第54話 湯上がりのハプニング再び
夏のある夜。
夕食を終えた僕達は、居間でノンビリしていた。
姉さんは、食後すぐに勉強を始めると効率が悪いので、胃袋が落ち着くまで、食休憩を取っていた。
・・・
しかし、今日も暑かったなあ。
冷房の効いた室内にいる分には良いが、一旦、外に出ると目が眩むほど暑い。
そうなると、汗が滝の如く流れ出す。
しかし、出ない訳にもいかない。
食材の買出しを、しなければならないからである。
”本日の気温は、35度を越え、36度に達しました”
テレビで、ニュース番組を見ていたら、天気予報の所で、そんなアナウンスが聞こえてきた。
”明日も、今日同様の気温が予想されます”
聞くだけで、ウンザリするようなアナウンスが続いた。
「姉さん、大丈夫だった?」
「うん、行きは良かったけど、帰りはキツいねぇ〜」
心配になった僕は、姉さんに尋ねてみたら、やはり、キツそうな答えが帰ってきた。
「終業式の時に、倒れたんだし、気を付けてね」
「も〜、気を付けるから大丈夫よ」
つい最近、終業式の時に倒れた(第48話)ので、心配した僕は、そう姉さんに注意した。
・・・
そろそろ、勉強を開始しようとして、姉さんが立ち上がり、部屋に移動しようとしたので。
「姉さん、お風呂を沸かそうと思うけど、いつ入るの?」
「ん〜、2時間位は勉強しようと思うので、ゆうくん、先に入って良いよ」
風呂の準備をする事を、姉さんに言うと、そんな言葉が返った。
「じゃあ、沸かしたら、すぐにでも入るかあ。
今日も、汗をかいて、肌がベトベトしてるし」
僕は、そんな独り言を言うと、風呂を沸かす為に、風呂場へと向かった。
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「は〜、良い湯だったなあ」
風呂を沸かした後、すぐに風呂に入った。
ゆっくりと湯に浸かった後、スッキリして上がった。
「あれ、下着を忘れたかな?」
着替えを着ようとして、替えの下着が無いのに気付いた。
「う〜ん、しょうがないか」
とりあえず、部屋に着替えを取りに向かおうと、腰にバスタオルを巻く。
余り、姉さんの前で、そんな事をしたくないが。
他の姉妹がいる人間の話では、下着姿でウロウロするとか言う、話を良く聞く。
しかし、姉さんは、お淑やかで、恥ずかしがり屋なので、余程の事が無い限り、そう言う事はしない。
以前あった事(第11話)は、例外中の例外である。
そう言う姉さんなので、僕もできる限り、そう言う格好はしない様にしている。
これが、気さくでブロークンな感じの人なら別であるが。
でも、姉さんは、こんな格好を見たら、赤面して俯いてしまうだろう。
姉さんと鉢合わせしないよう、急いで部屋に行った方がいいだろう。
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風呂場のドアを開き、急いで部屋へ向かおうとしていた所で。
「え、ゆうくん・・・」
・・・姉さんと、鉢合わせしてしまった。
「姉さん、ど、どうして?」
「うん、喉が乾いたから、台所に行ってたの・・・」
案の定、姉さんは、顔を赤くさせて、俯いていた。
「じゃ、じゃあ、急ぐね・・・」
姉さんが、そそくさと、その場を立ち去ろうとした時。
余りにも、急いでいた為、足がもつれて、転びそうになった。
「危ない!」
とっさに、僕は腕を伸ばし、姉さんを自分の方に引っ張った。
そうすると、自然に、姉さんが僕の胸に飛び込んだ。
そんな姉さんを、僕はシッカリと受け止める。
「姉さん、大丈夫?」
しかし、姉さんは、僕に抱き付いたまま、動かない。
しばらく、そのままでいたが、その内。
「(すり、すり、すり)」
イキナリ、頬ずりをし始めた・・・。
そんな姉さんに、僕も呆然としていた。
・・・
しばらく、頬ずりをしていた姉さんが、何かに気付いたかの様に、頬ずりを止め、恐る恐る、顔をあげた。
姉さんの顔は、今にも火が出るかの様に真っ赤である。
「ゆ、ゆ、ゆうくん、ご、ご、ごめんなさいーーー!」
姉さんは、そう叫ぶと、脱兎の如く、階段を駆け上がった。
「・・・」
僕は、そんな姉さんの一連の行動に、唖然としていた。




