第14話 休憩時間に
2時限目が終わり、休憩時間の最中。
「なあ、優、午後の授業の課題、やってきたか?」
「うん、してきたけど」
「すまん、写させてくれ。
ある事をスッカリ忘れていたわ」
「・・・しょうが無いなあ」
「わりい、恩に切りぜ」
と、透也がイキナリ言って来た。
まあ、透也が課題の類を忘れるのは、いつもの事だ。
溜め息を付きながら、ノートを透也に渡す。
ノートを受けとると、透也は急いで、ノートを書き写す。
そんな透也を溜め息を付きながら見ていると。
「ねえ、大橋君、お姉さんが呼んでるよ」
僕の側で、そんな声が聞こえた。
見るとクラスの女子が立っていて、教室の出入り口の方を指差している。
そして、その先には、姉さんが立っているのが見える。
姉さんは、僕を見つけると、小さく手を振ってくれた。
僕は席を立って、姉さんの所に向かう。
「あれ、姉さん、どうしたの?」
「ゆうくん、お願い、英和辞典を貸して」
姉さんが両手を合わせて、僕にお願いして来た。
「うん、じゃあ、今取って来るよ」
僕は、一旦、自分の席の方に戻った。
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「大橋先輩、彼氏はいるんですか?」
「帰りに、どこかにいきませんか」
「あはは・・・」
席に行って、また戻って来ると、クラスのヤンキー系の男子が、姉さんにナンパをしている。
姉さんの方は、困った様子で、愛想笑いをしている。
それを見た僕は、何となく”ムッ”としてしまい。
「姉さん、辞書渡すから、アッチにいこ」
僕は、姉さんの手を引いて、廊下の先にある階段の影の方に行く。
「チッ」「なんだよ、優の奴」とナンパし損ねた男子の声が、後ろから聞こえるけど。
そんな連中の事なんか、どうでも良い。
何となくイライラした僕は、姉さんを引っ張りながら、階段の影の方に向かった。
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「ゆうくん、ありがとう」
「姉さん、こっちに来ない方が良いよ」
「えっ!」
「また、あんな連中に付き纏われるよ。
姉さんは、タダでさえモテるんだからね」
そうなのだ、姉さんは、可愛い系の美人で、学校でもカナリの人気があるのだ。
僕が入学して、側にいる様になってから、見ないみたいだけど。
それ以前は何でも、告白される事は珍しく無く、機会を見つけて親しくなろうとする男が、付き纏う事もあったらしい。
そんな時は、瑞希先輩達が撃退していたそうだ。
だから、僕は入学するまで、そんな事を聞いて、いつもヤキモキしていた。
「でも、ゆうくんに、用事がある時は・・・」
「そんな時は、僕が姉さんの所に行くよ。
瑞希先輩とかに、頼んで呼びに来たりしてさ。
・・・姉さんは可愛いから、心配になるんだよ」
「ゆうくん、ありがとうね・・・。
でも私は、ゆうくんから見ても、可愛いんだ♪」
「え、その、あの・・・」
「ねえ、お願い、もう一回言って」
そう言って姉さんが、両手を僕の頬に包み込む様に当てた。
「えっと、その・・・」
「ほら、早く言って・・・」
姉さんは、僕の頭を自分の方に引き寄せると、オデコとオデコをくっ付けながらそう言った。
それから僕は、時間が来るまで、姉さんの甘い尋問を受けていたのである。




