第43話 雨の日の昼食
昼食の時間になった。
いつもだと、屋上で済ませるのだが、今は梅雨時なので、屋上は使えない。
それで最近は、食堂で取っているのだ。
と、言う訳で、僕達は食堂へと、向かった。
・・・
「さっ、ここら辺でいいかな」
食堂の端の方に行くと、瑞希先輩がそう言うと、僕達は全員その場所に座った。
「あれ、今日はここで食うのか」
僕達が座っていると、向こうの方から、透也がやって来た。
「うん、雨が降っているからね」
それに対して、僕がそう答えた。
「あれ、透也君、今日は手作り弁当じゃないんだ」
「今日は、予定が無いんですよ」
パンを持っている透也を見て、瑞希先輩がそう言うと。
透也が、少しムッとした表情で、そう返した。
今の席の配置は、姉さん、僕が座っている対面に、瑞希先輩、由衣先輩が座って。
ちょうど僕の前に、由衣先輩が座る形になっている。
それを見た、パンを持った透也が、僕の隣に座った。
「それじゃ、早く食べましょうか」
瑞希先輩の言葉で、透也以外は弁当の箱、透也はパンの袋を開いた。
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弁当を開いて、食べていると。
「今日の、優くんの、お弁当美味しそうだね」
不意に、由衣先輩が、僕の弁当を見てそう言ってきた。
今日のお弁当には、僕のだけ、アスパラのベーコン巻が入っているのだ。
なぜなら、アスパラのベーコン巻は、僕の好物なのだが、姉さんはアスパラが苦手なのである。
それで、僕のにだけ、入っていた。
「由衣先輩は、アスパラは苦手ですか?」
「ううん、大丈夫だよ」
尋ねてみれば、由衣先輩は大丈夫そうだ。
それならば。
「由衣先輩、これ食べてみませんか?」
僕は、ベーコン巻を箸で摘んで、由衣先輩に突き出した。
「えええっ!」
由衣先輩がなぜか驚くが、それには構わずに、口元にベーコン巻を突き出した。
始め躊躇していた由衣先輩だったが、意を決した様に、ベーコン巻をパクついた。
「どうですか、美味しいでしょう」
由衣先輩が頬を赤くさせながら、頷いた。
「由衣先輩に、喜んでもらえて良かった」
僕はそう言いながら、弁当から、次のベーコン巻を摘むと、口に放り込んだ。
それを見ていた、瑞希先輩と透也は目を剥いて驚き。
由衣先輩は、赤い顔を更に赤くさせると、箸を持ったまま俯いてしまった。
「どうしたの、みんな?」
そんな周囲の状況を見た僕が、みんなにそう言った。
隣にいる姉さんも、僕同様、そんな3人を、不思議そうな顔をして見ている。
周囲の、何とも言えない状況に困惑しながらも、僕は、黙々と箸を進めていたのであった。




