第22話 休み明けの朝
今回は、華穂視点の話です。
ゴールデンウイークが、終わった後の朝。
今日から衣替えで、久しぶりに着た夏服は、まだ少し肌寒かった。
「ふんふん〜♪ ふんふんふん〜♪」
朝から気分が良い私は、いつも通り、お弁当を作っている。
「あっ! もうこんな時間か」
もうそろそろ、ゆうくんを起こさないと。
その前に、朝食の準備をしてっと。
それじゃあ、ゆうくんを起こしに行くかな。
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「ガチャ」
ゆうくんの部屋のドアを開ける。
ベッドを見ると、ゆうくんは、私が起きた時のままだ。
昨日も私は、ゆうくんと一緒にベッドで寝ていた。
もう結構、暖かくなっているけど、ゆうくんの感触が忘れられず、またゆうくんのベッドに潜り込んでいた。
でも、これから、受験勉強の分量が増える様になる。
そうすると、遅くまで勉強をしても良いように、自分の部屋で寝るようにしないと。
そんな事を考えながら、ゆうくんの側に来た。
「ふふふっ、相変わらず、可愛い顔だなぁ」
私は、ゆうくんの顔を覗き込みながら、そうつぶやいた。
おっとと、ゆうくんを早く起こさないと。
「ゆうくん、もう時間だよ〜!」
私は、そう言いながら、ゆうくんを揺すった。
「んんん〜」
だけど、ゆうくんは唸るだけで、起きる気配は無い。
それにもメゲずに、更に、ゆうくんを揺する。
「ほらほら、早く起きてよ!」
そうすると、ゆうくんがイキナリ腕を伸ばすと。
私を抱き締めると、ベッドの中に引き込んだ。
「えっ!」
ベッドの中に引き込まれると。
私は布団の中に、また包まれてしまった。
「ちょ、ちょっと、ゆうくん〜!」
私は、布団の中でパニックになった。
「お姉ちゃん、大好きだよ・・・」
ゆうくんは、そんな寝言を言いながら、私を抱く力を強めた。
今日から夏服なので、予想もしなかった、ゆうくんの肌の暖かさが不意を付き。
布団に引き込まれて、高鳴った鼓動を、更に加速させた。
もお〜! ゆうくん、そんな事をしている場合じゃないよ〜!
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それから、しばらくして。
「姉さん、もっと早く起こしてよ!」
「ゆうくんが、抱き付いていたからでしょ!」
ゆうくんが、抱き付いたまま、ナカナカ離れなかったので、思いっきり遅刻してしまった。
「ほら、急がないと、一時間目が始まるよ!」
「ちょっと、まってよ、まだ着替えてないよ〜!」
もう、ホームルームには間に合わない、もう遅刻は確定している。
でも、せめて、一時間目には間に合わせないと。
だけど、さっきのゆうくんが、私をベッドに引きずり込んだのは。
何だか、別の意味でドキドキした。
あのまま、私が抵抗していなかったら、どうなっていたのだろうか?
そんな事を想像すると、頬が熱くなった。
「姉さん、どうしたの、顔が赤いよ」
「もお、ゆうくんは、そんな事はどうでも良いの!」
ゆうくんが、イキナリ、そんな事を言ってきたので。
私はうろたえて、ゆうくんに、思わず、そう言ってしまった。
「早くしないと、先に行っちゃうよ」
「あ〜! お姉ちゃん待って!」
照れを隠す様に、ゆうくんに、先に行こうとするポーズを見せた。
こうして、休み明けの朝は、ドタバタしたのであった。




