第52話 暗躍(あんやく)する親友
今回は、瑞希視点の話です。
「・・・て、そう言う事なんだけど」
「え、そうだったの」
華穂が蓮と、楽しく、おしゃべりをしている。
ナカナカ良い感じだ。
このまま、二人がくっ付けばとも考える。
蓮は小さい頃から知っている、まあ、俗に言う、幼なじみって奴だけどね。
同じクラスになるのは、何年ぶりだろうか。
久しぶりに、ずっと同じクラスにいると、蓮が、よく華穂の方を見ている事に気付いた。
「(は、は〜ん、なるほど♪)」
試しに、蓮にカマを掛けてみたら、アッサリ白状した。
やはり、睨んだ通り、蓮は華穂に気があるようだ。
それで、蓮に、色々とアドバイスする事にした。
・・・
それに、華穂を弟以外の男に目を向けさせる良い機会だ。
あの娘のブラコンぶりは、ホントに異常である。
このまま行くと、本当に一線を越えてしまうかもしれない。
かと言って、相手が誰でも良いって言う訳にはいかない。
特に、以前、あの娘に言い寄って来た、ロクでもないヤツらは論外だ。
乱暴に扱われるか、浮気をされて悲しませるかどちらにしろ、不幸にしかならないのが、目に見えてしまう。
それに比べたら、蓮だったら、小さい頃から知っているが、そんな事をするような奴じゃない。
それに、私は昔からの付き合いで何も感じないが、周りが言うには、蓮は成績優秀な上、イケメンだとか。
どうやら他のクラスでも、フアンがいるみたいだ。
私たちが幼なじみなのを、羨ましむ声があるが、しかし、昔から知っているから、別に何とも思わない。
そんな事を思いながら、二人を眺めていた。
****************
しばらくの間、二人を眺めた後、私の左隣で、我関せず黙々と自習をしてる、由衣を見た。
「(この娘も、やっと季節外れの春が来たのかな)」
由衣も、本当は華穂と同じくらい可愛いのに、内気で、引っ込み思案な所為か、目立たなく、野暮ったい格好をしている。
なので、本当の由衣を男どもは知らないのだ。
その為、華穂に言い寄る男どもから、無視されたり、中には、明らさまな侮蔑の視線を送る奴さえいた。
当然、そんな失礼な奴には、私流の教育的指導を施したが(笑)。
そんな目に合っている、由衣を見ていて、見る目の無い男ばかりだと嘆いていた。
・・・
そんな中、始めて優くんと会った。
「えっと、高宮先輩ですよね、そう言えば、会うのは初めてですよね」
私は、電話なんかで話をした事があるが、会うの始めてである。
何回か話をしているので、どう言う子かと言うのは何となく分かっていたけど。
流石に、地味だけど姉弟だけあって、華穂似の可愛い子である。
でも、私は年下は趣味では無いから、それ以上の感情は湧いて来ない。
だけど、とても良い子である事には間違いない。
「平尾先輩ですね、よろしくお願いします」
由衣は相変わらず、私の後ろの方で、半分隠れる様に俯いていたのだけど。
彼は、そんな由衣に、優しく、語りかけるように自己紹介した。
「(へえ〜)」
由衣に、語りかけている彼を見て、私は感心する。
それから、優くんは、由衣に会うごとに、根気強く語りかけ続けた。
それと共に、由衣の表情から緊張が消え、笑顔が表れるようになって行く。
なる程、さすが華穂の弟だけあって、あの連中とは全く違うなと思った。
・・・
優くんとあってから、しばらくすると、由衣の様子が変わった。
帰りに優くんと一緒に帰るときに、彼の事をジッと見詰めたり。
時折、彼の事を話す時の由衣の様子が、夢見る様にしていたり、あるいは、とても嬉しそうにしていたり。
明らかに、恋している乙女と言った感じである。
このまま、こちらもくっ付けば良いと思った。
やっと、由衣も自分の事を受け入れてくれる、男の子が出来たことだし。
それに、優くんも華穂に負けず劣らずのシスコンである。
彼の方も、このままではイケない。
この危ない姉弟を更生させなければならない。
両方とも、このままいけば、親友二人がハッピーになり、危ない姉弟も更生させられる。
それに、蓮の奴も幸せになる事だし。
そうなれば、全て上手く行く。
「(ふうっ)」
私は、両サイドを見て、心の中で溜め息を付いた。
このまま両方とも、上手く行くように立ち回ろうと、両サイドを見ながら私は思っていた。




