第55話 悪友と海水浴へ
「ワァオ〜、海だあ!」
透也が海を(正確には、水着の女の子を)見て、みっともない声を上げた。
今日は、透也の発案で、海水浴にやって来た。
昨日の夜に、透也から電話があって。
・・・
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部屋でユックリとしていたら。
「”チャ〜ン♪ チャラララ〜ン♪ チャラララ〜ン♪”」
あれ、携帯の着信が鳴っている?
「もしもし」
「”おう、優かあ”」
あれ、透也からだ、何かな。
「あれ、どうしたの?」
「”優、明日、海水浴に行かないか?”」
「ん、どうして?」
「”いや、ナンパしようと思うんだが、行くメンバーに、色んなタイプを揃えたくてな。
例えば、お前みたいな、大人しそうな娘に受けそうなの、入れたいんだよ”」
「え、ええ〜っ、ダメだよ〜」
「”いや、そこを何とかー! 頼むー!”」
何かと思えば、ナンパなのか?
はあ、透也らしいと言えば、透也らしいなあ。
余り、気が進まないが、透也の顔を立ててやるか。
「はあ〜、分かったよ、行ってやっても良いよ」
「”悪りい、恩に着るよ”」
「で、明日、何時なの?」
「”明日、10時に学校前の駅で集合だ”」
「じゃあ、明日10時だね」
「”それじゃあ、頼んだぜ”」
そう言って、透也が電話を切った。
はあ、取りあえず海水浴に行くとだけ、姉さんには言っておくか。
ナンパだなんて、知ったら、姉さん反対するだろうし。
それから僕は、姉さんの部屋へと向かった。
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・・・
そんな訳で、今日は僕も含めて、男4人で来ている。
透也以外の残りの二人は、何と言うか、透也の同類である。
確かに、これでは、女の子は警戒するだろう。
と言うか、色んなタイプが、いないんじゃないか?
そう思っていると、3人がそれぞれ勝手に、ナンパを始めた。
あ、透也が、派手な水着を来た、女の子2人組にアタックした。
「グワッシャ!」
そう思った途端、透也が女の子から、パンチを貰い、吹っ飛ばされた。
倒れた透也が、倒れながら痙攣している。
他の2人を見ても、やはり同様の状況である。
関心が無い僕は、遠くで、そんな3人の屍を眺めていた。
・・・
そんな、透也達3人の、無駄な努力を見ていたら。
「ねえ、君、どうしたの」
振り返ると、20代前半くらいで2人組の、いかにもOL風のお姉様方がいた。
「あ、いえ、連れがナンパを失敗して、醜態を晒しているのを、見ていたんですよ」
僕が、呆れた風に言うと。
「君はどうなの?」
「そう、何でこんな所にいるの?」
そんな事を、聞いてきたから。
「いえ、あんなみっともない事なんか出来ないから。
ここで、見物しているんですよ」
最初から興味が無い僕が、呆れながら、そう答えると。
「ねえ、君、可愛いから、お姉さん達と遊ばない?」
そう、ウェーブが懸かった長い髪に、面積の狭い、黒いビキニのお姉さんが、言ってきた。
「うん、君なら、下心が無さそうだし、安心できるから」
今度は、背中と胸元が大きく開いた、白いワンピースを着た、セミロングのお姉さんが、僕にくっ付きながら、そう言った。
「え、えええ〜!」
大人の女性らしく、メリハリの効いた体が、僕に密着すると、その豊かな胸が僕の体で押しつぶされる。
その柔らかな感触に、僕の頬が熱くなった。
「あれ〜、赤くなってる〜、可愛い〜♪」
そう言いながら、黒ビキニのお姉さんが、細くてしなやかな指で、僕の頬を撫でる。
「ねえねえ、喉が乾いたから、あそこに行こう」
ワンピースのお姉さんが、僕の左腕に腕を絡めながら、近くの海の家を指差した。
「そうそう、あそこで、お姉さん達と話をしましょ♪」
今度は、黒ビキニのお姉さんが、僕の右腕に腕を絡めてきた。
「ええっ、ちょっ、ちょっとぉ〜」
こうして僕は、お姉さん方に、両サイドから腕を掴まれた状態で、引きずられる様に、海の家へと向かったのである。
後には、轟沈した、透也達の屍を残したままで・・・。




