第3話 通学途中で
朝食を終えると、玄関を出てると鍵を掛け、二人で、歩いて駅へと向かった。
そこから、学校前の駅まで電車に乗り、そこから、また徒歩で学校に向かうのである。
そう言う今は、学校前の駅で降り、学校へと向かっている所だ。
もう5月に近いとは言え、朝はまだ寒さが残っている。
それに、今日は晴れている事もあり、特にそれを感じられた。
僕らは、学校への通学路を並んで歩いている。
そうすると。
「・・・」
僕の左隣にいる、姉さんが右手で、僕の左手を握って来た。
姉さんの細くて柔らかだけど、まだ冷たさが残る手が、僕の手を握っている。
姉さんの手が僕の手を握ると同時に、僕も姉さんの手を握り返した。
それから、おもむろに姉さんの方を見ると、姉さんが僕を見て微笑んでいる。
その笑顔を見て、僕も何だか嬉しくなって、思わず頬が緩んでしまう。
「・・・ゆうくん」
「・・・姉さん」
僕らが、お互いの顔を見ながら、歩いていると。
「コラ、朝の通学路で、何、イチャついているの!」
突然、後ろから、そんな声が聞こえてきた。
その声がした方向を見ると、そこには、ショートカットの髪型で、やや釣り目がちの顔立ちをした、女子生徒が立っていて、僕らの事を呆れた顔をして見ていた。
「あ、瑞希、おはよう」
「瑞希先輩、おはようございます」
僕らの事を見ている、この女子生徒の名は、高宮 瑞希で、姉さんのクラスメートでかつ親友で、僕の2つ上の先輩に当たる人である。
「いつも思うけど、ホントにアンタ達は実の姉弟なの?」
「そうだよ、だけど、どうして?」
「あのねえ、いい年した姉弟が、いつもイチャイチャしている訳ないからよ!」
「イチャイチャ何かしてないよ(むう〜)」
瑞希先輩がそう言うと、姉さんが頬を膨らませる。
そんな顔も、身内贔屓だけど、可愛く思ってしまう。
「はあ、アンタ達見ていると、いつ一線を越えるか心配でしょうが無いよ」
「一線って何?」
「この、人が一杯いる通学路で、そんな事を言わないとイケないのかー!」
先輩が溜め息を付きながらそう言うが、姉さんの言葉を聞くと、今度は叫び声を出した。
「先輩、落ち着いて下さい。
周りが、みんな見てますよ」
僕がそう言うと、先輩が周りを見渡した。
先輩の叫び声を聞いて、周囲の生徒達の視線が先輩に集まっていたのだ。
それを見た先輩が、口を手で押さえながら、顔を真っ赤にした。
それから、肩を落として、カックリと項垂れてしまった。
「はあ、アンタ達と関わっていると疲れるわっ。
って、今度は、何をしているのよ!」
先輩が項垂れた顔を上げると、また叫び声を上げた。
いつの間にか僕は、姉さんの後ろに回り、カバンを持ちながら、姉さんの腰を抱き締めていた。
それに気付くと、急いで僕は、姉さんから離れた。
「もう嫌っ、こんな姉弟!」
先輩の声が、朝の通学路にこだました。