第13話 仲良く登校
ある日の朝。
僕は玄関先で姉さんを待っていた。
姉さんは、身支度にまだ時間が懸かっている。
「まだかな」
さすがに待ち切れず、ボヤキ始めた頃。
「ゆうくん、ごめんね」
姉さんが、玄関から飛び出してきた。
「ううん、いいよ」
姉さんの顔を見ると、待たされていた事を表に出さず、姉さんにそう言う。
「じゃっ、行こうか」
そうすると、姉さんが、笑顔で僕にそう言った。
僕は姉さんの笑顔を見ると、何だか嬉しくなって来る。
それだけで、多少のワガママも、無茶ぶりも許してしまう。
でも姉さんは、それに気付いている節があって、都合良く使う時があるんだよなあ。
それでも、許してしまう僕は、姉さんに甘いのかな。
「なにしてるの、ゆうくん。
ほら〜、早く行こうよ」
一人で考え事をしている僕に、先に行っている姉さんが、呼び掛けている。
「ごめん、ごめん」
僕は、姉さんに謝りながら、姉さんの側に駆け出した。
そうして、姉さんの側に行くと、二人で駅までの道を歩き出した。
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駅へと歩いていると、お約束通りに、姉さんと手を繋ぎ出す。
周りからみると、カップルの様に見えるが。
僕が”姉さん”と言うのと、二人の顔が似ているので、それで姉弟だと判る。
しかし、今度はいい年をして仲が良い姉弟と言う事で、奇異の目で見られる。
クラスでも、特に、異性の兄弟がいる人間がそんな事を言うし、それにそう言う人間は、余り相手を良い様には言わない。
でも、そんなに世の中の姉弟、兄妹って仲が悪いのだろうか?
僕には理解出来ないなあ。
「どうしたの、ゆうくん?」
僕が考え事をしていると、姉さんが声を掛けてきた。
「あ、うん、姉さん。
ねえ、僕達って、変なのかな?」
「どうして?」
「クラスなんかで、異性の兄弟がいる人間が言うには、僕達は変だって」
「あ、そう言えば、私も同じ事を言われた。
でも、ゆうくんみたいな弟なら、違うとも言われるね」
「なんで?」
「何でも、その娘達が言うには、ゆうくんは理想の弟だって。
優しくって、可愛くって、自分の言う事を素直に聞いてくれるけど。
イザと言う時には、頼りになるって」
「何だか、僕って犬みたいだな・・・」
「うん、ゆうくんの事、大型犬みたいな弟だって。
グレートピレニーズとか、ゴールデンレトリバーなんかの」
その時僕は、時折、公園なんかで見かける、大型犬を散歩させている女性を思い浮かべたが。
僕は、他人から見たら、そんな風に見えるのだろうか・・・。
「でも、そんなのどうでもいいよ、姉弟が仲が良くて何が悪いの?
他人の事なんか関係無いよ、私達は、私達だからね」
「うん、そうだね」
姉さんの言葉に、僕は頷いた
「あ、だけど、ゆうくんが私の弟でラッキーだったかな」
そう言いながら、姉さんが笑顔になった。
「うん、僕も姉さんが、僕の姉でラッキーだよ」
こんな、穏やかで、優しいけど、時々僕に甘えてくる。
笑顔が可愛い姉さんが、僕の姉である事が、とても幸運に思える。
そんな事を考えると、僕の頬が自然に緩んだ。
二人は笑顔になると、手を繋いだまま、駅への道を歩いて行った。




