第十八話 消耗戦
二人が通り過ぎたあとにはモンスターが蹴散らされ
道筋が出来ているようでした。
私は慎重に30cmキャノンの徹甲弾の狙いを定めようとしていました。
目標は1つ目の巨体であるサイクロプス。
しかしなかなか照準が合いません。
元より標的を狙って撃つ事を想定していませんでした。
下手に撃てばジェノスさんやブリジットちゃんに当たってしまいます。
それでも急がなければなりません。
私は徹甲弾を発射しました!
強烈な轟音。空気を切り裂くその音は一直線にサイクロプスにまで飛んでいき
その奥にいるゴブリンをミンチにしていました。
外した?!
私は冷や汗をかいていました。
こんなに高揚感のない射撃は初めてでした。
手は冷え切っている。
その時でした!
「た、助けてくれ! だ、誰かぁああ!」
モンスターの群れは既に目の前まで進行してきていたのです。
私は咄嗟に軽機関銃をとりだして、ゴブリン達の群れを一掃しました。
しかし、撃っても撃っても、敵の足取りは止まりません。
弾薬切れ。
予備の弾薬を装填しているその瞬間にも敵はどんどん近づいてきます。
慌てて機関銃の弾を再び装填すると私は再び近寄るモンスターたちを
押し返しましたが、いくら撃っても減らないモンスターたち。
その瞬間でした、弾が残っているのに機関銃は停止しました。
気がつけば銃身は真っ赤に染まっていました。
機関銃はもうダメだ……私は機関銃と30cmキャノンをパージし
火炎放射器を取り出しました。
しかしいつものような高揚感はありません。
手が冷たい、体も凍てつくように冷えている。
心臓はこんなにも高鳴っているのに。
火炎放射器は次々とゴブリンの群れを焼き払っていきました。
ジェノスさんの残してくれた後衛部隊の方々も息を合わせるように
追い打ちをかけていましたが、それでも足が止まることはありませんでした。
そのうち、火炎放射器の火が弱まっていき、停止しました。
燃料切れ……私はこれもパージしました。
残っているのは虎の子レールガン。
もはや前線維持は不可能、ジェノスさんとブリジットちゃんが間に合うかどうか。
しかし、私がレールガンを向けようとした時、
彼らの姿はモンスターに埋め尽くされていました。
これでは狙うどころではない!
そのときでした。
「ココアさん、少しだけ横に」
そこには地面に倒れたままのコウキンさんが
右指に小さな火球を灯していました。
私は咄嗟に横に飛び退くと、その火球は
ジェノスさんたちの方に飛んでいきました!
着弾と同時にその火球はいきなり爆発し
ジェノスさんたちまでの道を一気に切り開きました。
「さあ、今度こそ私のMPは空っぽだ。
やるなら急ぎたまえ」
再びレールガンの照準を合わせる。
弾数はそれなりにあるけど、レールガンは砲身がすぐ駄目になる。
一発も外せない。
そんな時だった、隣に何故かジェノスさんが戻ってきた。
「え、どうして……」
「前線はブリジットに任せた。いいか、よく聞け」
「は、はい」
私はレールガンを構えつつ、ジェノスさんを見つめた。
彼は望遠鏡で状況を確認したあとに言った。
「方角はそのまま12時方向でいい、誤差修正。
上に3度、左に6度修正だ」
そんな精密な修正は私には出来ない!
感覚で修正すると、私は発射した!
マッハを超えるその空気を打ち破る爆発音にも似た音は
まっすぐ飛んでいき、巨大なゴーレムの片腕を吹き飛ばしたのが見えた。
「外れだ、すぐに次の準備をしろ!」
「は、はい!」
私はリロードをすると、レールガンの状態を確認する。
大丈夫、まだ撃てる。けどあと何回撃てるか。
「次こそ当てろ、照準はあのゴーレムの中央のコアだ。
おそらくアレを破壊すれば停止する。
ブリジットは単騎決戦型の剣士だ。
時間はない」
私は再びレールガンをゴーレムに向ける。
引き金を弾く指が氷のようだ。
「誤差修正、下に1度、左に2度……
よしそこだ、撃て!」
私は引き絞るように引き金を引いた!
再びの轟音、その瞬間でした。
弾丸はゴーレムのど真ん中を貫き、何かが砕け散るような音とともに
ゴーレムは崩壊しました。
その直後でした……モンスターたちは
急に踵を返すように、一斉に後退していきました。
私はため息を付くと、その場にしゃがみ込んでしまいました。
「よくやった。今日のお前は制御されていた。
よし、撤収するぞ!」
そう言うと、ジェノスさんの部隊は撤退していった。
しばらくすると、がに股でドスドスと
大剣を引きずりながらブリジットちゃんが歩いてくる。
「おいてめぇ……俺ごと消し飛ばす気か!」
怒りながらも彼女の息が上がっているのがわかる。
「す、すみません、ジェノスさんの言われた通りに撃ったので……
私も無我夢中でして!!!」
「ったく、まぁなんとかなったし良しとするか。
ギルドからはたんまり報酬が貰えそうだしな!」
「久しぶりに乾パンを卒業出来そうですね!」
「ああ、そんなしけたもんじゃなくて肉を食いに行こうぜ!」
久しぶりの任務達成に心を踊らせて私たちは街に戻りました。




