第29話 弟とシャイガール1
授業の間の休み時間。
僕と透也が廊下でダベっていると、階段から見た事がある人影が見えた。
よく見ると、どうやら由衣先輩のようだ。
「ねえ、あれ由衣先輩じゃない?」
「ああ、そうみたいだな」
透也にも、見えたみたいだ。
「ちょっと、行ってくるよ」
「分かったよ」
透也は、ここに残るつもりらしい。
まあ、行っても警戒されるだけだと、自分でも理解しているか。
そんな訳で、僕は、由衣先輩の所に向かった。
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「由衣先輩」
僕が後ろから呼び掛けると、一瞬、緊張した様だが。
その声が僕だと分かると、笑顔で振り返った。
「あれ、優くん、どうしたの?」
先輩は、ニコニコしながら僕に尋ねてきた。
「先輩の姿が見えたから、来たんですよ
先輩は、どこに行くんですか?」
「うん、これから体育だから、体育館に行く所なの」
と言いながら、僕に抱えていた、可愛らしい柄をした袋を見せた。
どうやら、その中に体操服が有るみたいだ。
「先輩達は、今、何をしているんですか?」
「う〜ん、今日からバレーボールみたいだけど、嫌だな・・・」
「どうしてですか?」
「私、球技とか苦手だから。
元々体を動かす事自体が苦手だけど、球技は特に・・・」
やっぱりそうなんだ、イメージ通りだな。
ん、でも先輩は眼鏡をしてんだよね。
「先輩、ひょっとして、眼鏡を掛けたままですか?」
「う〜ん、本当は危ないんだけど、無いともっと危ないから、掛けたままなんだよね」
へ〜え、そんなに目が悪いのかあ。
「ちなみに、視力はどれくらいですか」
「両方とも、0.1を切っているねえ」
はあ〜、そりゃ悪いなあ。
ふと、ここで僕は、頭にある事が思い浮かんだ。
先輩の、眼鏡を外した顔を見てみたい。
意味もなく、そんな衝動に駆られてしまった。
「すいません、先輩、一回でいいから、眼鏡を外してみてください」
「ええっ!」
「お願いします、一回でいいですから」
大変、失礼だけど、僕は好奇心に負けてしまい。
そんな事を、先輩にお願いしてみた。
「じゃあ、ちょっとだけだよ・・・」
そう言って、先輩が眼鏡を外してくれた。
「可愛い・・・」
「えっ!」
思わず僕は、そうつぶやいた。
眼鏡を外した先輩は、とても可愛かった。
眼鏡のフレームで分からなかったが、先輩の垂れ目がクリクリして、とても可愛かった。
「そのままでも可愛いですけど、外すともっと可愛いですよ」
「優くん、お世辞はいいよ・・・」
そう言いながら、先輩の頬が赤く染まった。
「髪も、解いたら方が良いかも。
こんなに、ツルツルサラサラだし、触ったら気持ち良いだろうな」
「優くん・・・」
僕の言葉に、先輩の顔がみるみる内に真っ赤になって行った。
どうやら、僕が触った時の事を想像しているようだ。
「・・・優くん」
「・・・はい?」
「ごめんなさいーーーー!」
先輩は、真っ赤な顔のまま、脱兎の如く、廊下を駆けて行った。
「あちゃ、やり過ぎたかな・・・」
先輩が、極端な恥ずかしがり屋だと言う事を、スッカリ忘れていた。
先輩の姿が、みるみる内に小さくなって行く。
僕は、その場で、先輩の姿を見ている事しか出来なかった。




