第24話 親友の弟
今回は、由衣視点の話です。
ホームルームが終わり、放課後になった。
これから私は、帰り道を親友達と一緒に、駅まで行くのである。
しかし私は、この時間を楽しみにしていた。
それは、
「姉さん、お待たせ」
彼が一緒だからだ。
彼の名は、大橋 優くん、二つ年下の一年生である。
彼は、私のお気に入りであるのだ。
最初に、彼と出会ったのは、つい一月半くらい前の事。
入学式から、数日経った頃の事だった。
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「これが、私の弟で、優って言うの」
「始めまして、優です」
親友である、華穂から紹介があった。
瑞希の方は、電話とかで会話した事があるので、全くの初対面では無いが。
私の方は、始めてである。
私は初対面の、特に男の子なので、緊張して俯いてしまっていた。
私は、男の子は苦手である。
柄が悪い上に、乱暴なので近づきたくないのだ。
だけど、彼は、
「平尾先輩ですね、よろしくお願いします」
そう言いながら、私に微笑みかけてくれた。
私に、そんな風に接してくれた、男の子なんか殆ど居なかった。
大抵の男の子は、私を見ると、詰まらなそうにするか、視界に入れないかのどちらかであった。
しかし、彼は、そんな私にも、優しく接してくれた。
・・・
それから何回となく、彼と会う様になるが。
その時でも、私が緊張しない様に、微笑みながら優しく語りかけてくれた。
毎回、優くんと会う毎に、緊張した私の心は彼によって解きほぐされ。
いつしか、笑顔さえ見せる事さえ、出来るようになった。
そして、その笑顔も、いつしか、彼と会話したりなどのやりとりから、彼の顔を見るだけでも、出るようになったのである。
今では、毎日、優くんと会うのが、楽しみになっていた。
彼の顔を見て、彼の声を聞くだけで、何となく自分の心が、喜びに包まれ行くのが感じられる。
・・・
しかし優くんは、姉である華穂ととても仲が良く、姉弟とは思えないほどである。
例えば、華穂と優くんが、手を握ったり、または腕を組んだり。
あるいは、優くんが、華穂の腰を後ろから抱き締めているのを見ると、とても、羨ましくなる。
あの腕を組んだり、後ろから抱き締められているが、自分であればと、何度思った事か。
私は、恋を知らない。
だから、これが恋だとは断言出来ないけど。
でも、いつも優くんと、一緒に居たい。
彼と腕を組みたい、彼に抱き締められたい。
最近では、いつも、そんな事を考えるようになっていた。
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「由衣先輩、一緒に行きましょうか」
考え事をしていた私に、優くんがそう言ってきた。
いつも通り、微笑みながら、穏やかな声で私に語りかけて来た。
そんな彼に、私は、
「うん、行きましょう」
自然に出てきた笑顔を、彼に向けて、そう答えた。
「それじゃあ、優くんも来た事だし、出発しましょうか」
彼が来たのを見て、そう瑞希が言った。
瑞希の言葉を合図に、私達は駅に向けて出発する。
そして私は、いつも通り、前を歩く優くんを眺めながら、歩いて行くのであった。




