第100話 迫(せま)られる決断
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僕は、由衣先輩と別れると、授業中の教室に入った。
教室に入ると、今の時間は自習だったので、何人も席を立っていて、雑然としていた。
ただし、騒ぐと隣の教室にいる先生が怒鳴り込むので、余り大きな声を上げる事は、みんな自重しているが。
そんな訳で、遅れて入っても、特に目立つことは無かった。
「おい、優、どこに行っていたんだよ?」
自分の席に戻り、椅子に座ると、隣の透也が尋ねてきた。
「うん、ちょっとね・・・」
「・・・そうか」
僕が言いたくない様子を見せると、雰囲気を読んだのか、訝しそうな表情を見せながらも、短くそう言って、すぐに反対側の男子と雑談を始める。
僕は、透也の様子を見て、軽く溜め息を付くと、机に頬杖を付いた。
そして、頬杖を付いたまま、次第に思考の世界に入って行った・・・。
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由衣先輩は、とてもシャイだけど優しくて、しかも、僕の為に自分を変えてくれた位、僕の事を思っている。
そんな先輩が僕に告白したのだ。
「(由衣先輩に告白された・・・)」
僕は改めて、その事を考えた。
夏休みに海に行った時からの事を思えば、そうなる可能性があるのは分かっていたのだけど。
僕は、その事について、考える事を避けていたのだ。
それは、姉さんとの関係が変わるのを恐れて、先延ばしにしていたからである。
もっと前に、この事を考えていれば・・・。
・・・いや、それ以前に、僕は、姉さんとの関係に付いて、今まで深くは考えていなかったのだ。
なぜ、僕は姉さんに、こんなに固着しているのか?
僕は、姉さんと何がしたいのか?
ただ、一緒に居て、ジャレ合うだけなのか?
姉さんと恋人になりたいのか?
いや、それとも、少し違う様な気がする。
僕は、姉さんと今までの関係を改めて、新しい事がしたいんじゃないんだ。
何だろう、この喉まで出かかっているのに、出てこないモヤモヤした感覚は。
もう少しで、答えが出てくるのに。
答えが出れば、由衣先輩の返事も自然に出るんだけど。
僕は、頬杖を付いたまま、眉間にシワを寄らせながら、思考の世界に居たのである。
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「・・・う、・・・優、おい、優!」
「うん?」
「おい、もう、休憩時間だぞ!」
どうやら、授業時間が終わり、休憩時間になったみたいだ。
「優、お前、何か変だぞ・・・」
「いや、大した事じゃないよ。
ちょっと考え事をしていた所だよ」
休憩時間になっても、動かない僕を不審がって、透也が声を掛けた様だ。
「透也、ジュースでも、一緒に買いにいかない?」
「ああっ・・・」
僕は、透也にそう言って、誤魔化すが、透也は相変わらず、怪訝そうな表情で僕を見ている。
「奢ってやるって言っても?」
「ご馳走になります」
奢ると言った途端に、コロリと態度が変わる透也・・・。
全く、コイツは現金だなあ。
そんな訳で、透也と二人で、気分転換を兼ねて自販機に向かったのであった。




