第二十九話 鬼教官ココア
今日の依頼書はこれまた変わった内容でした。
「新人冒険者の教育?」
私はつい声に出してしまいました。
任務ランクはBランク。
「そもそも私が受けれない依頼ですよね?」
「本来ならそうなのですが……」
どうにも煮えきらない様子の受付嬢さん。
そんな様子にブリジットちゃんは言う。
「ギルドはそんなにそこらじゅうで
大爆発を起こしてほしいのか?」
「失礼ですね、そんなにそこらじゅうでは
爆発してないですよ!」
「普通のやつは爆発しないから」
ぐぬぬと思いつつも受付嬢の話を聞くことに。
「既にご存知だとは思いますがガンナーは
とても不人気な職業でして……」
「お金がとんでもなくかかりますからね!」
「ドヤ顔でいうことじゃないだろ……」
コホンと咳払いをする受付嬢。
私たちは話を聞く。
「ギルドとしては教育者の著しい不足が
原因にあるのではないかとの結論に達しました。
そのため、ガンナーのスキルツリーを伸ばしてる
高ランク冒険者に白羽の矢が立ったという訳です」
ついに私の時代が来た!
私は胸を張りました。
「いやだからなんでお前そんなに嬉しそうなの」
「全人類はもっと銃の素晴らしさを知るべきです!」
「という訳で志望者は約20名ほどですが
この依頼を受けますか?
教育期間は一週間。
報酬は金貨1枚となってます」
「受けます!」
私は即断した。
「やれやれ、どうなることやら……」
「全員素晴らしい兵士として叩き上げてみせます!」
こうして私はガンナー仲間を増やすべく
使命に燃えていたのでした。
そしてその日の朝5時
集合の時間になりました。
皆眠そうに目をこすっています。
……たるんでいる!
私は上空に向けて機関銃を乱射しました!
「貴様ら、朝から弛んでるんじゃない! ぶち殺すぞ!」
……いけない。つい引き金を引くと気分が高ぶってしまう。
しかし20名の受講者達はそれに威圧されたのか
厳粛な空気があたりを包んだ。
「では、今回教官を務めさせてもらうココアです。
皆さんよろしくお願いします」
すると辺りはざわつき始めた。
「本物のダンジョンブレイカーだ……」
「EランクからSに飛び級したらしいぞ」
しかし私も教育と言っても何をするべきか。
いまいちよくわかりませんでした。
すると1人の生徒が手を上げた。
「はい、どうしました?」
「あの、先生はダンジョンを100個破壊したと
聞きましたが本当でしょうか!」
……とんでもない誤解が広がっているようです。
「そんなに破壊してないです!
せいぜい10個ぐらいです」
おおおおおっとどよめきが上がる。
「余計なことは考えなくてよろしいです!
貴方達は弛んでいます。
決めました、今日から貴方達は7日間
行軍をしてもらいます!」
すると生徒たちは再びざわめき始めた。
一人の生徒が手を上げて言う。
「先生、私たちはガンナーです。
銃の腕前を上げるべきではないのですか?」
もっともらしい指摘。
でも私はそれを切り捨てた。
「そんな物は自分でやればいいのです。
貴方は行軍を舐めてませんか!?」
「いや……舐めてはいないですが……」
困惑した瞳。
私は全ての生徒に行軍の大切さを教えるべく
声を上げた!
「いいですか! そもそも全ての冒険者は
倒れたらそこで死ぬんです!
逆に言えば倒れなければ生き延びられる!
そのためにも基礎体力は全てにおいて優先されるのです。
今から皆さんには毎日50kmほど走ってもらいます」
ざわついた声が広がる。
そんな喧騒を無視して全員にマスケット銃を配布した。
「これを持って走ってもらう」
「こんな荷物までもって50kmなんて無理です!」
「いいから黙って走る!」
私が火炎放射器をぶちまけると
生徒たちは怯えるように走り出しました。
10km地点。
一人の生徒がしゃがみ込んでしまった。
「はぁ……はぁ……もう無理です」
「あと40km、まだ行ける!」
私は彼のマスケット銃をもち、肩を貸すと言った。
「必ず全員で50km到達する!」
……結局私は2人ほど担ぎ、4人分のマスケット銃をもって
50km地点まで到達した。
もちろんいつもの装備は装着したままだ。
幸い脱落者はでなかった。
「みんな、これで如何に体力が大事か
解ってくれたと思う! 今日は休憩して明日に備えましょう!」
皆疲労困憊ながら、達成感を感じてくれているようだ。
そう思って、その日私は眠りについた。
翌朝。
そこには誰もいなかった。
「なんでぇ?!」
後ほど、ギルドからは正式に報酬が支払われたが
「やりすぎだ」と怒られたのであった。




