第5話 教室にて2
今回は、華穂視点の話です。
一方、華穂の方は。
「もお、アンタは少しは自重しなさいよ」
「はあ〜い」
「はあ、この娘は・・・」
階段を登りながら、瑞希がいつもの様に、私の側でクドクドと説教している。
そして、それを私が、適当に聞き流しているのも、いつもの事。
「ねえ、ちゃんと聞いているの!」
「早く行かないと、遅れるよ」
「って、チョット待ちなさい!」
瑞希の説教に飽きた私は、突然、瑞希を置いて階段を駆け足で登る。
そして、急な行動に瑞希が一瞬、面食らうが、すぐさま私の後を追いかけた。
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教室に着き、席に座ると、隣に瑞希も座った。
私と瑞希の席は隣同士である。
二人が席に座って、上がった息を落ち着かせていると、後ろの席から声がした。
「ねえ、二人とも、どうしてそんなに急いでたの?」
振り返ると、そこには、一人の女の子が座っていた。
その娘は、三つ編み二つのお下げ髪で。
顔を見ると、眼鏡を掛けていて、その奥には垂れた目が見える。
この娘の名前は、平尾 由衣、私と瑞希の親友でもある。
人見知り気味で、引っ込み思案だけど、とても優しい娘だ。
「ひょっとして、優くんの事でかな?」
「そうなんだよ、また、この娘は、朝からイチャ付いていたから、チョット注意したんだよ」
「別にイチャついてなんかないよ〜」
由衣がそう言うと、瑞希がそれに答えたが、私がそれについて反論した。
「でも、華穂の気持ちも少しは分かるなあ。
だって、優くんって、女の子にとって、理想の弟なんだもの」
「そうなの? 由衣」
「だって大きいけど、優しくて、素直で、可愛くて、思わずモフモフしたくなる位だけど、いざと言う時には頼りになるんだもん」
「ふ〜ん〜」
「できたら、私も欲しい位だよ、それも彼・・・」
「由衣、あんた・・・、ふ〜ん〜♪」
瑞希と由衣が二人で、話をしていると、何やら由衣が聞き捨てならない事を言いかけたと思ったら、顔を赤くして俯いてしまった。
それを聞いた瑞希が、意味有りげな笑みを浮かべている。
しかし、その言葉を聞いて、私は思わず”ムッ”とした。
そうなのだ、ゆうくんは意外とモテるのだ。
外見が地味だから、余り派手な娘には見向きをされないが、よく見ると可愛いし、優しくて、物腰が柔らかいので、大人しめの娘には人気があるのだ。
例えば、由衣みたいな娘に。
そんな娘は、積極的なアクションを起こさないから分かり辛いけど。
たまに、物陰から、熱い視線を感じる事がある。
でも、入学してから、そんなに経たないのにね・・・。
「そうだ、いっその事、由衣、優くんとくっ付いちゃいな」
「え、瑞希、そんな・・・」
「ダメよ! ゆうくんは私の物よ」
「だー! だからアンタは、早く弟離れしなさいって言うの」
私達は、ゆうくんの事で騒ぎ出した。
周囲は、一瞬、こちらを向くが、”ああ、いつもの事か”言った風で、また視線を元に戻した。
それから私達は、ホームルームが始まるまで、ゆうくんの事で騒いでいた。