第1話 ゆうくん起きて
ある日の朝。
「ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ!」
「ガシャン!」
うるさく鳴る目覚ましに、目が覚めると、身を起こし叩いて止める。
目覚ましの音で目が覚めたけど、まだ充分に目覚め切っていない状態である。
しばらく、身を起こした状態でいると、睡魔に負けてまた布団の中に戻ってしまった。
「むにゃ、むにゃ」
そうやって、布団の中で微睡んでいると。
「パタ、パタ、パタ、パタ」
スリッパの音が聞こえた、次の瞬間、部屋のドアが開くと同時に。
「ほら、ゆうくん、朝だよ、起きなさい」
姉さんの声が聞こえて来た。
しかし僕は、姉さんに構ってもらいたくて、ワザと寝たふりをしている。
「早く起きないと、学校に遅れるよ」
今度は、ユサユサと僕を揺すりだした。
しばらく僕を揺すって、それでも僕が起きないと見るや。
「ゆうくん、起きないと、くすぐるよ」
そう言いながら、姉さんが手を僕の布団の中に入れた。
それから、僕のパジャマの中だけで無く、中のTシャツにも手を入れると、僕の素肌に直接、手を滑らせ始めた。
僕の肌を、姉さんの細くて柔らかで、ひんやりした手が滑る度に、くすぐったいけど、同時に何とも言えない、快感が体を走って行く。
「止めて! 起きます、起きますから、止めて!」
そんな、くすぐったさと快感が入り混じった感触に耐えきれずに、僕は、姉さんにギブアップをした。
くすぐられて、息が荒くなりながら上体をベッドから起こすと。
黒い髪を背中まで伸ばし、少し垂れ目をした優しげな顔立ちの、綺麗と言うより可愛い系の美人が目の前にいた。
この人が、僕の姉である。
僕の目の前で、セーラー服姿の姉さんが、こちらを見ながら微笑んでいる。
「ダメだよ、目が覚めてた癖に、寝たふりなんかしたら」
その微笑みのままで、僕の頭に手を伸ばすと、僕の頭を撫でながら姉さんがそう言った。
はははっ・・・。始めからバレていた訳ね。
それから姉さんが、僕の頬に右手を当てると、突然、姉さんの顔が近付いてきて。
「チュッ♡」
僕のおでこに、キスをした。
「ふふふっ、目覚めのキスだよ」
舌をチロリと出しながら、姉さんがそう言った。
「ほら、下に行こう。
早く食べて、学校に行かないと」
照れを誤魔化す様に、そう言うと、スリッパの音をさせながら、一階へと降りて行った。
僕は、姉さんが去ったドアの方を、キスをされた、おでこを擦りながら眺めてていた。