第51話 気になるあの娘
今回は、蓮視点の話です。
いつもの倍の長さですが、話の流れ上、分割する事が出来ないので。
今回は、そのままで、上げました。
予備校の講義が始まる前に、大橋さんと話をしている。
「へえ、そうなんだ〜」
笑顔で、大橋さんが、僕の話を聞いている
彼女と、こんなに話をするになるとは、考えられなかった。
彼女の事は、一年の頃から知っているが。
その頃は、可愛いなあとは思っていたが、接点も無い事もあり、成績の事以外は、特に気にはして無かった。
しかし、2年生の三学期のある日。
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「はあ〜、無いなあ」
あれ、ドコに行ったのかな?
家の鍵が無い。
どうやら、この廊下付近で落としたみたいだ。
と言うか、それしか考えられない。
この廊下で、小銭入れを取り出す際に、一緒に出て来て、落としたとしか考えられない。
そう思い、下を向きながらウロウロしていた。
「あの・・・、どうしたんですか?」
僕の後ろから、女の子の声が聞こえた。
振り向くと、顔と名前は知っているが、ほとんと接触が無い娘が立っていた。
「えっと、大橋さんだよね」
「・・・はい、どうしたんですか?」
「うん、家の鍵をここで、落としたみたいなんだ」
僕は、その女の子に、そう説明すると、
「じゃあ、私も手伝うね・・・」
「えっ!」
「二人で探したら、早いよ・・・」
そう言って、彼女も一緒に探し出した。
そうして、しばらく該当する廊下付近を探していたら。
「あっ、これかな?」
彼女が、何かを見つけた様だ。
「ねえ、これじゃないかな?」
「あ、これだよ、これ。
見つけてくれてありがとう」
大橋さんが、特徴的なキーホルダーが付いた鍵を、僕に見せた。
そして、その鍵を僕に渡すと、
「よかったね」
優しげな笑顔を浮かべてくれた。
その笑顔を見て、僕は心臓を鷲掴みにされてしまった。
つまりは、一目惚れをしてしまった訳だ。
僕の前で、笑顔を浮かべていた彼女を、しばらくの間、僕は、見惚れていたのである。
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それから、僕は何とかして、大橋さんと近づきたいと思う様になっていた。
特に、3年になって、同じクラスになった時は、踊り出さんばかりに喜んだ。
しかし、彼女には問題があり。
それは、彼女が、男が苦手である事と、極端なブラコンである事だ。
前者の場合、元々、そう言う所があるのに加え、1、2年の時に、シツコク言い寄る連中に、懲りた様である。
余りにもシツコイ為、幼なじみの瑞希が、強硬な手段を使って追い払った位だ。
後者の場合は、余りのブラコンぶりに、瑞希が一線を越えないか、心配しているみたいである。
そう言う事なので、まずは、何とか近づいて話をするキッカケを掴もうかと、考えていた。
・・・
そうして、悶々としていた時。
席に座って、大橋さんの方を見ていたら。
「何、華穂の方を見ているのよ♪」
「べ、別に、そうじゃないって」
横から、瑞希の声が聞こえた。
「じゃあ、華穂の事を教えなくて良いのかな〜」
「教えてください」
僕は、アッサリ陥落した。
「今が、あの娘に近づくチャンスよ。
今、、由衣が、あの娘の弟に惚れているのに気付いて、動揺している状態なの。
つまり、今まで通りの関係で、居られるか分からない事に、ショックを受けているから」
「でも、良いのかい?
今まで、男たちを追い払っていたのに?」
「今まで、あの娘に近づくのは、乱暴そうなヤンキーとか、軽薄そうなチャラ男とかばかりだから。
そんなのと、あの娘がくっ付いたら、不幸になるのは目に見えてるよ」
そう言うと、瑞希は頭を横に振った。
「でも、何で、僕なら良いのさ?」
「アンタは、私が、小さい頃から知っているけど。
そんな、あの娘を不幸にするようなヤツじゃないからよ」
「随分と高く買ってくれてるなあ、だけど、彼女は、弟以外の男が苦手だろ?」
「大丈夫、今まで、あの娘に近づくのは、柄が悪かったり、軽薄そうなのばかりだったし。
そう言うのは、最近、全く近づかないから、前ほどでも無いよ。」
そうなのか? 僕は頭を傾けた。
「それに、アンタは、あの娘の弟と似たタイプの人間だから、殆ど警戒されないと思うよ」
そう言いながら、瑞希は、顔をズイと近づけた。
”それは、何か嫌だなあ〜”と、思わず、心の中でそうつぶやいた。
「とにかく、今がチャンスだから、近づきなさいな」
「(バシン!)」
そう言って、僕の背中を思いっきり引っ叩いた。
瑞希流の気合の入れ方だろうけど、痛いんだよ!
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それから、瑞希の忠告通りに、大橋さんに近づくと、心配が嘘のように、気軽に話す事が出来た。
そして、瑞希の情報から、この予備校を受講する事が分かると。
迷わず、一緒の予備校を受講する事に決める。
偶然にも、志望する大学が同じ所で、しかも、同じく推薦を狙っているのが分かり、俄然、今まで以上のやる気が出た。
そして、前もって、教えられた時間に行くと、隣に座るように瑞希がお膳立てしてくれた。
瑞希の世話焼きには、辟易することあるが、今度ばかりは感謝してもし尽せない。
そう思いながら、時々、瑞希が茶々を入れる中、大橋さんと、講義が開始するまで、楽しく会話したのであった。




