腹黒姉妹の腹の探り合い。姉?妹?どっちが黒い⁉
「第三王子の婚約者とその妹は転生腹黒侯爵家令嬢。婚約破棄に向けて姉妹で頑張ります。」の会話劇を肉付けしてみました。通常の短編に書き直したお話です。どちらが好みでしょうか?
ここは、さる侯爵家のテラスである。侯爵家嫡子である長女がお茶を楽しんでいた。そこへ妹が参加する。
「お姉様、ご婚約おめでとうございます~。」
「あなた、本当にめでたいと思ってるの。」
「一応慶事だし、お祝いの言葉は言わないとなの。」
「本音は?」
「ご愁傷さまです。私でなくてよかったわー。でも、将来、あんなのをお義兄様って呼ばなきゃならないなんて、今から、鳥肌もんよ。」
侯爵令嬢らしからぬ口調で、本音と建て前を口にする。長女は婚約が調ったばかりだ。そして、婚約者は、この国の第三王子殿下だ。王子が侯爵家に婿入りすることになっている。だが、この王子、良い評判が無い。
一家を上げて反対したが、侯爵家といえども王族には勝てなかった。
納得できないのは、本人である長女だ。
「まだ、婚姻まで3年あるわ。その間に対策しないと。協力してよ。」
「なんの対策?」
「もちろん婚約破棄よ。あいつ有責でね。」
「で、作戦は?」
「検討中。何か良い案は無いかしら。」
結婚は同い年の二人が王立の貴族学院を卒業してからと決まっている。長女はそれまでに婚約破棄を狙っているようだ。
それならと、妹が張り切っている。それほどにお義兄様と呼びたくないようだ。
「うーん。定番のハニートラップ?」
「エッ、定番なんてあるんだ。」
「うん、あと我が家の没落。」
「却下。」
「聖女とくっつける。」
「この世界、聖女なんていないわよ。」
「お姉さまが聖女になる。初代よ。すごいわ~。」
この世界には聖女はいない。いないが、聖魔法が使える者は、教会に身を置くことになっている。教会の定義に依るものだが、国もそれを認めている。
『聖魔法は神により選ばれた者にやどる特別な魔法である。よって、聖魔法を使える者は、神の近くに於いて、その力が発揮できるものである。』
聖魔法が使えれば、当然婚約も無くなるのだ。
「私、聖魔法とか使えないわよ。それに、一生教会に奉仕なんて御免だわ。」
「留学して他国の王子をひっかける。もちろん、うちの国が頭の上がらない国ね。」
「これから王子妃教育よ。留学なんて、許してくれないわ。」
「お姉様、ひっかけるなんて無理よとは言わないんですね。」
「まあね。」
「すっごい自信。少しは、謙虚を学びましょうよ。」
「嫌よ。」
侯爵家に婿入りしようが、王族としての義務は生じる。従って、長女には王子妃教育が待ち構えている。侯爵家当主としての教育と並行してだ。この婚約は長女にしてみれば、負担でしかない。
「はいはい。それでは、お姉様の優秀さを見せつける。」
「それだと婿入りしてから楽でいいと喜びそうよ。きっと、婿入り後、遊び惚けているわ。」
そうなのだ。王子は、ハッキリ言うとお勉強が嫌いだ。だからこそ、家柄も良く頭も良いとの評判の長女に婿入りなのだ。親である国王陛下もそこは理解している。だからこそ、婚約破棄のハードルは高い。
「う~ん。いい案がないわね。やっぱりハニートラップかしら。」
「そうね。でも、誰が仕掛けるのよ。あなた?」
「まさか。蕁麻疹がでます。だったら、お姉様が我慢すれば。そしたら、私はすぐ結婚して、この家からおさらばします。」
「我慢なんてできません。蕁麻疹以前に、アレルギーで死ぬわ。」
あれやこれと姉妹で知恵を絞るが良い案が出ない。
「お姉様と王子って明日学院に入学でしょ。お姉様の頭を見せつけて、他に癒しを求めさせれば。学院生活は3年あるんだし、あの年頃の子はギラギラしているでしょ。」
「まあ、そうね。あいつって、【俺様最高】ってやつだからやりたい放題みたいよ。」
「もう、ですの。」
「そうなの。可愛いメイドとかをベッドに引き込んでいるみたいよ。誰か、ご懐妊しないかしら。」
流石に王族の庶子を作り出すわけにはいかず、王宮の第三王子の近くには、なっとくのメイドが付き、秘密裏に子もできないようにしてある。だが、侯爵家の姉妹は知らない。
「なら、期待大ね。私も来年は学院に入学だから、色々と楽しみだわ~。」
「そうなるように、かわいい子を見つけて紹介してみるわ。うまくいくといいけど。」
「あの男、本能が先走るからいけるんじゃね。」
「言葉が乱れてるわよ。」
たまらず、姉の教育的指導が入る。
「あら、失礼。でも、お姉様に冤罪を吹っかけてきそうよ。卒業パーティーで、冤罪で婚約破棄は定番よ。お姉様は、悪役令嬢よ。気を付けてね。」
妹の忠告だ。だが、この国でそんな定番は聞いたことが無い。
「ねえ、その定番っていつからよ。私は、知らないわよ。」
「やだー。知らないの、お姉様。婚約破棄小説って結構人気だったのよ。」
「日本で?」
「そうで~す。えっ⁈」
「やっぱり。」
「お姉様も。」
流石、長女だ。今までの会話から推理したようだ。しかも、懐かしい会話のテンポなのだ。そうなると、
「そうよ。もしかして、貴方、日本でも妹?苗字は○○よ。」
「そうみたいですね。お姉様って、前世でも、お姉様だったのね。」
「文句がありそうね。」
「イイエ、文句はありません。ただ、納得しただけです。」
転生後の姉妹の邂逅はあっさりしたものだった。
一年後、妹令嬢の入学式だ。
「入学おめでとう。」
「お姉様、ありがとうございます。」
「あなたが入学するのを待ちに待ってたのよ。」
本日、妹令嬢の入学式だ。姉は、待ちに待ってたようだ。
「作戦は、上手くいかないようですね。」
「そうなの。皆さん、ちゃんと常識をもった方々ばっかりでね。
あいつの注目は、もっぱら王宮の女性たちよ。
でもね・・・。」
「でも、とは?」
「今年は、ピンクブロンドの男爵家の庶子が入学するんですって。」
「定番のピンクブロンド。それは楽しみですね。」
「期待大よ。」
小説の定番、ピンクブロンドの男爵家の庶子の登場に意気上がる姉妹だ。でも、ここは日本ではない。定番が定番になるのか。
「ところで、あの方ですか?ピンクブロンドですよ。」
「そうみたいね。あんなに急いでどうしたのかしら?」
ピンクブロンド登場。
「お姉様。あちらに、やんごとなき方が・・・。」
「あら、あら、あら、あら~~~。」
ピンクブロンド令嬢は、あろうことか第三王子殿下に体当たりだ。
「定番ですね。」
「ぶつかってハンカチを落とすのが?私って、その手の小説は読んでないのよね。なんか現実離れしすぎて。」
「前世のお姉様も、今世と同じに現実的でしたものね。」
「あなたは、全方面に手をだしてたわね。」
定番中の定番のイベントが発生した模様。
「ハンカチは、定番中の定番で小説冒頭での出番です。」
「それにしても、側近や護衛は役立たずだわ。みすみすその定番を成功させるなんて。今は褒めてあげるけど。」
侯爵家次期当主として、護衛の怠慢は見逃せないものらしい。
「ピンクブロンドの物語は、そういうものなんです。気にしちゃダメです。」
「でも、ほら、殿下がハンカチを握りしめていてよ。」
「お姉様。これは、ひょっとてして、大成功の予感が・・・。」
「これからが楽しみね~。」
姉妹二人で、手を取り合い期待に胸を躍らせていた。
「楽しみですけど、鳥肌もんの奴と目があってしまいました。お姉様、私の目は濁っていませんか。」
「きれいなお目目よ。私たちにはお目汚しだけど、ご挨拶はしないとね。これも、婚約者の務めね。うっとしいこと。」
「さっさと挨拶して、すぐ退場しましょう。」
婚約者としての義務は忘れない。それに、近くで状況確認だ。
「殿下、ごきげんよう。先ほど、どなたかとぶつかっておいででしたが、お怪我はございませんか。無いようでしたら妹が今年から入学致しますのでご挨拶させていただきます。」
「殿下、お久しゅうございます。今年から入学致します。よろしくお願いいたします。お付きの先輩方も、よろしくお願いいたします。」
殿下は、怪我もなく変わりないようだ。しかし、姉妹が挨拶しても反応が薄い。お付きの者たちもだ。ずっとピンクブロンド令嬢の行った先を目で追っている。
「殿下、お持ちのハンカチはとてもおきれいですね。」
「その刺繍の紋は○○男爵家のものですね。」
「それでは、式に遅れますので、御前を失礼させていただきます。」
殿下に必要な情報を与えつつ、顔のにやけ具合が深くなる。
「お姉様、聞きました。殿下のため息まじりの言葉。」
「ええ。『○○男爵家の令嬢か、かわいいな。ハア、』ですって。
彼女には頑張ってもらわないと。」
「きっと大丈夫よ。定番中のド定番でしたもの。」
ここは、小説の世界ではないはずだが、ハニートラップが向こうからやってきた。
「これからも、定番が見れそう。たのしみ~。。私も、ガンバ。」
「何を頑張るのよ。それと、時々、言葉が乱れますわ。注意なさい。」
「は~い。頑張るのは、ピンクブロンドのストーカーです。」
「結果は、教えてね。」
姉の教育的指導の入る中、期待はどんどん上昇する。
入学式以降、妹令嬢は偶然をよそって、ピンクブロンド令嬢のストーカーを繰り返していた。
「お姉様、どんどん資料がたまりますの。」
「貴方入学してまだ半年よ。で、何がどうたまったの。」
姉の問いに応えるべく、資料を確認する。半年でもかなりの量だ。
「えーと。まず、鳥肌もんの奴とピンクブロンドは、入学式後、数日のうちにお礼と言うプレゼントを渡しあってます。」
「早いわね。」
流石、殿下だ。女性のこととなると行動にためらいが無い。
「ピンクブロンドからは、手作りのクッキーとかです。殿下からは返礼として、髪飾りとか小物をですね~。」
「私は、な~んにも、いただいたことが無いんだけど。」
「ひょっとして、お姉様への予算を使い込んでます。」
「そうかも。調べてみるわ。」
ここで、横領としての確たる罪が出てきた。殿下から贈り物とかもらいたくないが、婚約者としてのプライドが傷ついてはいた。
「他にも、幅広く色んな令息からもいただいてます。それも、同じものをリクエストしているようです。ただ、経済力に応じて質を決めてますねえ。」
「なかなか、やるわね。一つだけ残して売ってるわね。」
「確実にそうですね。いただき女子の定番でしたね。」
「日本でね。」
「もしかして、ピンクブロンドも・・・。」
「可能性は大ね。」
ここにきて、恐ろしい仮説が浮き上がってきた。もし、ピンクブロンド令嬢が転生者なら……。面白い戦いになりそうだ。
妹令嬢はさらにストカーを続ける。ある時、ピンクブロンド令嬢の歌に、思わず声が出ていた。でも、ストーカーはバレていない。
「どなたですか。」
「素敵な楽曲ね。どちらの国の言葉なのかしら。」
「どの国でもいいでしょ。盗み聞きなんてオサトガシレマスワヨ。」
そんな言葉この国には無い。それに歌っていたのは、なんと日本の歌謡曲だった。それも演歌だ。妹令嬢は笑いを抑えるのにかなりの努力が必要だった。
「お姉様、やっぱり彼女も転生者です。」
「確証は?」
「演歌を歌ってました。」
「演歌?」
「はい。演歌です。」
「こぶしは?」
「利いてません。」
「そう。彼女日本では、一体いくつだったのかしらね。」
「さあ~。」
そこで、姉からの提案だ。
「ねえ。あなた、飛び級して私と一緒に卒業しない?」
「めんどうですねえ~。でも、勝負は卒業パーティーでしょうから身近に見たいですねェ。」
「そうでしょう。卒業パーティーは、卒業生とパートナーだけだから、あなたと一緒なら心強いのよ。」
学院では、試験により飛び級を認めている。もちろん素行も加味される。
果たして、妹令嬢は?
本日、侯爵家の令嬢姉妹は、そろって卒業式を迎えていた。
「お姉様。ご卒業おめでとうございます。」
「ありがとう。あなたも卒業おめでとう。今日が勝負よ。期待していて。」
妹令嬢は見事飛び級を果たし、卒業パーティーの出席をものにしていた。
「証拠は、バッチリですか。」
「あなたのお陰でね。」
「殿下の使い込みは?」
「かなりの額がピンクブロンドに流れてたわ。証拠も揃えてあるわ。」
「ピンクブロンドの交友関係は?」
「それもバッチリ。裏もとったわ。全て順調よ。でも、あのピンクブロンドの手口、詐欺師になれるわ。プロよ、プロ。」
ピンクブロンド令嬢は、交友関係のグループの一人に絞り近づいていく。王子には逆らえないので、近くにいるが、「怖い。」と言って保護意識を刺激している。殿下に知られたら、大変なことになる。「誰にも言わないで。」口封じも上手い。
やはり、転生者か?
「何気に、お父様も燃えていましたけど。」
「苦労したのよ。証拠の資料を見せたって、家を継ぐのは、私かあなたの子供なんだから、『ドシッと構えてろ』って言うのよ。」
政略結婚があたり前の時代だ。そして、男中心の時代だ。父親の態度は理解できるのだが、
「それで、どうやって?」
「最後は、泣き落としよ。私たちに子供ができなかったら、どうするんだ。最悪、『あれの子を当主に』って、『王家が口をだすぞ』ってね。」
「絶対、そうなるわ。」
姉は、父では、埒が明かず、母親に助けを求めた。
「それにね。『我が家のお金でアレの愛人たちを養う』のかって、お母様が詰め寄ったら、わかってくれたわ。」
「それって、お母様の力なんじゃね。」
「その通りよ。言葉、乱れているわ。」
「はいはい。それで。」
「お母様、激おこでね。『あなたは、そういう方でしたの。娘の幸せを考えなさいませ。それに、あんな婿など、百害あって一利なしです。』最後はね『娘たちを連れて実家に帰らせていただいてもよろしいのよ』だって。」
母は強しである。
「さすが~。それで、お母様の実家帰りを阻止する為に燃えていると。」
「そうなの。ちょっと、斜め上の理由だけど、頑張ってくれるのなら、まぁ、いいかと。」
卒業パーティーの最中、第三王子が、
「私は、侯爵家令嬢との婚約を破棄する。」
突然のことで、会場は静まりかえる。だが、
「殿下、婚約は先ほど王家、当家の話し合いによって解消されております。どうぞ、お隣の男爵家令嬢との真実の愛を貫きください。応援しております。」
侯爵家令嬢姉妹は、そろって会場を後にした。
壇上では、殿下とピンクブロンド令嬢が、口をポカーンと開けアホさ全開で立ったままだった。
「お姉様。パーティー前に婚約解消してあったなんて、私にも教えてくださいませ。」
「ゴメンナサイね~。ちょっと事情があってね。」
時は、卒業パーティーの終了後の侯爵邸だ。
「お姉様。やりやがりましたね。
なぜ私がお姉様の冤罪を被らなければならないのです。それこそ冤罪です。」
何がどうなったのか、姉への冤罪は、全て妹がしでかしたことになっていた。それは、妹と王子とピンクブロンド令嬢以外、了承の事実となっていたのだ。
「そうね。冤罪の冤罪ね。でも、姉の為に蛮行を行った妹だってことになってるから、家の援助はできるように手配はしたわ。」
「あたりまえです。それより、蛮行とは何ですか。身に覚えがないわよ。」
「覚えがなくて、当たり前。冤罪だからね。」
「だから~。その冤罪の内容よ。」
「アホ王子とピンクブロンドが私に擦り付けようとした冤罪よ。」
「たとえば?」
「ピンクブロンドの教材やドレス等を破いた。お茶会に呼ばれなかっり、
無視した。噴水に突き飛ばした。あと、階段から突き落とした等々ね。」
「ぜ~んぶ、定番だあー。妹を売り飛ばしたなー。」
妹令嬢の叫びが木霊する。
「私は、我が家の為に、涙を吞んで実行したの。」
「事前におしえろー。だから、私に飛び級させたのですか。あんな前から。すっごい、腹黒。」
「お褒めの言葉としていただいておくわ。それに教えたら面白くないでしょ。
あと、言葉。」
こんな時でも、教育的指導が入る。指導を素直に受け入れる妹令嬢だった。
「はいはい。この計画はいつきまったのよー。」
「パーティーの前日よ。国王夫妻も交えてね。それに、あなたも飛び級で卒業なんだから支障ないでしょ。」
「支障出まくりです。お父様とお母様は?」
「ご存じよ。あなただったら、大丈夫ですって。」
「ハア、虐待だー。と喚いたところで後の祭りだわ。」
「今なら、何を喚いてもいいわよ。」
なんということか。王族、我が家族、総出で妹令嬢を生贄に事の鎮静化を図っていたのだ。両親まで、グルだったのだ。しかし、そこは転生者だ。事情が分かれば立ち直りは早い。
「フン、それで、私の報酬は?きっちり分捕ってくれたんでしょうね。お姉様の一人勝ちは許しませんよ。」
「あなたに用意していた持参金と隣国の領地よ。あなたの名前に変更済みよ。」
「それだけでは納得できません。」
こうなったら、親からでも、姉からでも、分捕れるだけ分捕ろうとの思いだ。
「そう言うと思って、あいつからの賠償金を折半でどう?」
表向きは、婚約解消だ。原因は、妹令嬢の蛮行だ。しかし原因は王子の浮気である。秘密裏に、王家から賠償金が支払われることになっている。さらに、妹令嬢の犠牲である。賠償金は、結構な金額になったはずだ。
「隣国の領地って?」
「昨年行った海辺の土地よ。
王妃様が持ち主だったから変更はすぐできたのよ。」
「なるほど。あそこですか。」
「どうする?王妃様の祖国だし、数年後に爵位も頂けるそうよ。」
そこまでして、馬鹿王子の失態を隠匿したいのか。まあ、王家の失墜にもつながるからか。
「なるほど、なるほど。王子の失態をそこまでして隠匿したいのですね。で、王子の処分は?それによって手を打ちましょう。前世でも今世でも、腹黒姉には敵いませんわ。」
前世でも、妹は姉には敵わなかった。勉強でも悪だくみでも。
「イヤーね。これでも、あなたのことは信頼もしているし、気にも掛けているのよ。王子は、真実の愛を貫いて、王族籍を捨てて、子爵としてピンクブロンドと一緒に僻地の領地行きよ。ピンクブロンドが付いてくかは知らないけれど。」
「わかりました。私だって、姉妹としての情はあります。付いていかないでしょうね。で、私の身分はどうなるの。」
「別人になってもいいわよ。その手配もできるけど。」
貴族の身分を捨てるのも悪くはない。しかし、今日まで貴族としての特権を安寿してきたのだ。そうそう捨てられる物でもない。別人になったら、どうなるのか。
「そうすると、学院の卒業もお姉様の妹ってこともなくなりますね。」
「何、その笑顔。イヤな予感が・・・。」
「さす姉。縁を切るつもりはありません。堂々と隣国へ乗り込みます。」
「では、姉思いの素行の悪い妹を最大限の援助で追放したってことでよろしいかしら。」
隣国だ。自分の土地で自由に生きるのは魅力的だ。でも、お金も身分も大事。
「なんとでもどうぞ。でも、あっちに行った途端、暗殺されるなんて嫌よ。」
「それも、手を打ってあるわ。抜かりはないわよ。あなたが犠牲になって保たれた王家のメンツよ。お父様やお母様が許すはずが無いでしょ。」
「では、安心して侯爵家の名を利用させてもらいます。」
「ほどほどにしてよ。」
冤罪、上等よ。とことん利用させてもらおう。それに、あっちでは、教育的指導が入ることは無い。
「フフフ。あそこか~。楽しまなくちゃ。海辺だと海鮮よね。
出国の準備は、お姉様、よろしく~。」
「あなたは、なにするのよ。」
「お父様とお母様に泣きついてあれこれね。頑張らなくちゃ。おとうさま~~~。おかあさま~~~。」
妹令嬢の犠牲で成り立った王族と侯爵家の調停だ。あの姉が、婚約破棄だけで納得するはずが無い。侯爵の父親もそうだ。絶対、侯爵家に有利なことがあるはずだ。でも、妹令嬢はそこには突っ込みを入れない。
「無知なふりして、親の罪悪感を利用して、最大限以上の支援をもぎ取ってやるわ。私は、泣き寝入りもしないし、ただでは起きないわよ。」
腹黒姉妹は、自分こそが一番うまくことを運んだと心の中で自負していた。
読んでいただいて、ありがとうございます。




