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第39話 弟だと・・・

今回は、華穂視点の話です。

 三時限目後の休憩時間。


 先生の指名で、次の授業の教材を取りに行った由衣を、椅子に座って待っていた。




 「大丈夫かな、由衣、一人でも良いって言ってたけど・・・」


 「大丈夫だよ、華穂、由衣だって、子供じゃ無いんだし」




 由衣の心配をしている私と、呑気にしている瑞希。


 対象的な構えで、由衣を待っていると。


 廊下にいる、クラスの娘2、3人が何やら騒がしい。




 「ねえ、ねえ、あれ、華穂の弟くんだよね」


 「あ、優くんだ」




 何やら、聞き捨てならない単語が聞こえた。


 そうすると、由衣と共に、ダンボール箱を持った、一人の男子が教室に入って来た。


 入ってきた子は、クラスの男子とは違い、上靴の色が一年生を示していて。


 そして、その顔は、私が小さな頃から、毎日見ている顔である。


 クラスに入ってきた子は、ゆうくんだった。



 「いいなあ、あんな子が弟だったらなあ」



 クラスの中から、そんな声が聞こえてきた。


 その声を聞くと、私は鼻高々になる。

 

 ゆうくんは、持っていたダンボール箱を教壇に置くと、由衣と二言三言話した後、私の方を向き、手を振った。


 それに対し、私は、ゆうくんに手を振り返した。


 ゆうくんは、何度か振り返ると、そのまま教室を出て行った。


 それから由衣が、壇上のダンボールの中身を確認すると、自分の席に戻った。



 「あれ、由衣、優くんと一緒だったんだ」



 と、瑞希が言った。



 「うん、途中で一緒になったんだよ」



 それに対し、由衣がそう答えた。



 「それで、大丈夫だったの?」



 私は由衣に、運ぶのはどうだったかと尋ねると。



 「・・・それが、重くって、大変だったんだ」



 由衣が、大変そうな言い方で答えた。



 「中身を見たら、何やら、鉱石とか金属とか、見るからに重そうな物ばかり。

あれじゃあ、重いはずだよ〜」



 そう言って、由衣は溜め息を付いた。


 確かに、あの先生は科学の先生だけど、何でそんな物を女の子に持ってこさせたんだろう。



 「でも、どうして、優くんが荷物を持ってたの?」



 瑞希が、由衣に再び聞いてきた。



 「あのね、ダンボールを持って、階段を登ろうとしたら、足を踏み外して、倒れようとしてた所を、優くんが助けてくれたんだよ」



 それに対し、由衣がそう答えた。


 あ、やっぱり、そうだったんだ、ゆうくんらしいと言えば、らしいと言えるなあ。



 「荷物を持った私を、空中で受け止めてくれたんだよぉ・・・」



 そう言って、由衣は、顔を赤くさせて俯いてしまった。



 「それは、良かったねぇ〜♪」



 意味ありげな笑顔で由衣を見ている、瑞希。


 それを見て私は、意味も無く”ムッ”としてしまった。




 「でも、華穂はあんな弟いて、いいなあ」


 「私も、あんな弟が欲しいなあ」




 周りから、二人の娘が顔を出して、そんな事を言ってきた。




 「でも、私は、優くんが弟だと嫌だなあ」


 「「「「えっ!」」」」




 由衣が言った言葉に、顔を出した娘を含めた、四人が一斉に驚いた。



 「だって、弟だったら、恋人に取られるから・・・」



 由衣は、何気ないように、そう言った。


 だが、私は由衣が行った言葉に衝撃を受けていた。



 ”だって、弟だったら、恋人に取られるから”



 その言葉は、無意識の内に、心に蓋をして、考えないようにしていた言葉だ。


 なぜなら、どんなに仲が良くても、恋人に取られてしまうと。

いつもそばにいて、抱き締めたり、頭を撫でるのが、相手になってしまうからだ。


 また、その相手が、ひょっとして、由衣かもしれない・・・。



 ”だって、弟だったら、恋人に取られるから”



 その後しばらく、その言葉が私の耳に、リフレインし続けていた。



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