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第二十四話 ものまね師

俺は人さらい専門の裏稼業で生計を立てている。


誘拐を専業にしてるものは少ない。

リスクとリターンが見合っていないからだ。


選ぶ理由はある。

盗みや強盗などは簡単だ。


生きるための椅子取りゲーム。

その席を1つだけ余分に確保できる。




今日も俺は幼い少女を1人誘拐した。

意外とやることは単純だ。


手頃な標的を見つけたら拉致る。

その子を縛り付けて、ダンジョンの中に放り投げておく。


その後に身代金を要求してダンジョン内で取引を行う。

ただそれだけの話だ……。




―――――





今日も元気に私は冒険者ギルドに向かいます。

最近は依頼が少ないもののSランク任務がもらえるようになったので

つい笑顔がこぼれてしまいそうになりながらも

スキップしながら冒険者ギルドに向かっていました。


一方、ブリジットちゃんは大剣を

いつものように引きずりながら歩いています。


「お前その装備でよくスキップなんてできるな」

「ブリジットちゃんこそその大剣、車輪でもつけたらどうですか?」

「そんなカッコ悪いもんつけれるか!」




こうしていつも通り冒険者ギルドにたどり着くと

こころなしかいつもよりギルドがざわついてる気がしました。


私はいつも通り受付に行くと、

今日の依頼がなにかないか尋ねました。


「本日はSランク任務、緊急依頼が発生しています」


そう言うと彼女は私に一枚の手配書と

一枚の依頼書を交互に差し出してきました。


依頼任務は人質救出作戦、ならびに犯人の逮捕か殺害。

そして犯人の手配書は、凶悪そうな顔の絵が書かれており

名前には「ものまね師 ジェスパー」と書かれていた。


その手配書をブリジットちゃんは見ると複雑そうな顔をしていった。


「おまえ、この依頼受けるのか?」


「ブリジットちゃんはあまり乗り気じゃなさそうですね」


その時気がつきました。

ギルド内の温度が全体的に冷たい。


「ジェスパー、S級案件ってことはあいつ、S級認定されたのか?」


ブリジットちゃんは尋ねると、受付嬢は

首を縦に振り言いました。


「先日起きた人質事件、

 それ以前から彼は何度も人質事件を起こしていました。

 ギルドとしてもこれ以上彼を放置するのは目に余るとのことです」


「その……知り合いなんですか?」


そういうと、ブリジットちゃんは短く


「ああ」


とだけ返してきました。


私は受付嬢に言いました。


「わかりました、受けます!」

「悪いけど俺はパスだわ」

「いいえ、一緒に行ってもらいます!」

「なんでだよ!」




そんなこんなで私たちはどこにいくでもなく、

町中を歩いていました。


「ジェスパーは、馬鹿な奴でな。

 貧民街の子どもたちに金を配って歩いてるんだよ。

 ……そんな事しても誰も報われないのにな」


「正しいことのためになら何をしても許されるわけでは……」


スパンッ!!


ブリジットちゃんの大剣が私の目の前に叩き落とされました。


「んなこたぁ、言われなくても全員わかってるんだよ」


いつも以上にブリジットちゃんの視線は鋭く、

そして泣きそうな瞳をしていました。


「ならば殊更私たちがいかないとなりません。

 この手配書、生死を問わずとあります。

 ジェスパーさん、殺したくはないのでしょう?」


「……まぁそれもそうだが、あいつを殺すなんて

 俺には想像できない話ではあるんだけどな」


「なら他の冒険者にまかせますか?」


ブリジットちゃんは顔を拭って答えた。


「まぁそうだな、他のやつに任せる……

 よりは俺が行ったほうが納得できる……」




私とブリジットちゃんは、約束された人質交換の場に

行くことになりました。




―――――




交渉の予定時刻。

そこには二人の小柄な女子が二人。

しかし各々がその体格には似つかわしくない武器を

携えていた。


1人は最近噂のダンジョンブレイカーといわれる人物か。

もう1人は……かつて自分が養った女の子。


「なるほど、交渉は決裂というわけか」


「それだけじゃねぇ、あんた、S級認定された。

 このままじゃ殺されるぞ」


私は口元の口角をあげて自嘲気味に笑うと言った。


「お前なら私を止められるとでも?」


「……」


彼女の心意気はわかる。

大方、得体のしれない連中に始末されるぐらいなら。

とでも言ったところだろうか。



彼女は黙って弾丸のようにその体を走らせてきた。

私は目の前に彼女と同じ大剣を顕現させ

彼女と同じ剣筋をトレースした。


全く同じ動きのトレース。

私自身が体を振る必要はない。

私がものまね師と言われる所以。


激しい彼女の剣戟も、私にとっては大きな負担はない。




そのときだった。

ブリジットは大きく後退すると選手交代と言わんばかりに

ダンジョンブレイカーが私の前に立った。


そう、私は物量に物を言わせてくるタイプが苦手。

彼女もそれをわきまえているのだろう。


私は模倣した大剣を打ち捨てて、宙空に彼女の両手と同じ

ガトリングガンを作り出した。


私は寸分違わず、弾丸を弾丸で弾き返した。





―――――






「あ、あの人やってることがおかしいですよ!?」


私はうろたえて声を上げた。

ガトリングガンの弾丸の弾道が全部一致するなんてあり得ない。

物理的には狙っても不可能なことだ。


「見た目に惑わされるな、あいつがやってるのは魔法だ。

 魔法なら何でもありだと思え!」


理屈では理解できても現象として目の当たりにすると

あまりにも異常な光景だった。


私は左右腕部、脚部すべてのガトリングガンを撃ち尽くしたが

その悉くを相殺されてしまった。


ブリジットちゃんが叫ぶ!


「休ませるな!」


私はその言葉に機関銃2門を取り出し、

彼に向かって銃撃を開始する。


しかし、再び虚空から現れる機関銃が彼を護り、全ての銃弾を弾いていく!


あっという間に全弾打ち切り。

目の前にいる男性は疲労の色こそ感じるものの

まだへばってはいない。


「ココア! どんどん次いけ!」


この戦い、ブリジットちゃんはあまり力になれないと言っていた。

彼の欠点は必ず同じ武器で相殺しなければならない縛りがあるということ

だから魔法使いやガンナーが相手をしなければ相手を消費させられない。


私はミサイルポッドを全弾発射した!

彼の後ろからも同様の形状のミサイルポッドが現れる。

やはり結果は同じ、全てが迎撃される。


もう残りは少ない。私は30cmキャノンを彼に向けた。

彼の後方からは同様に30cmキャノンが顔を覗かせる。


焼夷弾や徹甲榴弾は使えない。

人質はおろか自分たちも巻き添えになる。

私は徹甲弾をセットする。

対面の30cmキャノンも弾薬が装填される音がする。


凄まじい轟音とともに弾が発射される。

タイミング、角度ともに完全に同じタイミングだった。


キイイイイイイイイイイインという炸裂音とともに

徹甲弾はグシャグシャになって叩き落された。


私は間髪入れずに徹甲弾をリロードする。

彼の背面にある30cmキャノンも弾薬が装填される音がした。


一方で彼の顔を見ると、大量の汗を流しており

あからさまに顔色が良くなかった。


「ジェスパーさん、もうやめませんか」


そういうと彼は笑っていった。


「自分が有利だと勘違いしているのか?

 俺はもうお前と同じ弾を『装填』しているぞ。

 お前が撃たなければ俺が撃つ、それだけだ!」


私は咄嗟に30cmキャノンを発射した。


1度目の再来。

2度目も弾は迎撃された。


彼は半分目を閉じており、顔は真っ青で、

汗が滝のように流れていた。


私はレールガンを彼に向けていった。


「貴方の負けです、大人しく投降してください」


彼はもうおそらく魔力切れだ。

しかし後方にレールガンが形作られようとしていた。


「もう十分だろ、ジェスパー」


そのレールガンは凄まじい勢いで

突進したブリジットちゃんの大剣によってへし折られた。


「まいった。わかったよ、投降する」






―――――





私はギルドに連行された後、逮捕され牢屋にぶち込まれた。

誘拐罪は罪が重い。

死ぬまで外に出れない可能性は高いだろう。


そんな私のところに深紅のフルプレートに身を包んだ

小柄な少女が訪れた。


「剣士や魔法使いなら負けない自信があったんだがね。

 ガンナーとはまた珍しい人物に目をつけたものだ」


「別に勝算があって連れてきたわけじゃねぇよ。

 腐れ縁でつるんでるだけだ」


「その物言いもまた君らしい」


彼女は私が一番最初に見かけた

貧民街で路頭に迷っていた女の子だった。


たくましく育ったものだ。


私はその在り方を見届けたあと、ゆっくりと目を閉じた。


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