第八話 A級最難関ダンジョン、深層500km
人間災害に認定されてから一週間。
私は工房に閉じこもり、武器のメンテナンスに勤しんでいました。
そして毎日ギルドに顔を出してはすぐ帰る日々。
ギルドには私に提供される依頼がなかったのです。
私はそれでも諦めずに毎日ギルドに通っていました。
そんなある日のこと。
私がギルドに近づくと、冒険者たちは一歩後ずさりします。
私のフルアーマーウェポンシステムは日頃収納形態になっていますが
それでも登山用のリュックサックよりもでかいため、
嫌でも目立ってしまいます。
ドシドシと足音を立ててギルドの入口に行くと
そこには金髪縦ロールに、深紅のフルプレート、そして漆黒の大剣を携える少女。
ブリジットがそこに立っていました。
「よぉ。相変わらずみたいだな」
「まぁ……仕方ないですね」
私は苦笑いしつつ、頬を指先で掻きました。
すると彼女はニヤッと笑いました。
「喜べ、今日は仕事があるみたいだぞ」
私は嬉しさに頬が緩んでしまいました。
「本当ですか!?」
「ああ、早速中に入ろうぜ」
彼女は親指を立ててギルドの扉を指さしました。
……今日こそ新しい依頼が!
私は踊りたくなるような気持ちを胸に、ギルドの扉を開きました。
私とブリジットはまっすぐ受付嬢のところまで歩いていくと
既に1枚の依頼書がテーブルの上に置かれていました。
「あの……依頼があると聞いたんですけど」
「はい、ギルドからの直接の依頼となります。
まずは依頼書をご覧になってください」
そういうと彼女は私に依頼書を手渡しました。
ブリジットはカウンターを背もたれに寄りかかっていた。
依頼内容はダンジョンの攻略、難易度はAランク。
具体的な内容は、ダンジョン最深部への到達とその場所の確認。
……それ以外は何も書かれていなかった。
「随分アバウトな内容ですね、その他何か情報はないのですか?」
「深層ダンジョン……」
ブリジットがぼそっとこぼすように言った。
続けるように受付嬢が答えた。
「このダンジョンの通称は深層ダンジョン。
現存するダンジョンの中でも最も深いダンジョンと言われてます」
「最も深い? 誰かが到達して測ったのですか?」
「いえ、最深部への到達者はいません。
ただ最も奥に到達した冒険者の記録が既に他のダンジョンより
圧倒的に深いため、そう言われています」
深いダンジョン……今までは浅いダンジョンしか潜ったことがなかった。
それに高難易度は遺跡しか経験がない。
深く潜るのは初めてだった。
「具体的にはどのぐらい深いのですか?」
「わかりません……その冒険者は100km地点まで潜ったそうですが
探知魔法を使った所、少なくともあと300kmはあるのでは無いかとの話です」
最低でも400km。
あまりにも深い。
ただ普通に歩くだけでも400kmともなれば疲弊してしまいますし
何日もかけないとならない……。
「ちなみにこの依頼については途中報酬も支払われます。
未到達エリアをどこまで開拓したかに応じて支払いが行われますので
危険だと判断した場合、すぐに戻るようにしてください」
かなり危険な依頼……。
しかし隣りにいたブリジットはニヤリと口元を歪めると言った。
「どのみち他の依頼はない。受けるんだろ?」
「はい、受けます、お願い致します!」
すると受付嬢はちょっとだけ目を逸らして言った。
「なお、このダンジョンの堅牢性は一切不明です。
倒壊は脱出不能になる危険があります。
細心の注意を払ってください」
するとブリジットが私の顔にぶつかるほど顔を近づけてきて言った。
「俺も連れてけよ、報酬は半分でいいぜ」
「うーん、足手まとい……」
その言葉に彼女は烈火のごとく怒った。
「なんだと!」
「だってブリジットさん、400km歩けますか?」
「……まぁゆっくり行けばいいんじゃないか?」
「そうは行きません、400kmもある暗闇の中を、警戒しながらの冒険です。
ゆっくりしていれば食料が尽きてしまう可能性もあります」
すると私たちの間に割って入るように受付嬢が口を挟んだ。
「お言葉ですがココアさん、今回のダンジョンは
どのような危険があるかわかりません。
強力なモンスターがいた場合
貴方の武器はダンジョン崩壊のリスクが大きすぎます。
彼女を連れて行くのは悪くない判断かと思います」
そういうと彼女は部屋の奥に引っ込んでしまった。
「じゃあ、ブリジットさん、よろしくお願いいたします」
「おう、任せとけ」
私は一抹の不安を覚えつつ、深層ダンジョンへ挑むことになったのです。




