第21話 遊園地で遊ぶ(後)
これでも、話を大分削りました。
最初の構想で書くと、もう一話追加しないとイケなくなるので・・・。
姉さんの体調が回復すると、僕達は、次の乗り物に移動した。
しばらく、メリーゴーランドの様に、大人しいので様子を見てみて。
姉さんの体調が、完全に回復したと判断したので、またハードな物に挑戦してみた。
「ねえ、今度はこれにしようよ」
「う〜ん」
僕がそう言うと、姉さんが躊躇する。
次に乗ろうとしている乗り物も、ジェットコースターであるけど。
これは、小型のジェットコースターである。
別に、回転やコークスクリューも無いけど、その代わり、左右への遠心力が酷いのだ。
しっかりと固定してないと、横に振り飛ばされる位はあるかもしれない。
姉さんは、その手の物は苦手にしている。
「まあ、そう言わずに行こうよ」
「え、あ、ちょっと待って〜」
躊躇する姉さんを、僕は引っ張って行った。
・・・
「さあ、姉さん、乗って乗って」
「は〜い〜」
そう言って、僕はコースターに先に乗り、姉さんに乗る様言った。
このコースターは、二人乗りで仕切りなど無く。
一人の後ろにもう一人が覆い被さる様に乗る形式の物である。
なので、このコースターには、前に彼女を乗せると、抱き締める形で乗ること出来る為、カップルが利用する事が多いのだ。
姉さんが渋々と、コースターに乗り込む。
姉さんが僕の足の間に入ると、シートベルトを締める。
「あっ!」
シートベルトを締めると、僕は姉さんを後ろから抱き締めた。
予期していないのか、姉さんが声を上げる。
「それでは、出発しま〜す!」
係員が出発の合図をする。
それと同時に、コースターが発進した。
「ガタン、ガタン」
発進して、しばらくすると、左右からの衝撃が始まる。
「ガン! ガン!」
「〜〜〜〜!」
左右から来る遠心力に、姉さんは耐えている。
遠心力に耐えかねた姉さんが、後ろを振り向きながら、潤んだ瞳で僕を見上げている。
「ねえ、ゆうくん、もっと強く、私を捕まえて・・・」
そして姉さんが、僕に更なる抱擁を要求してきた。
その要望に応えて、僕は姉さんを抱き締める腕に力を入れつつ、姉さんの頭に頬をくっ付ける。
「ゆうくん・・・」
姉さんは、そのつぶやきと共に、僕に体を預けてきた。
こうして僕達は、その状態のまま、コースターに最後まで乗っていたのである。
***************
ジェットコースターから降りると、姉さんは様子がおかしい。
別に体調が悪くなっているとかでは無く、目の焦点が合ってなく、まるで夢見心地の様な感じになっているのだ。
他の乗り物に移動しようとする時、僕の左腕に抱き付くと、しなだれながら、肩に頬を乗せ。
僕が話掛けると、ウットリした目で僕に微笑みかけてくる。
少々、気味が悪い気もするが、別に体調が悪い訳ではないので、そのままでいた。
そうして、他にも色々な乗り物に乗り、気が付くともう夕方である。
それから、最後の締めに、観覧車に乗る事にした。
・・・
「ニコニコニコ」
「・・・」
姉さんは相変わらず、焦点の合ってない目で微笑んでいる。
「どうしたの、姉さん、そんなにニコニコして。
そんなに、良い事があったの?」
僕は、姉さんに聞いてみた。
「うん、あのね、ゆうくんと、あのジェットコースターに乗った時にね。
ゆうくんに抱き締められていたら、何だかもの凄く気持ち良くなって、それがずっと続いているのよ」
そう言って、ウットリした目で僕を見ている。
・・・
それから、しばらく僕を見ていたと思っていたら、次に外の風景を見ながら。
「でも、ゆうくんの恋人になる娘は、とっても幸せなんだろうな。
こんなに、優しくて、相手の事を思いやる事が出来る相手が、恋人なんだから」
姉さんが、そう言った。
もう外の大部分は、夕暮れの赤い光に包まれ、東の空には、夜の黒が覗き始めていた。
そんな外の風景を、今までとは一変させ、寂しさを滲ませた目で見ている。
「でも私達は、姉弟だから、いつまでも一緒だよね」
しかし振り返ると、それまでの雰囲気を振り払う様に、僕に笑顔を見せた。
僕は、その何だか無理をしている様な笑顔を見て、違和感が湧き起こってきた。
「う、うん、そうだよね、僕達はいつまでも一緒だよね」
僕は、その違和感を振り払う様に、そう答える。
それから、僕達はそれまでとは打って変わって、他愛もない会話をしていた。
しかし僕は、自分の違和感の正体には、目を逸らせていたのだ。




