第35話 ずぶ濡れの二人
放課後の帰り道。
「は〜っ、参ったね」
僕達二人は、ずぶ濡れになって、民家の軒下で雨宿りをしている。
昼休みが終わり、午後の授業が始まってから、曇り始め。
ホームルームが終わる頃には、かなり怪しい雲行きになったので、学校を急いで出たのだが。
電車から降り、駅を出た所で、雨が降り出したのだ。
それで、走って家へと帰ろうとしたが、雨足が激しくなり、走ることが出来なくなったので、途中の民家で雨宿りをすることになった。
「思ったより早く、降り出したね」
そう言う姉さんも、ずぶ濡れになっていた。
姉さんは、僕の左隣にいる。
姉さんを見れば、髪が濡れて、前髪からしずくが垂れていた。
それに、服も濡れて、肌の色や、下着も薄っすらと見える。
僕は、その事に気付くと、姉さんから視線を逸らした。
「はあ、もう梅雨に入ったのかあ」
そう言って、姉さんが溜め息を付いた。
ふと、空を見ると、雲の厚さがまばらなので、少し待てば雨足が落ち着くと思うので、それまで待った方がいいだろう。
「洗濯物は、乾燥機があるから良いけど。
これからは、食べ物を気を付けないと、早く悪くなるからね」
「うん、気を付けないとね」
姉さんが、そんな家庭的な事を言うので、僕も、姉さんに相槌を打った。
・・・
「(ブルッ)」
しばらく、雨足が落ち着くの待ていると、突然、姉さんが震えだした。
「姉さん、寒いの?」
「うん、少し寒いかな」
姉さんがそう言うが、しかし、姉さんの唇が若干、紫色っぽくなっているので、少しどころでは無いだろう。
細かい震えを繰り返している姉さんを見て、僕は、
「あっ!」
姉さんを後ろに廻ると、姉さんを抱き締めた。
抱き締めると、いつも以上に姉さんの体温が感じられる。
その感触に驚いたのか、振り向いた姉さんに。
「姉さん、暖かい?」
「・・・うん」
僕が、そう尋ねると、恥ずかしそうに頷いた。
姉さんをいつも抱き締めているが、濡れた衣服で抱き締めていると。
いつより、姉さんの肌の感触、体温が感じられてので。
その感触をもっと味わいたくて、姉さんを覆い被さるように抱き締める
・・・
二人が触れている部分が温まると、皮膚の感覚が薄くなり、まるで二人が繋がったかの様な錯覚さえ覚えた。
「ゆうくん、暖かいよ・・・」
姉さんがその感覚に満足したのか、僕にしなだれてきた。
・・・
そうやって、姉さんを抱き締めていると、空が少し明るくなり、雨足が、落ち着いてきた。
そこで、姉さんに尋ねた。
「姉さん、雨が落ち着いて来たね」
「・・・ゆうくん、もう少しここに居ようよ」
「・・・うん」
しかし、姉さんは、この感触が惜しいのか、もうしばらくここに居ようと言った。
だけど、僕も同様なので、そう返事をした。
そんな訳で、僕はそれから、もうしばらく濡れたままで、姉さんを抱き締めていたのであった。




