第40話 幼い頃の様に
放課後になり、階段の所で姉さん達を待っていた。
今日は、姉さんの様子がおかしい。
昼休みの時なんかは、
・・・
昼食を食べていると。
「は〜っ」
弁当を食べながら、溜め息を付いていた。
「姉さん、どうしたの、溜め息なんかついて?」
と、僕が聞いてみた、すると姉さんが、
「ん、何でもないよ」
笑顔でそう答えた。
しかし、その笑顔は何となく、暗く見えた。
・・・
その後も姉さんは、力なく笑ったりするなど、明らかに元気が無いように見えた。
だけど、理由を聞いても、恐らく教えてはくれないんだろう。
ああ見えて、姉さんは、弱音を見せる事を嫌がるからだ。
僕が、そう思っていた所に、姉さんがやって来た。
「あっ、ゆうくん・・・」
「姉さん、行こうか」
いつもと違い、やはり反応が薄い。
だが、僕達は、そのまま出発した。
****************
玄関を出ると、校門を抜け、通学路を歩く。
朝と違い、姉さんは自分の傘を差して歩いている。
見ると、相変わらず、姉さんは元気無く、俯きながら歩いていた。
そうやって、歩いていると、目の前に児童公園が見える。
その公園を見て、僕はある事を思い出した。
「すいません、瑞希先輩〜」
それから、すぐに僕は、瑞希先輩に話し掛けた。
・・・
「どうしたの、ゆうくん?」
僕は、瑞希先輩達と別れて、姉さんを児童公園に連れて来た。
僕たちは今、公園の中にある、東屋にいる。
姉さんは東屋の長椅子に座り、傍らにはカバンと傘を置いており。
姉さんが座ったまま、僕がここに連れてきた理由を尋ねてきた。
「姉さん、今日、何があったか聞いても、教えてくれないだろうけど」
僕がそう言って、姉さんの隣に座った。
そして、姉さんの隣に座ると、僕は左手で、姉さんの右手を握った。
「小さい頃、僕が泣いていた時。
姉さんは、いつも僕の手を握りながら、慰めていたっけ」
姉さんの手を握ると、昔の話を僕は始めた。
「姉さんが手を握りながら、僕に語りかけたり、頭を撫でている内に安心して、涙が止まったんだよね」
僕は話しながら、姉さんの手を握る手に、軽く力を込める。
「姉さんが、何で悩んでいるかは分からないけど、僕は姉さんの心が少しでも軽くなって欲しいと、思ってるんだよ」
姉さんの心が軽くなるよう、姉さんの手を握ったまま微笑みつつ、僕は、そう言った。
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ゆうくんが、優しい微笑みを浮かべながら、私を見詰めている。
ゆうくんの暖かい手が、私の沈んだ心を、どんどん軽くして行く・・・。
私の心が軽くなるに従い、ある事に気付いた。
私との、関係が変わるかもしれないが、それで、ゆうくんが幸せなら、それで良いのではないか。
私のワガママより、ゆうくんの幸せを考えないとイケない。
確かに、私の心は寂しくなるけど、ゆうくんの為に、それを受け止められる様にならないと。
その時になれば、本当にそう出来るか分からないが、そうならなけらばならない。
心が軽くなると、ゆうくんの笑顔に誓い、そう決心した。
「うん、ありがとう、ゆうくんのおかげでとても心が軽くなったよ」
優しい、ゆうくんの微笑みに対して、私は精一杯に笑顔で返した。
・・・
しばらくの間、手を握ってくれた後、私達は、東屋を発って駅へと向かった。
当然、私は、ゆうくんの傘に入って、ゆうくんにくっ付いている。
ゆうくんに、彼女が出来たら、それを受け止める様に努力するけど。
それまでは、二人とも、この関係のままでも良いよね。
心の中で、そんな事を思いながら、駅へと向かっているのであった。




