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第15話 後ろからハグ

 その日の昼休み。


 屋上でいつもの様に、姉さん達と昼食を食べ終わった所である。




 「姉さん、美味しかったよ」


 「おそまつさまでした」




 僕が姉さんの料理を褒めると、姉さんが笑顔を見せた。


 そんな僕達を、瑞希先輩と由衣先輩が、もう慣れたと言った感じで見ている。



 「あれ、ゆうくん、ホッペにお弁当が付いてるよ」



 僕の顔を見た、姉さんがそう言った。



 「え、どっち?」


 「右の方、違うよ、もっと下」



 僕が取ろうとするが、見当違いの所に手を持っているみたいだ。



 「違うって、もお、しょうが無いなあ〜」



 ナカナカ取り切れない僕に、痺れを切らせた姉さんが、僕に顔を近づけると。



 「チュッ」



 ・・・口で僕に付いた、お弁当を取った。



 「ほら、取れたよ」



 僕に微笑み掛けながら、姉さんがそう言った。



 「・・・姉さん、ありがとう」



 そんな姉さんに、僕は照れながらも、お礼を言ったのである。


 しかし、そんな事をしていた僕達を、由衣先輩がジッと見ていて。


 一方、瑞希先輩の方は。



 「アンタ達、そんな事は誰も居ない所でしようね」



 複雑な顔をしながら、僕達にそう言った。




 ***************




 「はあ〜、今日は良い天気だね」



 瑞希先輩が、両手を上げながら大きく伸びをする。


 今、僕達は屋上の手すりに居て、遠くを眺めている所である。


 瑞希先輩がせっかくの晴天だから、遠くの方を見てみようと言ったからである。


 確かに今日は、まだ5月に入って無いが、五月晴れと言っても良い天気である。


 頬を撫でる風が心地良い。


 ふと、姉さんを見てみると、姉さんが髪をなびかせながら遠くを見ている。


 何となく、僕は姉さんの背後に廻ると、姉さんの腰を抱き締めた。



 「あっ!」



 一瞬、姉さんが驚いて身を固くさせるが、僕だと分かると、力を抜き、手を僕の手の上に置いた。



 「姉さん、家はどの辺になるんだろうね」


 「うん、あの辺りになるかな?」



 そう言って、ある方角を小さく指差す。



 「あの辺りになるんだね」



 僕は、そう言いながら、姉さんの背後から、頬を姉さんの頭に乗せた。


 姉さんの頭に頬を乗せると、姉さんの甘い匂いが強くなる。


 それに、風にたなびく髪の毛が、僕の頬をくすぐる。



 「なに〜、ゆうくん、お姉ちゃんに甘えたくなったの〜」


 

 姉さんが”ふふふっ”と、笑いながらそう言う。



 「うん、お姉ちゃん、良い?」



 僕は思わず、小さな頃の様に、”お姉ちゃん”と言ってしまった。


 「もお、しょうが無いなあ」



 姉さんが笑いながらも、そんな事を言った。


 それから、姉さんが左手を上げて、僕の頭を撫でる。


 姉さんの細くて柔らかい手が、僕の頭を(くしけず)って行く。


 その感触が気持ち良くて、自然に。



 「お姉ちゃん、気持ち良いよぉ・・・」



 と、姉さんに甘える様に言ってしまった。


 それを聞いて、姉さんの僕を撫でる手がより優しくなる。



 ・・・



 その、一連の光景を見ていた瑞希先輩は、溜め息を付き。


 由衣先輩の方はと言うと、僕らの方を見ながら、(うらや)ましそうにしていた。



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