復活させると、僕達は、駅へと向かった。
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電車から降り、駅を出ると、学校へと向かっていた。
そうして通学路を歩いていると。
「お〜い、華穂〜!」
瑞希先輩の声が聞こえた。
「おはよ、瑞希」
「瑞希先輩、おはようございます」
「うん、おはよ、華穂、優くん」
お互いに、挨拶をすると、僕等のすぐ側で、
「おはよ、瑞希、華穂、優くん」
挨拶する声が聞こえた。
振り返ると、ドコかで見たことがある女の子がいた。
あれ、誰だったかな?
「えっと・・・、誰だったっけ?」
思わず、瑞希先輩もコメカミに、指を当てながらつぶやいた。
その女の子は、前髪を切り揃えた、肩までの長さの髪で。
穏やかそうな垂れ目が、特徴的な顔の可愛い女の子だった。
その女の子は、一瞬、瞬きをした後、
「いやね、私よ、私、由衣よ」
と、笑いながら、そう言った。
「「「ええええ〜!」」」
3人が一斉に驚いた。
確かによく見ると、由衣先輩だ。
眼鏡を外しているので一瞬、誰か分からなかった。
眼鏡を外した顔を何度か見ていたのだけど、髪型が変わっているので本当に誰か分からない。
髪がただ三つ編みを解いただけでなく、以前は額が丸見えだったけど、今見る先輩は、切り揃えたパッツンパッツンの前髪で。
それに、眉毛を整えたりと、顔の方も明らかに手を加えている。
それから、なんだか雰囲気が変わっているのが、それに拍車をかけていた。
「ちょ、ちょっと、由衣、いつ髪型を変えたのよ」
「うん、昨日、ただ髪を解くだけじゃイマイチだから、美容院にも行ってきたの」
瑞希先輩が尋ねると、由衣先輩がそう答えた。
「でも、どうして、急に髪型をかえたの?」
姉さんが尋ねると、由衣先輩が僕の方を見ながら。
「海に行った時、優くんが私の事を可愛いって言ってくれたから・・・」(第60話参照)
僕に微笑みを向けながら、由衣先輩が答える。
「だから、二学期になったら、もっと可愛い姿を優くんに見せたかったのよ」
微笑んだまま、由衣先輩が続きを言った。
「へえ〜、そうなの・・・」
姉さんが、そう言って、ジト目で僕を見る。
「はははは・・・」
僕は、なぜか乾いた笑いが出てしまった。
・・・
それから、僕たちは、学校へと出発したが。
由衣先輩が僕の横で、ニコニコしながら、僕を見ていて。
姉さんが、ジト目で僕を見ながら、繋いだ手に力を込めていた。
お姉様、手が地味に痛いのですが・・・。
瑞希先輩は、上手く行った様な、やり過ぎた様な、何とも言えない複雑な表情をしていた。




