第26話 笑って祝福出来るのか?
「ふうっ!」
ようやく中間試験、最後の科目が終了した。
全ての力を出し尽くして、僕は、机に突っ伏せていた。
「お〜い、優」
隣の席の、透也からの声が聞こえる。
「何、透也?」
「これから、カラオケ屋に行くんだが、どうだ?」
「うん、今日はこれから用事も無いし、良いよ」
今日、姉さんは、瑞希先輩達を含めた複数人で、どこかに遊びに行くそうだ。
なので、夕方まで僕はフリーである。
そんな訳で、僕は、透也と共にカラオケ屋に、行く事になった。
**************
「・・・」
「イエイィーー!」
「「「「イエイィーー!」」」」
透也と共に、カラオケ屋に来てみれば。
物の見事に、僕以外は、クラスの女子ばかりであった。
しかも派手めの娘が4人、大人しめ娘が2人と、対象的である。
「〜〜〜〜〜〜♫」
しかも透也は、最初から、ノリノリである。
それに派手めの娘達が、合いの手を入れるものだから、乗り具合も加速していく。
こうして、透也と派手めの娘達が、歌って続けていった。
・・・
そうやっている内に、一人の、大人しめ娘が歌う番が来た。
「えっ・・・!」
マイクが廻って来ると、その娘は、歌うのを躊躇している。
ここで、断ると折角、盛り上がっていた空気に、水を差す様な事になるので、僕は。
「ねえ、一緒に、歌わない?」
「大橋君・・・」
僕が助け船を出すと、その女の子は僕の事を、熱い瞳で見詰めていた。
「それじゃ、合図に合わせて歌うよ。
一、二、三、はい!」
結局、その娘とはデュエットで歌った。
最初、声が小さかったが、僕がフォローしたり、背中を擦ったりして励ましてやると。
最後の方は、声が出て、楽しんで歌う様になっていた。
そして、もう一人の娘も、同じ様にして。
フォローすると、同じように歌う様になってくれた。
ともあれ、場をシラケさせず、また、女の子達も楽しんでくれて、僕もホッとした。
***************
「「大橋君、ありがとう!」」
僕がフォローした、女の子達が笑顔で別れて行った。
その娘達の笑顔を見て、僕は改めて、安堵の溜め息を付いた。
「なるほど、お前がモテるのも分かるな」
僕の背後で、透也がそう言った。
「僕がモテる?」
こんな地味で、パッとしてなくて、格好良くない僕が?
「はあ〜、お前、まだ気付かないのか?
お前と一緒に歌ってた娘達は、お前がカラオケに行く事を聞きつけてから、参加して娘達なんだぞ」
えっ! そうなの?
でも、そう考えたら、普段カラオケなんか、しそうにない娘がいる事に、合点がいった。
「で、優、どうするんだ。
いつまでも、姉弟ベッタリなんか出来ないんだぞ。
相手にだって、いつ彼氏が出来るか分かんないだから。
そう、考えたら、あの中から彼女を選んだ方が、俺は良いと思うぜ」
透也が言う事はともかく、確かに、いつかは姉さんにも彼氏が出来るのだ。
僕は、あくまでも姉さんの弟だ、彼氏が出来たら、笑って祝福しないといけない。
今まで、考えない様にしていた事を、改めて、目の前に突きつけられたのだった。




