第五話 可愛い女の子なのに雇用費用が何かオカシイ
これはココアがギルドの傭兵に登録した時のお話……
ある1人の戦士がギルドに現れた。
彼が入った瞬間、ギルドの雰囲気が変わった。
鎧にあるのは無数の傷跡。
彼の顔にもいくつかの古傷があり
歴戦の兵であることは誰の目から見ても明らかだった。
ジェノス。
彼は最難関ダンジョンですら常にソロで活動する猛者として
冒険者の間で知らないものはいないとされる人物だった。
受付嬢のもとに向かうジェノス。
すると受付嬢は黙って3枚の依頼書を提示した。
全ての難易度認定はA級とされていた。
いずれもが破格の報酬。
一般の冒険者が迂闊に手を出せば命を落としかねない依頼。
彼は――その中で一番難易度が高く、報酬が高い依頼書を手に取る。
「ジェノス様」
受付嬢は静かに言った。
「その村を制圧したモンスター群の討伐ですが
敵の数は強大、加えて多数の凶悪なモンスターが確認されております」
「それで?」
彼の目が鋭く光る。
彼は見定めている。
受付嬢は続けた。
「今回は傭兵を雇用しては如何でしょうか?」
そう言うと彼女は傭兵のリストを彼に手渡した。
いずれもがこの難易度に相応しい人物たち。
「ふむ……弾除けぐらいになってくれればいいのだが」
彼はそう言いつつ、真剣に1人ずつ吟味していく。
ペラ……ペラ……ちゃんと一枚一枚読んでいく。
そんなとき、初めて彼の手が止まった。
「おい、こいつだが……」
それを見ると受付嬢の表情が引きつった。
「そ、その冒険者が気になりましたか?」
すると少しだけ彼は憤った口調で語りかけた。
「何だこのふざけた依頼金額は。
今回の依頼の報酬額の七割だと?」
彼はそういいながらもその情報を目で追った。
冒険者歴は浅い、経験値は不足している。
ステータスは筋力技量ともに最底辺。
異質なのは銃器スキルを全て取得していること
そして何よりも持久力のステータスがカンストしている。
記載事項で読み取れる内容は以上であった。
「その冒険者は、一応リストに入れましたが
正直お薦めはいたしかねます……」
「わかった、こいつを連れて行く」
「そうですよね……っえ?」
ジェノスは紙にメモをし、受付嬢に言った。
「この時刻、この場所で集合だと伝えてくれ」
そう言い残すと彼は足早にギルドを立ち去った。
そして約束の時刻。
午後5時。
まだ辺りはかすかに明るい。
ジェノスは村全体を見渡せる高台を集合場所にしていた。
そこにドスドスと足音を立ててココアは現れた。
「お、おまたせしました!
ココアです、よろしくお願いします」
すると彼はココアを舐めるように一瞥した。
「貴様、武器はどうした?」
彼は一本のブロードソードを鞘から取り出した。
一方ココアはバックパックのボタンを押した。
30cmキャノン2門。
火炎放射器、レールガン、軽機関銃2門、ミサイルポッドが展開される。
「ジェノスさんこそ、その剣一本で大丈夫ですか?」
ジェノスはその様子を静かに見守っていたが
静かに自分の剣を鞘に納めた。
「ガンナーとの連携は初めてだったが
狙撃のようなものをイメージしていた。
作戦を変更する。お前がまず村を蹂躙するモンスターを
その圧倒的物量で焼き尽くせ。
残った残党は私が始末する」
「わかりました!」
二人は夜が更け、モンスター達が進行してくるのを待っていた。
そして日は完全に沈み、月のみが辺りを照らしていた。
そのうち、村中を包囲するように松明の明かりが灯り始めた。
「アレがモンスターたちだ。
今日は村人は全員退避させてある。
遠慮なくぶちかませ。
……なるべく村の建造物は破損させるな」
「わかりました……」
ココアは大きく深呼吸すると弾薬を焼夷榴弾に変更した。
「いくぞおらぁああああああああああああ!」
彼女の30cmキャノンが火を吹いた。
ひゅううううううう!
射程が長いため、弾薬が空気を裂く音とともに飛んでいく。
着弾とともに周囲は火の海となり
モンスターたちが焼けていく。
一際でかいモンスターが目に入った。
彼女のレールガンが火花を散らす。
瞬間、マッハ7の弾丸が巨大なオークの胴体を貫き、木っ端微塵に消し飛んだ。
その後はただの虐殺であった。
モンスターとともに崩落する村の建物。
「……火力は間違いなく一線級だな」
翌日、ジェノスはギルドで報酬を受け取っていた。
報酬は元の金額の1/10だった。
雇用費用に加えて村の損壊ペナルティが加算されていた。
「差し引きされた金額はこのとおりとなります」
そう言って机に並べた金貨数枚を袋に入れて
受付嬢は彼にそれを手渡した。
彼は静かに笑うとギルドを去った。




