第10話 夜のひととき
僕をジッと見詰めていたので。
結局、姉さんが食べるのに時間が懸かってしまった。
しかし、今度は逆に、食べ終わった僕が、姉さんの食事風景を眺めている。
姉さんを眺めていると、少しづつ食べる姿は、まるで小動物の様に見える。
「ニコニコニコ」
「・・・」
可愛らしい、姉さんの食べる姿を、僕が頬を緩ませて見てると。
僕のその視線に気付いたのか、頬を少し赤くしながら、姉さんが食べていた。
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夕食が済んで、食器を持って流しに向かう。
その後から、姉さんが同じく、食器を持って来た。
「姉さん、姉さんの分もまとめて洗うから、居間で休んでてよ」
「そんな、悪いわよ」
「いいから、いいから、居間に行って良いよ」
「・・・それじゃあ、お願いね、ゆうくん」
そう言って、自分の分を流しに置くを、姉さんは居間に行った。
さて、姉さんの分も一緒に洗うか。
さっき切った傷には染みるけど、まあ、いいか。
それから僕は、流しに行き、洗い物を始めた。
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食器を洗い終えると、僕は居間に行った。
居間には、姉さんがテレビに前のソファに座り、何やらテレビ番組を見ている。
「ゆうくん、ご苦労さま」
「姉さん、何見ているの?」
「うん、動物もののバラエティーなの」
「姉さん、生き物が好きだからね」
そう言うと、僕は姉さんの右隣に座った。
いつも、無意識の内に姉さんの右隣に居てしまう。
小さい頃はいつも、姉さんが右手で、僕の左手を握っていたので、その時の名残りなのだろう。
なぜか自然に、姉さんの右隣にいてしまうのだ。
「(スルスル)」
僕がソファに座っていると、姉さんが移動して、僕に密着して来た。
そして、僕の左側で腕を組ながら、僕の手を右手で持ち、左手で手の甲を撫でる。
「ねえ、ゆうくん」
「何、姉さん」
「指、痛く無い?」
「うん、少し染みるけど、それ程でも無いよ」
姉さんが今度は、僕の怪我した指を軽く握りながらそう言うと。
それに対して、僕は、そう答えた。
姉さんが密着してきたので、甘い、まるでキャラメルの様な匂いが漂って来た。
その甘い匂いと、密着する体の柔らかさに、なぜだかシュークリームやマシュマロなんかの、柔らかいお菓子を連想してしまう。
でも、姉さんは匂いだけで無く、その雰囲気や優しさは、まるでお菓子の様に甘くて柔らかい。
その甘さに、僕はいつも溺れている。
「姉さん」
「なあに」
「心配してくれて、ありがとう」
僕の事を気遣ってくれる、姉さんにお礼を言った。
そうして、テレビを見ながら、僕達はまったりとした時間を過ごした。




