第十五話 似た者同士
「Sランクの依頼です、本日の依頼主は保険会社さんからですね」
あっけらかんとした様子で語るギルドの受付嬢。
しかしその依頼書の内容は、重い。
依頼内容:
古代遺跡の暴走によるモンスターの異常発生への対応。
モンスター数は最低でも100以上、1000体以上も考えられる。
放置すれば明日には近くの都市が壊滅すると想定される。
本日中に現地に到着できる冒険者は至急応援を願う。
成功報酬 成功報酬のみ 金貨100枚
参加者全員に等しく支払われる。
「全員に金貨100枚ってすごいですね。豪邸が立ちますよ?」
「そのぐらいピンチってことですね!」
謎にテンションが軽い受付嬢に戸惑いつつ言う。
「Aランクの方々には依頼は出してないのですか?」
「既に発行済みです、対応していただいている冒険者はいますが
足止めすら出来ていないため、範囲を拡大した。と理解していただければ」
Aランク冒険者が処理できないほどということは
猫の手でも借りたいということでしょうか。
「ちなみに今日はSランク冒険者さんの依頼ですので
同行者をご紹介いたします。範囲殲滅魔法の第一人者
コウキンさんです」
紹介された男性は、整った顔立ちに利発そうな雰囲気。
そしてそれには不釣り合いな両手に繋がれた手錠。
「げっ、コウキンじゃん!」
隣りにいたブリジットちゃんが心底嫌そうな顔をしている。
彼は澄んだ声で私に語りかけた。
「これはこれは、最近『ダンジョンブレイカー』と有名な
ココアさんですね。久しぶりに同類がいたかと
出会うのを楽しみにしていました」
同類……複雑な響きですね。
ブリジットちゃんの表情も気になりますが。
「コウキン、お前まだ牢屋にぶち込まれてなかったのかよ。
はやく逮捕されて一生牢獄で過ごしておけよ」
「これは大層嫌われたものですね。
ちょっとばかし、後ろからファイアーボールを撃っただけなのに」
ファイアーボール。
火炎系魔法使いの初期ツリーにある魔法。
ある意味初歩中の初歩。
「……もしや、後ろから狙われたとか?!」
「ある意味狙われた、というかこいつのファイアーボールは
ファイアーボールじゃない!
モンスターと殴り合ってた俺が消し飛ばされるところだったんだぞ!」
一体どんなファイアーボールなんだ!
気になる……。
「ふふ、貴方ほどの方があの程度の魔法を避けられないわけがない。
全ては計算済みでのことですよ」
「バカ野郎! 半径10mが消し飛ぶ魔法は避けれるとか
そういう問題じゃないだろうが!」
なるほど……。
周りの被害を顧みない方なんですね。
しかも理性的な顔をしているのに、冷静に狂ってますね。
「ちなみにココア、お前自分は関係ないみたいな顔してるが
お前も限りなく同類だからな?」
「なんですか! 私はいきなり半径10mも消し飛ばしたりしませんよ!」
「ダンジョンごと崩壊させてるのはもっと悪いわ!」
「ぐぬぬ!」
するとコウキンさんは手錠で繋がれた手を差し伸ばしてきた。
「同じSランク同士、仲良くしましょう」
私はその手に触れて握手した。
「しかし何故手錠されてるんですか?」
「ああ、これは僕の魔力を制限しているんだ。
依頼がないときは常につけているようにとギルドから拘束されている」
すると受付嬢は一本の鍵を渡してきた。
「それがコウキンさんの手錠の鍵です。
無くさないようにしてくださいね。
それと、依頼までは外さないように。
何かあった場合、ココアさんも共犯者として
逮捕される可能性があります」
ごくり、と私は息を呑む。
鍵を手に掴むと私はコウキンさんがちょっとだけ怖くなった。
するとコウキンさんは爽やかな笑顔で言った。
「心配することはない、僕もやりすぎることがあるのは自覚している。
だがダンジョンを吹き飛ばしたことはない。
君より冷静だから安心してくれ」
全く慰めにもなっていない一言を貰って
私は複雑な心境でした。




