第57話 夏の夜のひととき
夜、食事が済むと、居間でリラックスをしていた。
僕は、ソファーに座り、テレビを見てる。
姉さんは、台所で洗い物をしている所である。
・・・
しばらくテレビを見ていると、洗い物を終えたらしい、姉さんがこちらにやって来た。
僕は、振り返ると、
「ありがとう、姉さん」
「いいよ、いいよ、ゆうくんが、家の事をしてくれているんだし」
「でも、それは姉さんが受験だから」
「それでも、私の事を考えてくれたからでしょ。
それが嬉しいから、たまには、私がしてあげたくなるの」
姉さんが、笑いながらそう言った。
そうして、姉さんが僕の背後に近づく。
それから、ソファー越しに、僕の首に抱き付いた。
姉さんは、僕の首に抱き付くと、頬を僕の頭に乗せてから、
「ねえ、ゆうくん、今度の予備校の休講の日にね。
瑞希たちと、海に行くんだけど、ゆうくんも一緒に行かない?」
そう言ってきた。
「え、そうなの?」
「うん、どう、行くの?」
う〜ん、この間、透也達と行ってきたばかりなんだけど。
でも、姉さんとは行くのは、久しぶりなんだし、行くとしようかな。
「そうだね、姉さんと行くのは久しぶりだし、行くよ」
「そう、じゃあ、一緒に行こうね♪」
姉さんが、僕の頭に頬ずりをしながら、そう言った。
「それで、姉さん、他に誰が一緒に行くの?」
僕は姉さんに、一緒に行くメンバーについて、聞いてみた。
「そうだね、瑞希に、由衣に、それと蓮くんも行くよ」
「え、蓮先輩も?」
「うん、そうだよ」
う〜ん、あの先輩かあ。
苦手じゃないが、何というか、あの先輩と姉さんが、一緒にいると何だか不安になるんだよな。
「ゆうくん、ゆうくん、どうしたの?」
「あ、うん」
いつの間にか、考え事をしていた様だ。
姉さんが、腕を僕の首に巻いたまま、僕の頭を撫でている。
「それと、由衣が楽しみにしていたよ・・・」
姉さんが、言いよどんだ。
由衣先輩が、どうしたんだろうか?
最近、姉さんが、由衣先輩の事を話す時、妙な雰囲気になる事がある。
「どうしたの、姉さん?」
「あ、ううん、何でもないよ」
「?」
僕が、怪訝な雰囲気になっていると、
「そうそう、新しい水着をすでに買ってあるから、楽しみにしてなさ〜い」
まるで、そんな空気を誤魔化すように、そんな事を言ってきた。
それと同時に、僕の首を抱いたまま、体を左右に揺っている。
「ん、新しい水着って何?」
「ダメダメ、行ってからのお楽しみだよ♡」
姉さんが、そう言って、勿体ぶる。
それから、しばらくの間、昔、泳いだ時や、夏の家族旅行の時の思い出なんかを、姉さんと話していたのだった。




