第十二話 物理耐性スライムと弾丸少女
きっかけはブリジットちゃんの持ってきた依頼書だった。
その書面はいつものギルドの依頼書とは雛形が違う。
私が疑問に思いつつ中身を見ると、彼女は言った。
「それは俺の古巣の依頼書だ、北方領域、ここから馬車で7日ぐらいかかる。
だからお前がブラックリスト入りしてもいない」
文章を読む。
依頼主は北方傭兵騎士団。
依頼内容はダンジョンの手前で道を塞ぐ
プラチナスライムの討伐。
注意事項、最深部のモンスターは討伐しないこと。
「不思議な依頼書ですね。
一番奥のモンスターは退治しなくていいんですか?」
すると彼女は馬鹿にするように言った。
「本当はそいつらが請け負った依頼なんだよ。
ただ彼奴等、基本的に物理職の集まりだからな。
スライム系の大型モンスターは手に負えないってことだ。
要するにこの依頼はそいつらのお膳立てだよ」
「なら、魔法使いの人が倒しに行けばいいんじゃないですか?」
「お前の言うことは至極真っ当。
だけどメンツが大事すぎて北方領域の人間には意地でも頼みたくないんだよ。
おまけにプラチナスライム、強力な電撃を飛ばしてくる
なかなかに厄介なモンスターだ、わざわざ遠くまで出向いて
倒すやつなんていないんだよ」
依頼報酬は金貨10枚。
けして安くはないけれども、遠出して、リスクも高いとなると
あまり普通は手を出したくない案件。
「でもどうせお前暇だろ、付き合えよ」
「どうせって失礼ですね!」
「あーせっかく依頼持ってきたのにそんな事言うなら仕方ねぇなぁ。
じゃあ適当に誰か雇っていくとするか……」
「あーわかりましたよ! 行きますよ!」
「そうこなきゃな」
という訳で私とブリジットちゃんは馬車に揺られること7日。
北方領域に到達しました。
いつもの景色と違い、どことなく寂しげで
こころなしか気温が低い。
「そういえばなんで私を誘ったんですか?」
「なんでってことはないだろ。仕事もどうせないだろ?」
「いや、そういうことではなくてですね」
「じゃあなんだよ?」
「私も物理攻撃しか出来ないですけど、大丈夫ですか?」
「……」
「もしかして何も考えてなかった?」
「まぁ、なるようになるだろ」
不安だけが残った。
私たちの目の前には、鍛え抜かれた体を持つ
金属製の鎧を身にまとった男たちに囲まれていた。
「久しいな、ブリジットよ、剣の腕は鈍っておらぬか?」
「余計なお世話だダリル、スライム如きに手間取ってるやつが偉そうに」
「おい、口が悪いぞお前!」
「構わぬ、口うるさいのが嫌で出ていった女だ。
それがなければ時期団長の座も……」
「御託はいい、状況を説明しろ」
「……わかった、ついてこい」
ダリルと呼ばれた騎士に私たち二人はついて行った。
招かれた先にはダンジョンの入口がポッカリと空いていた。
既に入口には20名近くの団員と思わしき人々が立っている。
入口に立っていた、一際大柄な男性がでかい声で言った。
「ブリジット殿! お久しぶりでございます!
また共に仕事ができる事、嬉しく思いますぞ!」
「サイモン、うるさいぞ」
「ブリジットちゃん、人望あるんですね」
「人望? そんなものはない。あるのは強さだ。
強いやつが偉い。ただそれだけだ」
「またまた何を仰るか。えっと……」
サイモンと呼ばれた男性は私を見て戸惑っていた。
「ココアと申します、よろしくお願いいたします!」
「おお、ココア殿、こちらこそ、何卒よろしくお願いいたします!」
「おーい、挨拶はそこら辺にしてさっさと行こうぜ」
私たちはダンジョンの中へと足を踏み入れた。
中はダンジョンとは思えないほどだった。
通路にはランタンがかけられており、足元も整備されている。
歩いていく道中、ダリルさんに私は話しかけられた。
「その……ブリジットからは頼れると聞いているのですが……」
なにか歯切れの悪い物言いだった。
「なんだよ、俺の紹介が気に入らないのか?」
「いや、それが問題ではない、ただな、ココア殿については噂がな」
「……」
私は努めて笑顔でいたが、どうせ碌でもない噂なのは尋ねるまでもなかった。
「くれぐれもダンジョンは破壊しないように頼みたい」
「そ、そうですね、……善処します」
「ったく、いちいち細けえんだよ、敵をぶっ潰せばいいだけだろ……」
と、雑談する私たちをダリルさんは片手で制した。
そこからはランプがついていない。
そしてその先には薄っすらと、とても巨大なスライムが
鎮座しているのが伺える。
「アレがプラチナスライムだ。打撃系の攻撃はほぼ無効。
斬撃や刺突もあまり有効打は与えられない」
「四の五のいってないで叩き斬ればいいだろ!」
「それができればお前にわざわざ助けは求めない!
ココア殿、よろしくお願いいたします」
いきなり振られた私は頭が混乱した。
「わ、私ですか?! わかりました、試してみますね!」
するとダリルさん、サイモンさん、ブリジットちゃんが武器を構える。
「気をつけろ、あいつは攻撃してこない相手には無害だが
刺激を加えると電撃を放ってくる。
ココアは攻撃に専念しろ、防衛は俺達が引き受ける」
「わかりました!」
私はバックパックのボタンを押すと、
フルアーマーウェポンシステムが起動した。
正直物理耐性持ちの相手にはどう立ち回れば良いのか。
まずは私は軽機関銃2門をスライムに向けると掃射した!
ピチャチャヤチャチャ!!!
水が弾けるような音、スライムは激しく変形したが
弾丸はすべて体を貫通してすり抜けてしまったようだ。
瞬間、電撃が飛んでくる!
それをサイモンさんが大盾で受け止めてくれた。
「大丈夫ですか!」
「はい、でも本当に物理攻撃はダメなんですね」
「ああ、それで我々も手を焼いている。
なにか方法はあるかね?」
ない……と言いたいところだけども。
私はこんなこともあろうかと、準備していた武装を展開した。
まず30cmキャノンは焼夷榴弾に切り替える。
そして私は更に2門の追加武装、火炎放射器を展開した。
「皆さん、離れていてください!」
みんなが私から離れた。
私は高揚感に身を任せて引き金を引いた。
「うおおおおおお! 燃え尽きやがれえええええええ!!!」
30cmキャノンが轟音をたててスライムに飛んでいき爆発した。
私の体がぐっと沈むように反動を受け止める。
スライムは形がぐちゃぐちゃになった上に炎に包まれた。
更に追い打ちをかけるように火炎放射器を浴びせかける。
「ハハハハハ! 汚物は消毒だぁ!!!」
スライムはどんどん燃えていき、そしてスライムは蒸発していなくなった。
「凄まじい火力だな……。あの砲門が火を吹いたときは
『また』このダンジョンも崩壊するのかと震えたぞ」
「まぁ無事うっとおしいスライムも消え去ったわけだ。
後でちゃんと報酬は支払えよ?」
「もちろんだ、よしお前達、ここからは北方傭兵騎士団の出番だ!
行くぞ!」
そういうとダリルさんは団員たち総勢でダンジョンの奥へと進んでいった。
「おわりか、帰ろうぜ」
「そうですね」
私たちは入口に向かって歩き出す。
私は疑問を口にした。
「しかし、私が対応できなかったらどうするつもりだったんですか?」
「あんまり考えてなかったな、まぁなんとかなるだろ」
「なんていい加減な……」
「ダメなら俺が叩き斬れば良いと思っていた」
「どう考えてもあのスライム、剣では倒せませんでしたよ……」
「うるさいな、結果的に倒せたんだからいいだろ?」
あまりに無計画なブリジットちゃんに私は呆れてしまいました。




